第13話 佐那美さん……ゴメンね
前回の続き
佐那美から映画の勉強とばかりに秋葉原へ行ってオタク研究する様言われた僕とクリオ。
とりあえずTXに乗り、秋葉原でオタク気分を満喫してきた僕らであったが、どうやら佐那美の反感を買うデートみたいな楽しみ方をしていたらしい。
佐那美は激怒し僕らを詰問する。
一方で、僕らが佐那美に送った画像データに怪しげに写り込む謎の少女。
それは――――美子だった。
恐怖で逃げるクリオを刺し、血まみれの状態で部屋に入ってきた美子。
今回ばかりはちょっとヤバいかも。
――本編に戻る。
得物を構えた美子がイッちゃった目で僕らを睨む。
「お兄ちゃん――私、言ったよね。なのに……何で、何でなの」
彼女は涙をこぼしながら得物を握り締めたままだらりと腕を垂らした。
美子の服にはクリオの血痕と思われるものがべっとりと付着している。
「落ち着け美子さん――おちついて!」
僕は両手を肩の高さまであげ、『落ち着け、落ち着け』と前後に揺らして彼女をなだめる――が、彼女は得物を構え振り払う。
「うるさい! 私が先に聞いているでしょ!」
危なく手をきられるところだった。
「裏切り行為は許さないって言ったよね? なのに何でクリオなんかとデートしているわけ?」
「いや、デートではないよ。映画の――オタクの勉強だよ」
「私、おかしいな――おかしいな――って思ってお兄ちゃんのGPS確認したらつくば駅にいるんだもん――私、慌ててJRで特急にのって東京経由で秋葉原行ったんだけど――まさか……」
美子は身体をブルブル震わせ、何かを我慢している様子である。
そのうち「あああああああ」と奇声をあげ、「我慢できない」と叫ぶと両手で激しく僕のベットを叩き始めた。
「これ――誰がそういったの――誰が……」
もちろん佐那美である。
ここで名指ししても良いのだけど、言ったところで刺される順番が変わるだけ。
黙っていることにする。
「そう言えば、お兄ちゃん。地端の社長はどうしたの? それになんで佐那美がそこにいるの?」
「ソレは――」
これ以上言葉が出ない。
そのうち――
「あっ、そうか……佐那美だな。私のお兄ちゃんをたぶらかしたのは」
美子がギラリとした眼光を佐那美に向ける。
「あ、ああああ――た、助けて……神守君」
彼女は事もあろうか僕に助けを求めてきた。これは逆効果だ。
「なんでお兄ちゃんなのよおおおおお!」
美子は得物を構えて佐那美に襲い掛かる。
「やめるんだ、美子さん!」
「うるさい!」
僕は美子の包丁を取り上げようと手を差し出すが、美子は包丁を振り回し、紙一重で僕手の甲の薄皮を切った。
僕は美子を布団に押し倒し馬乗りにして包丁を取り上げようとするが、美子は暴れ容易に彼女の腕を掴むことが出来ない。
「早く、佐那美さん逃げろ!」
「は、はい」
――だけど佐那美は腰を抜かしたみたいで、まともに身体が動かない。
僕が彼女をチラリとみた瞬間、彼女に何かが投げつけられた。
しまった!
