第5話 ユニクロ

 商品券を知り合いから貰った。最近こんな事が多い気がする、さてどうやって使おう1万円分。中に使える店舗が乗っている紙が同封されていた。その中でこれはと思うものをピックアップ、その候補を絞り上げて出てきた選択はユニクロになった。予算オーバーで追加すれば良いけど、なんとなく嫌なんだ。安く買えるからってどんどん使ってしまいそうで。


 過去にもこういう事は良くあったんだけど、一点のもの服が1万円の商品券を越えていた場合は払ってしまう。そこなんだ、ユニクロなら定番を組み合わせて上手くまとまるだろうと。事前にネット調査だ。ユニクロのHPに行って見る、うんうん、決定早いよ!、ジーパンなどパンツ類にするかと。


 皆気が付いてるよな。ユニクロってパンツ類が一番お得感がある。ネットで良く賢い買い物としてユニクロのパンツ類と他の店のアウターって組み合わせを紹介してる。見る人が見ると安もんってばれちゃうと思うけどね。でもパンツ類をまじまじ見る人ってそう居ないんだよな。あのジーパンは違うな、とかそりゃオサレさんは気が付くんだろうけど、そういう人に鼻で笑われても良いや。


 実を言うとなんてタイミングだと思うけど、ジーパンが破けたんだよな。渡りに船とはこの事で、でもユニクロでかわなくちゃいけないわけじゃないけど、そこで後押ししたのがユニクロのパンツ類のお得感、しかも種類サイズ豊富で本当にあそこ充実してるよな。見る人が見ればダサいデザインなのかもしれないが、私がそれに気が付かないので。


 特にどこに行こうと言うのも無く一番家に近い場所の店に全国どこでもあるからこそ商品券リストの候補として相応しかった。良いもの買いたいというより、まあ外れがないよなってのが大きい。悩まずに納得できる。ある意味生活必需品感覚がある。それで居て日々の食事を買うようなものとは違う買い物にいくって特別な気持ちもある。


「いらっしゃいませ」


 何気ない挨拶だが、ユニクロって妙に心地良い。その秘密はなんだろうと考えていると、煩くないんだ。これは難しいと思う。わかりやすいのが飲食店だろう。元気が良すぎる店がある。これは店の方針ってのがあるから。ただこのちょうど良い品のような声の大きさにしてくれる。それでいて上品さとは違う気軽な快活さを感じさせてくれる。


 多分これ上の人がかなり考えてるんだろうな。あまりに普通なんだ。普通すぎるってのが奇妙なんだ。多分ユニクロは普通を目指してるんじゃない、自然だと思う。だって他の店と較べると普通じゃないもん。なんと言うか陰気にならない程度に店員が影に徹してくれる。これは何か意味あるよな。


「こういうのも良いね」


 何気ない客同士の会話が聞こえてくる。とにかく客層が豊かなので、だんまりの客ばかりじゃない。若いって煩そうに見えるけど、グループで来ないと静かなんだよな。逆に人数が少なくなるほど中年以上の方が良くしゃべる。だから客層が豊かだと自然と何かしらの声がする。だが、中年は声の大きさをある程度の階層の人ならきちんと調整してくれる。


 じゃそうじゃない人って?んまーそういう人もいる事は居る。必ずしも煩いのは若者だと限らない。自分が中年だからだろうか、あの若者の群れが持つ独特の回りを無視したような自分たちだけが盛り上がるグループ感は本当に苦手だ。


 目的のコーナーに付く。買うもの決まってるとはいえいろいろとつい見て回った。季節のものとかちらほら見てしまう。今は春、毎回どうしようかと思って買わないものがあるのだが、薄手のパーカーを見てしまう。昔タバコを吸っててヤニでくすんでしまって捨ててしまった薄手の白のパーカーがあって、色のこだわりは無いが、またあの薄さが欲しいと思ってしまう。


 パーカーって基本的には厚めのトレーナーぐらいのが一般的で、ロンTのような薄さのパーカーって珍しい。でもユニクロって春に行くとこれが売ってるんだ。滅多に無いのに何故かユニクロはこれが季節が重要だが定番として毎年しっかり売ってる。毎年どうしようかと考えて結局買わずに居て見るを繰り返してる。


