020:狩り、そして乱入者。
『コボルト・ウォーリアー Lv.4』
『状態:正常 HP:158/158 MP:0/0』
『コボルト・ウォーリアー Lv.3』
『状態:正常 HP:153/153 MP:0/0』
茂みの中から敵を観察する。
なんか犬人間みたいなのが2匹、槍を持って入口に立ってる。
どっから持ってきたのよ、そのいかにも原始人が使ってそうな槍。
えー、何あれ。
普通に知性が溢れてるんですけど。
純粋な魔物っぽいのに知性が溢れてるんですけど。
それに敵の反応は店内にもある。
店の一番奥、飲み物とか弁当がある所。
入口のコイツらぐらいなのが2匹……そして、ちょっと強そうなのが1匹。
合計5匹か。
…………。
さーて。
どうしようか。
《問題ないと思います》
……へ?
つぐみさんから声がかかった。
《スキル〈危機察知〉にも反応がありません。それに、あの存在の『精神の核』はさほど大きくありません》
……知らない単語出てきたー。
ねぇ、何? 精神の核って。
《簡単に言えば『生物としての強大さの指標』のようなものです。強大な生物ほど大きな精神の核をもっており、精神寄生生命体であるワタシにはそれが視えるんです。これはワタシの予想になりますが、この『精神の核』が『魔石』となっているのではないでしょうか》
うん、小難しい話はわかんないや。
それに興味もない。
《…………》
要は、アイツらは私の敵じゃない。
ってことでしょ?
《その通りです。ユウナの方が何倍も大きな精神の核を持っております》
そう。
それだけ分かれば十分。
───じゃあ殺そうか、つぐみさん。
《……以前から感じていましたが、ユウナは『殺す』という行為をする際に感情が非常に昂ります。高揚しているとも言えます。何故ですか?》
なっ、ち、違う!!
高揚なんてしてないし!!
人を根っからの殺人鬼みたいに言うな!!
《ごめんなさい、ユウナ》
はぁ……。
……私、女よ?
どこにでもいるフツーの女よ?
内心は怖いよーって怯えてるに決まってんじゃん。
それでも自分を奮い立たせて頑張ってんじゃん。
…………。
ってか、殺すことの忌避感を消したのってつぐみさんでしょ!!
《はい、確かにワタシはユウナの殺すことへの忌避感を極限まで薄めています。ですが、高揚するようにした覚えはありません。つまりユウナは元から───》
わーわーわー!!!
やめなさい!!
マジやめてくださいお願いします……。
…………。
いや、私もね、ほんとはこんなことしたくないよ?
で、でも、つぐみさんがレベル上げしようって言うから仕方なく……そう、本当に仕方なく……。
《そういうことにしておきましょう》
……はい、そういうことにしておいて下さい。
《ですがこれだけは約束して下さい。ワタシが『撤退』と言ったら絶対に撤退して下さい》
りょーかい、つぐみさん。
んじゃ、どうやって殺すか考えますか。
なんか犬っぽいし鼻が利きそうだよねー。
ここはスッと行ってザクッて感じの方がいいかな。
ブレス系は匂いでバレそうだし、もたついてても匂いでバレそう。
一気に、ってのが1番良さげだね。
《生き生きしてますね》
ちゃちゃ入れないでよつぐみさん!!
《ごめんなさい。ですが的確な判断です。ユウナには『殺しの才能』がありますね》
ないです!!
そんな物騒な才能ないです!!
生きるために真面目に考えてるの!!