それは彼女の方に真っ直ぐ進み、彼女の後頭部を掠めるか掠めないかのところで通過し、柱に突き刺さった。
「ひいいいいい……」
さらにマズいことに僕がそれに気を取られている瞬間に、美子は僕を蹴り飛ばし、鬼神の様な跳躍力で彼女の上に馬乗りになった。
そして佐那美の身体をごろりと仰向けさせた。
「い、いやあああああ! ころ○れる!」
「○ね、佐那美!」
美子はもう一本隠し持っていた得物を取り出し、彼女の顔面目掛け振り落とす。
「いやああああああああああああ!」
佐那美は絶叫を挙げる。
もう、これは詰んだかな――僕もこの辺で潮時にするか。
――そう思った瞬間。
美子の得物が佐那美の額に突き当った。
得物はグシュグシュと音を立てて下に沈んでいく。
それにあわせ佐那美の言語がおかしくなっていく。まるで脳にそれが突き刺さって言語能力がおかしくなっている感じである。
――が。
「ハイ、カット! お疲れ様です」
そう言ってドアを開けてクリオが拍手をしながら現れてきた。
ご丁寧に背中に得物が刺さっているままである。
「あー……疲れた」
美子はそう言うと佐那美の上にどっかり座り込み。佐那美の額に押し当てていた得物を放り投げた。ちなみにこれゴム製の防犯グッツである。
だからいくら佐那美の額に押し当てても刺さらないのである。
もちろん、クリオも自分の背中を指差して――
「ちなみに私に刺さっている包丁も小道具ね」
――はい。これは僕らのイタズラです。 話を秋葉原に戻します――
僕とクリオが秋葉原駅の電気街口である人物の到着を待つ――すると、もの凄い黒いオーラを背負っている彼女が到着した。
「おーい、美子ここだよ」
クリオが、機嫌が悪い美子を全く動じることなく手を振る。
その彼女がクリオを恐ろしい形相で睨んでいる。
「まあ、突然『クリオと秋葉原に来てるんだ』ってメール送られれば、そうなるわな」
その切っ掛けを作った僕がケラケラ笑いながら美子に近づくと、美子は明らかに不機嫌そうな顔して、僕の足の甲をガンと踏みつけた。
「……痛いなぁ! 何するんだよぉ……」
「フン!」
美子は腕組みしながらそっぽを向いてしまった。
「まあ、へそ曲げる気持ち、私はわかるよ――ちょっと病んじゃうよね」
『病ンデル入っている?』系CPU搭載のクリオが苦笑いしている。
「――そんで、私をこんなところにまで呼び出してどうするつもりなの?」
「いや、スクリュー佐那美に『秋葉原行ってオタク服着て勉強してこい』って言われたんだけど――2人で堪能するのもつまらないから」
「――はぁ?」
話が断片過ぎる。
さすがの美子でも理解出来ずにいる。
「いや、それは――ちょっと意味わかんないんだけど。第一あの馬鹿はどうしたの?」
「映画の参考にと、ここまで佐那美さんとうちらで来るハズだったんだけど――結局、彼女が無駄使いしちゃって……資金不足で彼女だけお留守番」
「えーっ。本当にあの馬鹿、救えない馬鹿なのね――」
「仕方ないので二人で秋葉原に来たんだけど、2人だけで遊ぶのもつまらないので美子さんにも出動願った訳だ。ところで眞智子さんがいないようだけど――」
美子に送ったメールには「眞智子さんも連れて来て」と付け加えてある。
「あぁ、眞智子はヤンキーのくせに真面目に家の手伝いしていてどうしても行けないって――しかも、眞智子から『仇討ちよろしく』と頼まれちゃったんだけど……それってどういう意味なのかな?」
「あーぁ、それだったら多分あの馬鹿の事だから、オタク名所を一箇所位巡って『クリオ、用がすんだから帰りなさい。神守君は私と一緒にこの後付き合うこと』ってデートするつもりだったんでしょ?」
「――はぁあ?」
美子が明らかに不機嫌そうな顔になる。
「アイツ、本当にぶっこ○してやろうかしら……」
そう言いながら親指の爪を噛みながらジッと僕の顔を睨んでいる。
「だから、みんなで遊ぼってことにしたんだよ――まあ、眞智子さんは残念だけど、また後でみんなで誘ってあげるか」
「――眞智子ことなんてどうでも良いけど、私、ちょっと佐那美のこと納得いかないんだけど――せっかく私が面倒見てあげたのにあのクソ女また裏切りやがって……」
「ほら美子、そんなにおっかない顔しないで。せっかくここまで遊びに来たんだから楽しく遊ばない?」
クリオはそう言いながら美子にハグをする。そして背中をポンポン叩きながら悪魔の様な囁きをした。
「あっ、そうだ――美子、あのビッチに仕返ししない?」
