第20話 生暖かい朝

明け方に家を出る。


ひんやり冷たく、ほのかに青みがかった、夜の残り香を嗅ぎながら、白い息を吐く。


その情景に、自らが溺れていくようなそんな感覚。


時差出勤により周りには人が少ない。


久しぶりに電車に乗ると思うと少し緊張して、不思議な気持ちになる。


何とも言えないこの気持ちを、仕事は受け入れてくれるだろうか。


働くと言うことに何も感じていなかった頃よりも、働きたいと言う気持ちが少し残っているほうが間違いなく幸せで。


もう働けなくなるのかと思った時、自分は絶望するだろうか。



そんなことを未来に思う。


久方の電車は人が少ないが、少しどんよりとして、生暖かく私を迎え入れる。


暖かい。


人は暖かい。

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