真水

春。

 将来の夢は、なんですか。


 大人になったら、何になるんですか。

 

 小学生の頃は、なんて答えてたっけ。お花屋さん、ケーキ屋さん、ファッションモデル、消防士、警察官。あれ、沢山あったはずなのにな。なんで今はひとつも残ってないんだろう。

 

 子供の頃は、夢が沢山あった。手に持っても溢れて、これじゃあ人生一つじゃ足りないねなんて笑った。大人に近づくにつれて、一つずつ手放していった。落としたのか、手放したのか、定かじゃないけど。今私の手にあるのは、空洞と自己嫌悪。鮮やかだったあれは、幻だったのだと思い込んでる。

 

 僕らは今、大人と子供の狭間にいる。大人に近づくと夢を失っていくなら、大人になんてなりたくない、子供のままでいたい、と泣いた。大人達の凝った理想論と将来に対する盲信ぶりに気づいて嫌気がさした。

 でも、僕らの体はどんどん大きくなる。一年に一回、誕生日が来て、お祝いされて、大人に近づいていく。大嫌いな、つまらない色に染まっていく。

 

 だからきっと、つまらない色に染まりきる前に、青い春の中に浸かるんだ。青の中で溺れて、それでも生きるのに一生懸命な僕らは息継ぎなんてしてる暇も無い。もちろん、将来なんて見据えてる暇なんて無い。隣にいる人と笑って、嫌なことに泣いて、嫌悪感を剥き出して遠ざけて、表現出来ない感情に戸惑って支配されて。


 どうしたって抵抗できない、時間という奴らに、僕らだけが囚われない。春は短くて、すぐに過ぎ去って仕舞うから、つまらないことなんて全部捨てて、今すぐに行きたいところに行こう。会いたい人に会って、食べたいものを食べて、写真撮って、それでも時間は足りないから、学校もたまにはサボっていいよね。校則を破るのだって、僕らのルールだ。

 

 

 

 

 

 

 僕らの背中にはられた青春の値札は、軽くない。

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真水 @water__

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