第10話 優先順位

夏休み直前、私はひなたといつも通り屋上前にいる。暇つぶしのオセロも飽きてきたので話しかけてみる。


「ひなたってさ、友達いんの?」

「失礼な……ちゃんといるよ、この前見たでしょ」

「違う違う、この学校でってこと」

「あー」


なるほど、といった顔で何回か頷くと、


「ちゃんといるよ、同じクラスに」

「そうなんだ…………」


ひなたが私だけしか友達がいないわけじゃないと知ると安心するが……なんかモヤモヤする。


「どんな子なの?」

「めずらしいじゃん、どうしたの?興味ある?」

「いや、ひなたとつるんでる子がどんな感じなんだろうなって」

「つるんでるって………」


ひなたは苦笑すると上を向いてぽつりと言い出す。


「基本大人しい子だよ、優しいし気が利くし」

「ふーん」

「あと頭が良いんだよね。この前のテストクラス1位だったし」

「ふーん」


ひなたの口から知らない女の子のことを聞くのはなんか複雑な気分になる。自分から聞いておいてあれだけど………



私はひなたに何を求めているのだろうか……

私だけと仲良くしてとか、そういうのじゃない、きっと………


ただ、これは………

私のことを優先して欲しいとか、私がひなたの1番であって欲しいとか、とにかく……ひなたが友達を思い浮かべた時、真っ先にそれが私でいて欲しい……ということだと思う。


やっぱり重いのだろうか……独占欲が強いのか……なんにしろ、意外にもひなたを束縛しようとしている自分に呆れてしまう。


「今学校にいるよね?その子」

「うん、そりゃ授業中だし」


スマホを手に取り、画面をつけると時刻は1時過ぎ……5時間目の真っ最中。


「6時間目の授業、私出ようかな」

「えっ!?」


ひなたが素っ頓狂な声を上げる。あのひかげが!?みたいな。


「その友達とやらを見てみようと思う」

「それだけのために?」

「うん」


なら明日のHRでいいじゃん……と言いたそうだが、実はテスト勉強を思いのほか頑張ったこともあり、授業についていけそうな気がしている。たまには真面目にノートをとるのも悪くないだろう。

まあそれは二の次なんだけど……



こうして私はひなたの友達を一目見ようと、授業に出ることにした。今更になって……


「張り合ってどうする……」


ひなたに聞こえないように、ボソリと独り言を吐き捨てるのだった。

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