第7話 肝試しの時期はもう過ぎました。
「アルゴ王!例の変な少年と、尋問室へ不法侵入した者を連れてまいりました!」
アルゴ王、そう呼ばれた男の前に、恐喝兵士がタクマ達を突き出した。するとその男は、絵に描いたような玉座から立ち上がる。
王の怒りを買ったのだろうか、王は剣を抜いて二人の前でそれを振る。
しかし王は、フィルの縄だけを斬った。
「馬鹿者!怪我人になんて事をするのだ!」
王はその連れてきた兵士に怒鳴る。
「ひっ!も、申し訳ございませんっ!!」
流石の大口を叩いていた恐喝兵士も、王の怒鳴り声には全身を震わせる。良くも悪くも、慣れているタクマには、何故怖がっているのか、理解はできなかった。
兵士が王の威圧により逃げ出すと、アルゴ王はフィルに顔を合わせた。
「うちのバカが申し訳ない。詫びと言っては難だが、その罪を無かったことにしよう」
「ありがとうございます……後、隣の彼は悪い奴じゃないですよ」
フィルはそう伝え、近くの兵士たちの肩を借り、玉座の間を後にした。
すると今度は、タクマの方へ向き、うーむと唸り声を上げた。
「お前さんのその服装、珍しい黒髪、そして武器屋の現店主であるケンが誰にも譲らなかった、最上級の鉄の剣……」
王はタクマの容姿や武器、服装などを隅々まで見回し、ブツブツと呟く。
そして王は、まさかと呟いた後、タクマの縄を斬る。
「主の噂は、さっきのバカから聞いた。何でも、誰も知らない魔法を使うらしいな」
一体何をされるのだろうか、まさか異邦人である俺への粛清か?タクマはビクビクしながら王の顔を見る。
すると王は、タクマの肩を掴んで「その魔法を見せてくれ」と頼んできた。
しかし、そんな事を言われても、魔法を使う魔物を知らない。しかもこのコピーはあくまでも“敵の魔法”にのみ有効である。
だが、物は試しという訳で、タクマは王に「何か魔法は使えますか?」と訊ねた。
「ならばこれを真似できるかね? 《ワープ》!」
アルゴ王がそう唱えると、王の足元に光の魔法陣が出現した。そして、瞬きをした瞬間、王は一瞬で姿を消してしまった。
「ものは試し、《コピー》!」
タクマは何も出ないと思いながらも、そう唱えた。
すると、なんとその数秒後に、フレアをコピーした時のように、魔法陣が現れた。
「マジかよ、出来ちゃった。そして、《コピー・ワープ》っ!」
タクマが大声で唱えたその時、景色が城内から、アルゴの門前に変わった。
完全にできてしまった。タクマは「おぉ……」とどうリアクションをしたらいいか分からないため、普通に驚いた。
そして、門の前で待っていたアルゴ王が、「やぁやぁ」と、声をかけてきた。
「なんと、これは驚いた」
「実は俺も驚いてるとこなんです」
「お互い気が合いそうだな。ハッハッハ!」
二人は笑いながら、アルゴに戻る。
「そうだ、面白い物を見せてもらったお礼……と行きたいのだが、一つ頼み事をしても良いかね?」
「な、何ですか?」
何か嫌な予感がする。
タクマは次の依頼が何か、ドキドキしながら固唾を飲む。
すると、王はアルゴ城の隣にある、いかにも出そうな古い屋敷を指差した。
「あれって……?」
「何年か前に主が居なくなった幽霊屋敷だ。あの屋敷を取り壊したいのだが、何故か不可解な事故が多発して壊せないのだよ。だから、不思議な事故には謎の魔法。という訳で、君に調査してもらいたい」
タクマの嫌な予感は的中し、全身から冷や汗を流す。何故なら、タクマは幽霊があまり好きではないのだ。別に嫌いと言う訳ではないし、この先魔王討伐の為に戦うとなれば、あんな所の探索もしなければならない。けど、そう思っても嫌な物は嫌だ。
それに加えて、依頼理由も超絶、爆絶、いや轟絶並に雑っ!!
しかし、王の命令となると「いいえ」なんて言えない。もし言えば、多分「最近耳が悪くって……」ととぼけるか処刑。きっと後者だ。
だが、逆に考えれば王の命令。つまり、お礼がコピーを見せた分より増える可能性がある。
正直怖いが、今後の生活も掛かっている為、タクマは「やります!」と勇気を振り絞って答える。
「やってくれるのか!ありがとう、それじゃあ城で報告を楽しみにしてるよ」
王はそう言い残し、城への道を近くにいた兵士を護衛として歩いていく。
「あそこかぁ……気は乗らないけどやるしかないか」
タクマはそう呟きながらも、その幽霊屋敷の方へと向かっていった。
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