025:地道に泥臭く最効率で。


 ヤバすぎる大蛇との死闘があった次の日の朝。

 時刻はたぶん8時くらい。

 場所はうちのアパートの屋上。


 上空を含めて、周囲にヤバい魔物がいないのは確認済み。

 私はペタペタと落下防止の手すりを登る。

 手すりの上に到着。

 そこからチラッと下を見ると、私の部屋の見慣れたベランダが見える。

 

 とはいっても、私のベランダまではかなりの高さがあるわけで。

 ……当然怖いわけで。


 《大丈夫です。飛び降りてください》


 鬼畜すぎる声が聴こえた。

 飛び降りてくださいってパワーワードすぎでしょ。

 もう嫌や……。

 こんなん何回やっても慣れないってのに……。


 《早く飛び降りてくださいユウナ。時間が押してます》


 だぁー!!

 もう分かったよ!!

 この効率厨ッ!!

 飛びゃあいいんでしょ飛びゃあッ!!


 せーの、ジャンプッ!


 ぬわあああああああ───グハッ。


 背中からベランダに落ちた……。

 超痛い……。


 《スキル〈打撃耐性〉のレベルが上がりました》

 《スキル〈痛覚軽減〉のレベルが上がりました》


 地獄の終わりを告げる通知が聴こえた。


 よっしゃぁぁああああ!!!


 《お疲れ様です、ユウナ。〈打撃耐性〉〈痛覚軽減〉が共にLv.7になりました》


 16回の飛び降りでようやく……。

 あぁ、長かった。

 頑張ったよ私。

 努力は実る。

 うぇーい。


 …………。


 ところで、私は何をしているのか。

 疑問に思う人も多いことでしょう。

 答えは簡単。

 スキルのレベル上げです。

 つぐみさんが干渉できないスキルのレベル上げ。


 ───これが私のスケジュールなのです……。


 《HPが回復するまで少し休憩にしましょう》


 りょーかい。

 私は部屋に入りテーブルの上に移動する。

 そしてリラックス。

 はぁー、疲れたぁぁ。


 …………。


 ……実は私、1日のスケジュールが緻密に決められてるんですよね。

 何時から何時まではこのスキルのレベル上げ、その次は魔物狩り───みたいな感じで……。

 もちろん決めたのはつぐみさん。

 今後も生き残り続けるには可能な限り早く強くなる必要があります……という理屈で、つぐみさんが1日のスケジュールを管理すると言いだしたのです……。


 今朝のことです……。


 正直キツいです……。


 《すべてはユウナのためです》


 ……うん。

 分かるよ、分かるから従ってるんだけどね。

 ……そうなんだけど……やっぱどう考えても効率厨すぎだろッ!!

 

 つぐみさん……こんな魔物が溢れる世界でさ、屋上からベランダに飛び降りて〈打撃耐性〉のレベル上げしてるのたぶん私たちくらいだよ?

 ねえ、そこんとこわかってる?

 普通じゃないってことちゃんと自覚してる?

 

 《このように訓練できるのも、ユウナの隠密系スキルのレベルが軒並み高いおかげですね》


 うん、そうだね。

 隠れるのだけは得意だもんね私……じゃなくてっ!

 そうじゃない、そうじゃないよつぐみさんっ!

 もうなんか全然言葉が通じない外国人と話してる気分になったよっ!

 

 《ユウナ、ワタシは学んだのです。全てを予測することはできません。だからこそ準備しすぎるといったことは決してないのです。あの大蛇の魔物『ザルヴァ・アングイス』との遭遇がいい例です》


 …………。


 《確かにユウナは強いです。スキルや肉体能力だけでは説明できない、才能としか言い表せないものをもっているのだと思います。ですが、もう一度『ザルヴァ・アングイス』と戦って勝てますか? あの戦闘には運が介在する場面が多くあったのではないですか?》


 …………。


 《解っていただけたようですね。では頑張りましょう。後3分ほど休憩したらスキル〈獰猛狂化〉の検証、続いて昼の部の魔物狩り、といった流れです。張り切って行きましょう》


 …………。


 ぬわあああああああッ!!