「はぁ? どうやって……」
「決まっているでしょ? あんたが佐那美をぶっころ○つもりで襲えばいいのよ」
クリオはここぞとばかりに佐那美に対する日頃の恨み辛みを美子で晴らそうとし始めたので――
「ちょ、クリオ。うちの妹を犯罪者にさせるのはやめてくれ。それにここでは絶対にやめてくれ」
――と僕が慌てて止めに入る。
だが、クリオは近所のおばちゃんの様に手首を振って「いやだなぁ」と僕の心配を否定した。
「得物じゃなくて映画用の小道具使いなさいよ。それだったら本気で○ろしてもいいから。もちろんここではそんなことしないけどね」
なるほど、要約すると迫真の演技で佐那美をやっつけるのか。
それは面白そうである――ってそう思う僕も佐那美に酷い目に遭わされている被害者の一人ですから、それについて反対はしない。
でも、いきなり美子が襲い掛かっても、イマイチ恐怖感がないなぁ。
「もっと恐怖感を煽ってから襲撃するっていうのはどうだ?」
「あぁ、そういえば。地端レイってあったわよね――」
今、美子の顔がもの凄く悪い顔に変わる。
「何よ、その地端レイって。何かあのビッチとレイが結婚したみたいで嫌なんですけど!」
クリオがあからさまに嫌な顔をしている。
どうやら、その意味というか駄洒落がよくわかっていない。
「まあ、簡単にいうと――ほら」
美子はそう言うと、この前のウエディングドレスの写真をクリオに見せた。もちろん、みっともなく窓にへばり付きこちらを覗いている佐那美の姿が写っているやつね。
「あぁ、そういうことか……ホント、あのビッチみっともないわね」
「だから――私もこんな感じで、みっともないことしようと思って」
「えっ? どういうこと」
「簡単よ。まずあんたらが記念写真を撮る。その時に私が隠れて恨めしそうに睨み付ける――それを何回か繰り返す……チッ、何か自分で言っていて腹が立ってきた」
「おいおい、それは良いけど、本気で僕らをここで襲わないでよ。今、この街そういうのはシャレにならないから」
「それはわかっている」
「あーっ、だったら。佐那美の恐怖感を煽るのに私が美子にころさ○ればいいんだ」
「だから! ここでやるなよ」
「もちろん、佐那美の目の前じゃないと意味がない。それにここは楽しく過ごす場所だから3人で楽しく撮影して遊びましょう」
――というわけで、みんな楽しく撮影しながら買い物・飲み食いした訳です。
もちろん、ガチャガチャでは美子も回していたし、メイド喫茶と九州ラーメンでは実際には3人でご飯を食べていました。
まぁ、メイド喫茶では僕とクリオが食べ合いっこしているところは美子は怒りに耐え震えながら演技指導。もちろんスプーンは自分のを相手に持たせて撮影させたものだけど、これを佐那美がみたら激怒しまくるだろうと美子は自分の気持ちを押し殺しながら指導していたそうである。
その後美子は「そこまで協力しているんだから私にも協力してよね」と好きなアニメグッズをクリオと一緒に買いあさったり、前回話していた「お願いがある」と言っていた物が売っている場所に僕を連れて行ったり結構楽しんでいた。
ちなみに美子が案内した場所はパソコンのパーツ屋が集まっている地区。
その美子のお願いとは彼女のパソコンの動作が遅ってきたので、何とかして欲しいというものだった。
さらに買い換えるとセットアップが面倒なので今あるパソコンのデータをそのまま新しい環境下でも使える様にお願いされた。
だからその要望に応えるべくここに来た訳である。
実際に店舗の値段はネットに書かれている値段より高めに設定されている。
今時ネットでしょ? といわれそうだが、実はネットに記されていない店舗独自のセット割りが存在したり、部品に対する相性補償など保険が掛けられるのが魅力だ。
最終的にネットで個々に買うより、電車代も差し引いても更に安くなったり、仮に部品の不具合があったとしても1店舗で解決させることもできるといった安心を得ることができた。
ちなみに僕は自分の趣味の鉄道模型を秋葉原にある犬の名前のお店や魚の名前のお店に行って目的の車両をゲットして堪能させていただきました。
とりあえず、撮影終了。
僕のスマホを美子が確認する。
「うん。これよく撮れている。これ以上イチャつかれていたら間違えなく私が暴れるレベルだけど、この位ならギリ『殴ってやろうかしら』ってレベルで収まるかしら」
「えーっそれでも僕ら殴られるの?」
