番外編 きょうだい

「ひなたってきょうだいいるの?」

「んー?」


5月末。授業が退屈だったので仮病を使って屋上前に避難していた。


「いない」

「そうなんだ、意外」

「そう?」

「面倒見いいから弟か妹がいると思った」

「あ〜」


確かに、弟や妹が欲しいと思ったことは何度もある。もちろん、兄でも姉でも。


「そういうひかげは?」

「いるよ。兄と弟」

「じゃあ真ん中なんだ」

「うん」


実はひかげも一人っ子なんじゃ……と思っていたが、意外にも男兄弟がいたとは。


「どう?兄弟がいるって」

「めんどくさいよ」

「そうなの?」

「せめてどっちか女だったらよかった」

「仲悪いの?」

「悪くはないけど良くもない。あんま話とかしないしね」


なんか……今日のひかげはよく喋るな……。


「私は羨ましいと思うけど」

「じゃあどっちかあげるよ」

「それはいいよ」


お互い冗談交じりにぼんやりと会話を続ける。


「じゃあ、ひなたは家族3人で暮らしてるんだ」

「ううん、お父さんが単身赴任してるからお母さんと2人暮し」

「そうなんだ」

「まあ、お母さんも仕事が忙しくて基本的にいつも私1人だけど」


そう、それが私の家族事情である。しかし、お母さんと時間が合う時は楽しくご飯を食べたりテレビを見たりしている。


「じゃあ、今度私がひなたん家行くね」

「え?」

「寂しいでしょ?」

「あ〜……。でもなんもないよ?」

「ずっと話してればいいよ」

「それならいいけど……」


彼女なりの気づかいだろうか。まだ出会って少ししか経ってないからひかげのことはよく分からない。


「それか、私の家くる?」

「ひかげの家か〜」


ひかげが家族と会話しているところは少し気になる。


「じゃあ、今度行こうかな」

「うん」




私がひかげの家に行くのは、もう少し先の話だ。

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