薄荷のひとひら

きし あきら

薄荷のひとひら

 夕かたの空に月が白い。しずかな東の半月である。

 しんとしたこころもちで見ていると、薄残りのあおぞらから、おりてくるものたちがある。ひらひらと輪を描く妖精である。

 そのうちのひとひらが目のまえへとやってくる。と薄荷の香りがする。細い腕をさしだされたので、だしかえすと、手のひらになにやら押しこまれた。ちいさく、ちいさく、ひんやりとする。

 妖精がわらうとかすかな音がする。薄玻璃のはなうたの音である。手をひらいてみる。白い半月の飴の、ひと粒がある。

 風がふく。風がふくと薄荷の香りがする。薄玻璃の、蜜のかおりである。

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薄荷のひとひら きし あきら @hypast

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