「いやいや、この怒りはどこかの馬鹿に晴らさせてもらうから――」
美子はそう言い、さらに「でも、この写真あんまり見ないで欲しいな――あとでじっくり探してみてよ……たぶん、ビビると思うから」と付け加えた。
とりあえず、美子のゴーサインが出たので佐那美に送る。当然佐那美から『今まで何していたのよ。さっさと送ってよ』と若干怒りのメールが返信あった。
もちろん、その後に『ちょっと二人に話したいことがあるから――神守君の家で色々聞かせてもらいたい』が追加されたことは言うまでもない。
――話を僕の部屋に戻す。
「この馬鹿、せっかくウエディングドレスを一緒に撮ってあげたのに早速裏切るんだもの。ホンと図々しいよね」
「でも今日は楽しかったなぁ、映画のこと抜きに秋葉原見てもオタクについては参考になったわよ。自分の趣味を他人に気にせず生きるって楽しいってことが」
クリオはウンウンとうなずいている。
確かに自分らも楽しかった。
でも、楽しめなかった……というか僕らのせいで酷い目に遭わされた女の子もいる訳で――彼女の方面に得物が刺さっている。
「ところで美子さん。あの佐那美さんに投げつけた得物、まるで柱に突き刺さっているみたいになっているけど――あれはどういう仕組みになっているの?」
「あーそれか――」
美子は佐那美の上に座ったまま柱のそれをジッと見つめている。
「あっ、あれ――あれれ?」
首を傾げ出す。
「どうしたの美子さん?」
「……いや――ちょっとまずった」
そして、額に汗を掻いて苦笑いをしている
「何がまずった?」
「あのぉ――間違って本物投げちゃった」
――――――おいおいおい!
あれ佐那美の後頭部掠めるように飛んでいったからな。
「大丈夫、私コントロールいいから。アハハハハ……それにどうせ佐那美だし」
そんな本物の持って演技しないでよ。
もし間違って当たったら大けがどころか死んじゃうところだったじゃないか。
アブねえ――本当にうちの親が失業するところだった。
そして美子は悪びれる事なくケラケラ笑いながら佐那美をごろりとうつ伏せに転がし、トドメとばかりに彼女のお尻をケツビンタする――と、美子はその叩いた掌をマジマジと見つめだした。
美子はそれが何か理解すると「うわああ」と悲鳴を挙げ飛び上がった。
「この子、失○しちゃっている――ぅ」
美子は佐那美を引き起こすと、彼女は泡を吹いて白目を剥いて失神している。
あらら――あとで社長には僕から謝るしかないかな。
――――それから次の日、再び僕の部屋。
佐那美はぷんすかぷんすか怒りながら僕のベットの上であぐらをかいている。
クリオと佐那美はゲラゲラ笑いながら全く反省をしていない。
眞智子も合流し、秋葉原の一件を再び話し合う。
「――お前、本当に懲りないなぁ」
眞智子が引きつった笑みを浮かべている。
本来、眞智子としてはここは怒るところであるが、事の顛末は美子から聞かされていることもあり、正直呆れてしまったというのが正解である。
「まさか経費で買ったブランド物の服がション○ンまみれになろうとは――ね」
眞智子の言葉に僕はあの後、それの処理に追われていた事を思い出し、なんとも言えなくなった。
まさか学校一の美少女のお漏らしをかたづける羽目になろうとは――普通なら、完全にアウトだよね。
「五月蠅いわね。あんな頭がおかしい子に得物突きつけられビビらない人はアンタ位よ」
「いや、私だって美子みたいな性格異常者に襲われたら余裕ないわよ」
佐那美と眞智子は完全にうちの美子をキ○ガイであると思っている様だ。
「あのねぇ~、私は至って普通の女の子なんですけどね」
「自分の兄貴をレイプしようとはしないけど――」
「恋のライバルを得物で排除しようとはしないわよ」
眞智子と佐那美が『どこが普通の女の子だ』とばかりに白い目で美子を見る。
「いいでしょうよ。もしうちのクソババアがあれじゃなかったら、私はとっくにお母さんになっていたんだから!」
うわぁ……また問題発言――そして、結局僕はレイプされる訳ですか。
普通に聞いていると問題発言であるが、彼女らはさすがに聞き慣れたのか「また馬鹿な事言っているよ」と完全に美子の発言をスルーした。
唯一、この中で眞智子以上にまともなクリオが――
「あぁ~、あんたら……ていうか私も含めて抱けど、結局ソレばっかりなんだよね」
――と話に割って入ってきた。
「うーん……確かにそうねー」
美子がため息をつく――っていうか、これは君を中心に話が進んでいるんですけど!
