第2話「エラとティレッド」

 しかしこのレディは本当にひどい格好だ、ボロボロで空いた穴を何度も縫った様な服、スカート何てすそりきれ、その服の上には何かのボロ布をまとっている、この冬の寒空さむぞらに靴もかずに。


「あっ、これは母が私が寒そうにしていたので…家で使っていた敷物を…」


そう言うと娘は口ごもる。


「少しそこでお待ち下さいレディ」

男はそう言うと屋敷の中にそそくさともどり何かを探してるふうだ、そのむすめ

冷たくなった足を重ね返しながら男を待った、男には女性を家に上げると言うと発想が無かったようだ。


「こちらをお使い下さい」


男は両手いっぱいの服やら靴やらを持って来ていた、その服の多くが古いデザインだったが若い女性物だった。

「あの、これをわたしに?」

「卵の御礼です、この屋敷を購入した時に残って居たものですし私には似合いませんのでお気になさらず」


娘はそれを受け取ると服に顔を埋め溢れる涙を隠した。


「あの、すみません!普段使いがいと思って!ドレスも御用意出来ますよ」

慌てる男に娘は顔上げて言う。

「いえ、違うんです、父が亡くなって以来こんなに人に優しくされた事は無かったので」

そう言った娘は涙で顔の汚れが落ち、その顔には美しい深緑しんりょくの瞳があった。


…何だ?その瞳に覚えが有る、死んだ?今この人、レディ?父は亡くなって?しんだ??


「あなたさんですか?」


娘はきょとんとした目をして男を見上げる。


わたし、いえ自分はシンダース隊に居た、魔法兵ティレッド・ウィザード特務少尉であります」

男はそう言うと娘に敬礼をした。

「父の部隊に…」

娘はどう返していのか解らなかった、娘の父親は確かに軍に居たが戦場の話はほとんどしなかったし、退役した時には足を悪くして車椅子の生活をしており、ますます戦場その話はしなくなっていたからだ。


「レディ、いえ、エラさんあなたの状況はそのお姿を見れば分かります、隊長にはおんがあります、どうか自分に力を貸させていただきたい」

「あの、でも……」

娘は見に覚えのない恩に甘えていのかと考えてしまう。

「いえ、必ず貴女あなたの力に成って見せます」

男の意思は堅い。


エラは心にあたたかい物が溢れてくる。


「はい」


娘は震える声でそう言った。

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