第2話 祖母に対する兄の異常な行動
私が高校から帰ると兄が怒っていた。
祖母は申し訳なさそうにコンビニの袋を握りしめている。
「どうしたと?」
祖母に話し掛けたが、兄が怒りながら
「メロンパン買って来いって言ったろーが!返してこい」
頭悪すぎやろっと言って兄は祖母の頭を軽く数度小突いた。
祖母は嫌そうに目をギュッっと閉じて、片手で頭を庇いながら玄関に向かう。
祖母が出て行き、兄は置いていたコントローラーを手に持ち偉そうに何時も祖父が座っていた場所でゲームを再開させた。
「なんで、ばあちゃんに買いに行かせとると!」
「お小遣いやるけんいいやろうが」
「小遣いやけんって、ばあちゃん呆けとるとに自分で買いに行けやん!」
兄はゲームのコントローラーを乱暴に置いて私に掴みかかってきた。
力では到底太刀打ちできないが、兄の行いが許せないから言葉を続けた。
「高校辞めて、ずっとゲームばっかりして、ばあちゃんにパン買いに行かせて、違うもん買ってきたけんって、小突いて…アホやろ!」
「おまえに関係ないやろーが!」
腹部に膝がめり込んだ。痛くて座り込むと背中を足で蹴ってくる。
喧嘩するといつもそうだ。女だからと手加減無しに、兄は子供の頃から私と喧嘩すると全力で殴ってくる。
お父さんが病気で入院する前はお父さんが守ってくれていたが、もう近くには居ない。
誰も守ってくれる人が居なくなって、兄は自分に都合の良い好き勝手な生活を送るようになっていた。
私は殴られたくないから兄との会話は日に日に減っていき、高校に入ってからはバイトと勉強でろくに会話など一切しなかった。
何か気に触れることを一言でも言うと殴ってくるから身を守るには話さないことが一番だと当時は思っていた。
祖父が亡くなって、この家には私と兄と祖母の三人しかいなくなった。
母親はというと私が十二歳の時、一年間家から消えた。
一年くらい経って、知らない男を連れて家に戻ってきたかとおもえば、お父さんに離婚届を渡した。
だから、この家には三人しかない。
兄には快適な環境かもしれないが、私と祖母には最悪な環境でしかなかった。
「ケンちゃん。これでいいとね?」
祖母が帰ってきて兄の暴力が止まった。心配そうに私のことを見ていたので苦笑いを浮かべてみせる。
兄は、袋に入っている物を確認して今度は頼んでいた物が入っていたようでお釣りを祖母の方に向かって投げつけた。
その行動も腹が立つが何か言うとまた殴られるので唇を噛み締めた。
祖母は落ちた小銭を拾って微笑んだ。
「ケンちゃん。ありがとうね」
祖母は私に手招きし、兄の居ない部屋に向かう。
祖母は貰った数百円の小銭を私に渡してきた。
「好きなもん買って食べてよかよ」
痛いのはいつものことだから我慢できたが、祖母のその一言で涙が瞳に溢れた。
兄から祖母を遠ざけないと、ダメだ。
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