第3話「隊長とティレッド」

 「隊長、手紙ですか?」


赤髪の魔法使いが部隊長に声をかける、男は法衣ほういと呼ばれる東洋の見知らぬ服を着ていた。


「セキシンか、そうだよ娘への手紙だ」

隊長は一つ溜め息を附ついた。


「どうされたんですか?」

「手紙に書く事がな、もう無いのだ…」

セキシンが手紙に目をやると、それは真っ白だった。

「珍しい蝶も、天まで届く山も、中程で二つの色になる大河も書いてしまった」

此処ここに有るのは酷い戦場だけだ。


「そうだ、セキシン!君ら魔法使いの名は一文字一文字意味が在ると聞いたぞ」

隊長はそう言うと魔法使いに名の意味聞く。


「自分の名は赤真セキシンこの国の言葉でセキはREDレッド、シンはTRUTHトゥルーと言う意味です、ちなみに名と姓がこの国とはぎゃくになります」

「そうか少尉の名はTruthRedトゥルーレッドだったのか」

隊長は良い事を聞いたぞとばかりに手紙を書き始めた。


そして手紙には書かない戦場へ…。


「ティレッドどこだ!!!」

「此処です隊長!!」

「前はどうなっているか?!」

此方こちらの重装甲兵は敵騎馬兵に喰われました、敵重装甲兵が弓兵きゅうへいを引き連れ前進、此処も時機じき射程内に入ります!」

「もう退くしかありません、どのみち無理だったんです自分ら魔法使いを前に出して戦うなど」

「ダメだ本陣には戻れない」

「なぜです!!」


「本陣に戻れば反逆者としてたれるからだよセキシン…」

重装甲兵が一人戻って来た。

「どういう事だ軍曹」

「本陣におわすのはパラノイア卿、反魔法使いの尖兵せんぺい、教会の犬だよ」

ティレッドは得心とくしんがいった。

「隊長だけでも下がれますか?」

「気遣いはありがたいが馬から落ちてな…腰から下が動かんよ」

「大丈夫だオレが運ぶよ、セキシン」

「任せる」

隊長は何も言わない。


「よく聞け誇り高い魔導師よ、此処で土に帰れば全てが終わる!だが此処を乗り切れば我らは英雄としてたたえられよう」


選べる道は一つしかあたえられては無かったのだ。


「魔力を反転させよ!世界を体内に受け入れよ!禁術きんじゅを持って敵本陣をえぐれ!!」


セキシンのか言葉に呼応し魔導師達が魔力を体内にへと集束させていく、ある者は血の涙を流し、ある者は体の熱で蒸気を噴き出しながら前へ前へと進む、決して止まらぬ歩みを持って、決して死なぬ体を持って。


戦史にくあり、魔法使いを敵とするなかれ。


セキシン達は敵本陣を喰い破り敵将を討ったそしてその回りには魔導師達のむくろの山があった、この戦いで魔導師達の半数が魔力に体を蹂躙じゅうりんされ死んだのだった。





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