2章 サンエスペランサ

第4話 謎の少女

2019/11/13 00:50

(語り部との記憶)


※マークの設定に変更を、ジェイコブを削除。

 心理分析官と少数行動を好む秘密主義に変更。

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(凍傷について)

(秘密にしている)


 サンエスペランサ支局に長く勤めているが、神様宛の間違い電話は初めてだった。受話器から耳に流れ込んでくる一生懸命な声はマークが聞いたことのある祈りの中で、一番敬虔で信心深い祈りだった。


 その背後に邪悪な男がいる事を聞き取った時、通話はとぎれた。

 通話中、情報分析課に通信記録から少女の端末情報の位置情報を割り出すように指示していた。現場を特定し、駆けつけ、間一髪の所で悪漢が少女に銃を撃つ寸前、狙撃する事に成功した。

 警告などしていたら、少女は病院(ここ)にいない。

 今頃、埋葬されていただろう。


 笑い話だが、彼女はドラマ「ゲームオブスローンズ」に出てくる女戦士が着ているような革の上下に、造りの荒い毛皮のコートを羽織っていた。

 


 犯人を追っていった部下が戻らない。

 彼のベルトに備え付けてあるGPSは街(サンエスペランサ)の暗部、24時間が夜の地区     で反応している。事件から一週間後の今日に。犯人は生きていて、部下は捕まった。残念だがそう考えるしかない。


 FBIは勿論、警察など法執行官を憎む連中が集まる危険地帯だ。

 現場に踏み込むには、そこを仕切っているマフィアと話をつける必要がある。


 休憩室に降りたブラインドの向こうがわでスリッパと、滑車が転がる小さな音がする。マークはブラインドの一部を人差し指で下げた。

 肩の少し上まで延びた黒い髪には艶があり、天井の光を反射して光の輪を描いていた。   服をきた、点滴がついたスタンドを手に保護した少女、エスメラルダが廊下を歩いていく。


(・・・・・・!!)


 エスメラルダが横目にマークの方を見た。


 僅かにつり上がった目元。二重の下の緑色(エメラルドグリーン)の瞳は強がっていた。弱さを気取られまいと、強い人間である事を周囲に誇示しつつ、周囲の環境に戸惑っている、怯えた目。


 マークは思わず、ブラインドから指を離していた。

 足音は遠ざかり、ある地点で扉の開閉音の後、消えた。

 これから、マークが彼女をカウンセリングを兼ねた尋問を行う事になっている部屋だ。


 彼女は行方不明者のリストには存在しなかった。

 アメリカの戸籍上にも。

 不法入国者、いや。


(娘が姿を変えて帰ってきた)


 マークは首を振った。情にはまりすぎないのが、カウンセリングの鉄則だ。彼は街(サンエスペランサ)で娘を待ち続けている。15年以上の間。そして、いつ戻ってきても彼女が安心できる街にするために公務に励んでいるつもりだった。


 マークはかかってきた電話をとった。

 犯人を追っていった仲間を救い出すための部隊編成が整ったという連絡だった。


 もう少しで終わる。

 終わったら、エスメラルダにそれを知らせて安心させてやりたい。

 そうすれば、怯えた目が喜びに変わる。


 珈琲を飲み干し、マークは休憩所のスツールから腰を上げると、廊下へと出ていった。

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今宵 街はエメラルドに輝く 神納木 ミナミ @yuruyuruyuru

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