第9話 光 ②

どうにもひなたという女の子はおもしろく、可愛らしく、そして普通だった。

ちょっとからかってみると、すぐ動揺する。ここまで分かりやすい子は見たことがない。


「ひなたってさ、可愛いよね」


可愛いのは本当のことなので、からかい気味に言ってみると、顔を赤く染めた。


「冗談だけど」


途端、少し落ち込んだような顔をする。本当に分かりやすい。

小さい子をからかっている気分だった。なぜか、ひなたとなら一緒にいても苦にはならなかった。


「ひかげってさ、かっこいいよね」


……………………

ふーん、さっきの仕返しってことね。なかなか可愛いとこあるじゃん。

小学生みたいだな………

なんていうか、守ってあげたくなる?のかな。


それに、ひなたと一緒にいると、自分が自分じゃないみたいに感じる。初めてのことに、ドキドキする。彼女となら、何か自分が変わるのかもしれない。自分はどうなってしまうのだろう。そんな不安と高揚感が重なってくる。



それから何日かひなたと過ごしているうちに、少しづつ思い始める。ひなたこそが、私の人生の唯一の友達なんじゃないかって。


うーん、なんか重いなそれ。別にひなたはそんなの求めていないでしょ。私だったらちょっと嫌だな。

それにまだお互いのことなんてこれっぽっちも分かっていない。

ひなたのことがもっと知りたいような、知りたくないような……

こんな気持ちになるのも初めてなので、よく分からない。

こういうのは無理に聞くのも野暮ったい。

私が聞かれたら聞き返せばいいか……

でも………ひなたは聞いてこない。

多分、私はひなたがそういうタイプの人間だから受け入れたのだろう。



少しづつ知っていけばいい。日々の中で、ひなたのことを知っていけば………



***

ひなたの友達かな……こういうの嫌なんだよな。残された方はこの間をどう繋げばいいんだろう。別にひなたが悪いとかじゃない。


改めて、私は人と関わることが好きではないことを認識した。

ひなたを置いて先に帰る。

酷いことをしてしまった。

明日ちゃんと謝ろう。


2ヶ月が経った今、私は随分と変わった気がする。ひなたと出会わなければ決して知ることのなかったなんとも言えない感情。


ひなたと一緒にいると、本当に楽しいんだって………そう思えるようになった。


「勉強も教えてもらったし、たまには授業に出てみようかな」


横にいるひなたに告げると、彼女は少しは微笑みながら頷くのだった。

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