「ところで、何で急に秋葉原なんて行くことになったんだ? オタクの研究するんだったらつくばのTKBだってあったでしょうよ」
眞智子が話しているTKBとは、つくばを中心に活動しているご当地アイドルグループで、アキバのアイドルグループを意識して結成されたとのことだ。
僕もアイドルについては全く疎く、それ位の知識しかない。
「眞智子さん、アイドルについて詳しいのかな?」
「いや、私はわからないわよ。ただ、マサがそのアイドルグループの追っかけしているらしくて、琴美から相談を受けていたのよ」
「へーっ、マサやんそんなことしていたんだ。最近、一緒に遊んでいないからわからなかったよ」
一瞬、マサやんがアイドル相手にサイリウムを一生懸命振って踊っている姿を想像し、ちょっと吹き出しそうになった。
「いやぁ~、琴美の奴がマサのこと束縛したがるから私も困っているのよ。所詮はアイドルでしょ? いや絶対にアイドルから言い寄られる事はないから」
眞智子がケタケタ笑いながら手を振って否定した。
「ホント、琴美も心配性なんだからぁ」
美子も大笑いしている――っていうか、君こそ心配性なんじゃないか?
その話が笑い話で終わろうとしたその時、佐那美の「あー!」という叫び声で皆が驚き凍り付く。
「そうよ、その手があった!」
佐那美はベットから飛び降りると、僕とクリオを指差し――
「神守君、ふぁっきゅうー。近いうちにつくばに行ってそのTKBを見に行くわよ」
――と言い出した。
「はぁ?」「何で?」
僕とクリオがぽかんとしていると、佐那美がウンウンとうなずいて、話を続ける。
「とりあえず神守君とふぁっきゅうーは池田からアイドルについて教わりなさい。そしてアイドルに恋するオタクになりなさい」
「えっ、僕らがアイドルオタクになるのか?」
「日本のオタク文化ってアニメとかメイドさんとかじゃないの? ……っていうか何度もファックユーいうな!」
「そうよ。そうなのよ! アイドルの追っかけっ、いいじゃないの! しかもアキバに行かなくとも隣町だったら予算的にも助かるわよ」
佐那美が力説している。そして――
「良いこと。とりあえず池田に話を聞いてTKBのメンバーどれでもいいからファンになりなさい。そしてその感覚を覚えて映画に――」
――と佐那美が言いかけた途端、彼女は二人から胸ぐらを締め上げられた。
「ダメに決まっているでしょ! 何でお兄ちゃんがアイドル追っかけしなきゃ行けないのよ。そんなことされたら本気にされちゃうんじゃないかと心配して夜も眠れなくなっちゃうでしょうよ」
美子ががなりまわす。そして眞智子も――
「テメエ、ふざけるな! アイドルに言い寄られたらどうするんだ! マサとは違って礼君は間違いなくアイドル落とすぞ! そんなことになったら佐那美お前、タダじゃすせないからな!」
――と若干涙目になりながら佐那美を振り回した。
……あのぉ、琴美もそういう気持ちだったのだはないでしょうか……
でも……なぁ、これだけ美人に囲まれてアイドル追っかけっていうのも何か無理があるよなぁ。
「あの――レイ、何で私ら見回しての?」
「いや、別に他所のアイドル使わなくても――皆がいればアイドルユニットができるんじゃないかと……」
だが、この提案は佐那美に一蹴された。
「ダメ。うちらじゃ観客そっちのけで神守君の奪い合いになっちゃうから。それじゃあどっちがファンでどっちがアイドルなのかわからなくなるから」
そして彼女たちも――
「「「それは確かに……」」」
――と口を合わせた様に呟き皆納得してしまった。
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