 う、鬱になるゥゥううう!!

 この圧倒的理詰めッ!!

 反論の余地がないド正論ッ!!


 その通りすぎてぐうの音も出ない……。 


 ……うん、でもつぐみさんは凄いよ。

 言うだけのことはあって、ほんと頼りになる。


 今朝もさ、私が歯磨きしてるときに〈眷属化〉とかいうヤバそうなスキルを獲得したって報告されて、めちゃくちゃ驚かされたばっかりだし。

 しかも、後々は愛情を植え付ける〈魅了〉や恐怖を植え付ける〈恐慌〉なども手に入れたいですね、なんて向上心が無限すぎることまで言われちゃって……。


 …………。


 ああああああああッ!!

 そんなこと言われたら、私が頑張らないわけにはいかねぇじゃんかぁあああッ!!


 《さすがはユウナです》


 はぁ。

 でもまあ、結局は強くなるしかないんだよねー。

 今の東京で生きていくには。

 それには近道なんてないのもわかる。

 地道に泥臭く頑張るしかないってわけよ。


 《その通りです、ユウナ。共に頑張りましょう。ワタシもユウナが強くなるための最効率プランを考えますね》


 ……やっぱつぐみさんは効率厨だ。



 ++++++++++



 名前:ユウナ

 種族:リトルバジラリザード

 LV:14

 HP:197/197(50up)

 MP:233/233(60up)

 攻撃力:115(30up)

 魔法力:194(60up)

 防御力:129(35up)

 対魔力:183(60up)

 素早さ:640(150up)

 状態:正常

 属性:邪悪

 カルマ:-708

 ランク:D-

 【スキル】

〈強刃毒牙Lv.7〉〈強刃腐敗牙Lv.7〉〈強刃麻痺牙Lv.3〉〈強刃衰弱牙Lv.3〉〈強刃毒爪Lv.7〉〈強刃腐敗爪Lv.7〉〈強刃麻痺爪Lv.3〉〈強刃衰弱爪Lv.3〉〈毒のブレスLv.6〉〈腐敗のブレスLv.8〉〈麻痺のブレスLv.3〉〈衰弱のブレスLv.3〉〈思考超加速Lv.4〉〈分裂意思Lv.ー〉〈瞬間記憶Lv.Max〉〈極限集中Lv.4〉〈魔力感知Lv.3〉〈魔力操作Lv.3〉〈保護色Lv.ー〉〈獰猛狂化Lv.1〉〈身体強化Lv.1〉〈高速移動Lv.1〉〈竜操術Lv.1〉〈毒吸収Lv.5〉〈毒調合Lv.5〉〈解毒牙Lv.ー〉〈隠密Lv.7〉〈気配遮断Lv.7〉〈危機察知Lv.6〉〈全癒脱皮Lv.ー〉〈自己再生Lv.3〉〈HP自動回復Lv.6〉〈MP自動回復Lv.5〉〈魔力隠蔽Lv.7〉〈索敵地図Lv.5〉〈無音Lv.4〉〈急所感知Lv.1〉〈眷属化Lv.1〉〈毒無効Lv.ー〉〈麻痺無効Lv.ー〉〈腐敗無効Lv.ー〉〈酸無効Lv.ー〉〈打撃耐性Lv.7〉〈痛覚軽減Lv.7〉〈精神耐性:Lv.8〉

 【称号】

『孤独』『獰猛』『人類の敵』『最初の蜘蛛殺し』『竜喰い』『悪辣』『悪食』『残虐』『最初の竜殺し』『大物喰らい』『大胆不敵』『ドラゴンライダー』『人殺し』『毒姫』『災禍』『殺戮者』『虐殺者』『暗殺者』『断罪者』『無慈悲』『外道』『蛇殺し』『戦闘狂』『戦闘の鬼才』『スピードスター』

 

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