 パンツコーナーに来てびっくり。ネットの情報古かったのか?何かまとめて買うと安くなるセールをやってる。いやあったかもしれないが、見落としたかも。おやおや、どうするこれ?余った金額で別物買おうと思っていたが、思い切ってパンツまみれが良いかもしれない。取りあえず店員さんに聞いて見る。


「あのちょっと良いですか」


 まず商品券を見せて念のため確認をする。


「これ使えますよね?」

「使用できますよ」


 これはただの確認だ。本番はこっち


「あのジーパンなど買いたいのですが、すそ直しってどうなっていますか?無料ですよね?」

「シングル仕上げ、カットオフ仕上げなら無料ですよ」

「他にもあるのですか?」

「ええ少し凝ったもので、まつり縫いなどは200円別途頂くことになります」

「ああそうですか、分かりました」


 なるほど、前やったんだけどすっかり忘れてしまった。前も似たような事聞いたんだろな。自分の性格なのか、イキナリ無料だと聞くのは知ってるからなんだよな。とにかく確認してしまう。んまー、以前やってもらって不満が無かったから無料で良いや。


 へへ、後は思わぬパンツずくしをどうするか?だな。うわ良く見たら、今期限りの安売りだこれ。元々、追加で安くなるサービスはあるみたいだけど、そもそもこの値段いつもより安いじゃないか。ネットで調べたとき別のパンツみてたな。いろいろあるみたいだな。よし、安いのだけにするか。


 後は、タイプと色を見ていく。ネットで気が付かなかったのは、タイプによって値段が違う。微妙にデザイン違うな。分かり易いのはヴィンテージ仕様だな。これジーパンじゃないな…。かと綿パンって感じじゃないな。でもジーパンそっくり。まあ良いか。別に絶対ジーパンじゃないと駄目ってわけじゃない。


 細身のチノパンって事なんだな。それがジーパンっぽく見えていたんだな。良く見たらネットで見た高いほうカーゴパンツか。茶色のヴィンテージと白のチノパンって所。後一本買ってもお釣りがくるな。参ったな。ジーパンの金額で考えていたので買えても2本あまりだと思ってた。


 かと言ってジーパンは安売りじゃないしな。うごー安くて逆にまとめ買いしたいからって悩んでしまうな。ジーパンと似た青でいくか?いやいや、その似非ジーパン嫌だわ。ジーパンとカーゴ元は買うつもりだったから、似非カーゴでミリタリーなグリーンにすっか。


 さっさと決まってレジに行く。


「すそ直しもお願いします」

「こちらにどうぞ」


 試着室に向かう。ああそうか、履いて調整し無いとな。うがー短足なんだよ私はー。これしなくて良い人居るだろうな。多分アメリカと違って日本のものは日本人にあわせていると思う。たまにネットで良くあるが、アメリカンサイズってのがあって、SLMが違うんだよな。パンツの場合ウエスト直接CMで買うから問題ないけどさ。


 やっぱりと言うかかなり上げた。身長は平均的に170超えてるから、これ短いんだろうなー、遺伝なんだ。父親は足が長いが、母親が典型的な日本人体形だからな。終ったけど、


「番号を呼ぶのでお待ちください」

「ああはい」


 どこかで時間潰そうかと思ってたら。これスグ出来るの?すごいね。つかー店員がやるのか。どうみても専門のスタッフじゃない。どの店員もやる感じ。だから無料なのか。待ってる間に余った金額でTシャツを選ぶ。


「あのー」


 商品券を見せて


「少し余るのでTシャツ選んでいて良いですか?会計はその後でかまいませんか?」

「はい」


 どれぐらいかかるんだろうか?と思いつつも早く選んで待ってたほうが良いかと、選んでいたらちょうど良い時間に番号を呼ばれた。ついてるねー。袋に入れてもらって商品を受け取って、精算時「ありがとうございました」を聞いて店を出た。


 いやー商品券の買い物は本当に楽しいな。買い物自体楽しいものだと思う。だが使わないとただの紙切れってのが大きいんだ。お金は持っていれば何かのときまた使える。もちろん期限があるわけじゃない。ただ、店も限られてるし、使い勝手が悪いんだ。忘れて面倒になるより、気持ちが乗ってるときに使ってしまうほうが良い。


 お金に囚われない買い物をする開放感。これが商品券はかなり心地良い。

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