第11話ありがとう、ハスキー。

 パラドックス・ウルフが亡くなって、丁度一年が経った。あれから高山は新たにペットを飼うことは無く、ただ一人の時間を過ごしていた。

「そういえば…今日は悲しい記念日だったなあ・・・。」

 高山は時々、ハスキーが駆け寄ってくる幻を見ることがある。それだけ高山はハスキーを、愛していたのだ。コーヒーを飲みながら一服していると、インターホンが鳴った。高山が出ると、そこには小杉の姿があった。

「小杉じゃないか!」

「よお!今日はハスキーの一周忌だったな。」

 小杉は高山の家に入ると、高山が作ったハスキーの仏壇の前に正座し、手を合わせた。

「それにしても、あの日はかなり大冒険だったなあ。」

「ああ、キラーリストが全員逮捕されて良かったよ。」

「でもあのジョンの父親が、キラーリストのボスだったとはなあ・・・。ジョンはどうして、そのことを黙っていたんだ?」

「ジョンから聞いたんだけど父親がね、正体が世間に知られないように、常に口止めされていたらしい。後、ジョン自身が父親の事を認めたくなかったというのもあった。」

「そうか、彼も大変だったんだな。」

「・・・・ジョン、ハスキーの救出に協力・・・してくれて・・・ありがとう。」

「大丈夫か、高山?」

「うん、大丈夫。」

 高山は窓に映る満月を見上げた、そうしているとハスキーに見守られている感じがするからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

逆狼男 読天文之 @AMAGATA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