つぐみさんもアドバイスちょうだい。
《そうですね。狙うべきは足下、できればアキレス腱を損傷させてください》
うん、そうだね。
バレずに毒を入れたい。
行動できなくさせるのがベスト。
耐性がなければそれで死んでくれるし。
というか、それで死んでくれなきゃ撤退か。
《はい。それと、ユウナの爪は前に3後ろに1ですよね》
ん? 言われて見ればそうだね。
……私、いつの間にか指5本じゃなくなってたんだ……今気づいた。
《前の3本のうち、麻痺と猛毒を2対1の割合で付与してください》
む、難しいことを要きゅ───できた。
《行動阻害と殺害。その両方の観点からこの割合がベストだと思われますが、どうですか?》
うん、異存なし。
私は両方の前脚に《強刃毒爪》と《強刃麻痺爪》を発動させ、毒と麻痺を付与する。
つぐみさんの助言通り、割合は2対1。
《保護色》《隠密》《気配遮断》《魔力隠蔽》《無音》はすでに発動済み。
うん、準備OK。
はー、ふー。
じゃあ、行こうかな。
《落ち着いてますね。やはりユウナには殺しの才───》
つぐみさんの言葉の途中で私は草むらから飛び出す。
気づいている様子はない。
トップスピードに乗る。
速いのが私の唯一の長所。
どんどん距離が縮まる。
やっぱ気づかない。
あぁ、イケるわ。
2足歩行の犬っころの足下に到着。
勢いそのままに爪を振るう。
本当は引っ掻き傷をつけられればいいなー、とか思ってたんだけど───抉れた。
アキレス腱の辺りがごっそり抉れて、私も自分自身にドン引きなんだけど……。
意外と脆いなコイツら。
「キャウンッ!!」
可愛らしい声で鳴くじゃん。
そのままもう片方も抉る。
犬っころは立っていられず崩れ落ち、もう1匹が何事かと顔を向けた。
だけど私はすでにそのもう1匹の足下───抉る。
「キャウンッ!!」
そう鳴くように決まってんの?
ウケるんですけどー。
もう片方も抉ってから私は店内に侵入。
すぐに商品の隙間に隠れた。
《スキル〈強刃毒爪〉のレベルが上がりました》
《スキル〈強刃毒爪〉のレベルが上がりました》
《スキル〈強刃麻痺爪〉のレベルが上がりました》
《スキル〈強刃麻痺爪〉のレベルが上がりました》
「ガゥガ?」
「ガガゥガゥ」
「ガゥガガ? ガゥガゥガ!」
「ガゥ」
「……ガゥ」
店の奥から声が聞こえた。
やっぱ会話できるっぽいね。
ガウガウうるさいけど。
私に襲われたコボルト2匹は、ピクピクと体を痙攣させて動かない。
麻痺効いてる。
……ってか、麻痺ってえげつないな。
こんなに動けなくなるのか。
何気に1番ヤバい状態異常かもね。
10秒くらいピクピクする2匹を観察していると、別のコボルトがやってきた。
状況確認に来たって感じ。
「ガガゥ……ッ!? ガガ───キャウンッ!!」
だから私は後ろから高速で忍びより、そいつの脚を抉る。
そしてすぐに隠れる。
無様な鳴き声をあげながら倒れ、コイツもまたピクピクと痙攣して動かなくなった。
これで3匹。
残るは後2匹。
やべー、やっぱ楽しいわー。
《…………》
てか、なかなか死なないな。
───今ならイケるか?
私はピクピクと痙攣する3匹に近づき───喉を抉る。
喉を抉る、喉を抉る。
すると、淡い光と共に小さな魔石へと変わった。
それを私はパクパクパクっと食べる。
美味しい。
はい、3匹殺し終わりましたー。
楽勝。
《個体名『ユウナ』のレベルが上がりました》
《カルマ値が下降しました》
《各種能力値が上昇しました》
はー?
3匹殺してやっとレベル上がんの?
しけてんなーコイツら。
《豹変、という言葉が相応しいですね》
……うるさいよ、つぐみさん。
集中してるんだから黙ってて。
本当にヤバい時以外は。
《そうですね。ごめんなさい、ユウナ》
ううん、いいよ。
さて、あと2匹。
どうやって殺してやろうか。
「ガガゥ?」
「ガゥゥ、ガガゥ」
商品棚の隙間に隠れていると、また声が聞こえた。
そして今度は2匹現れる。
1匹は今までと同じ奴。
そしてもう1匹は───
『ハイ・コボルト Lv.7』
『状態:正常 HP:274/274 MP:0/0』
ちょっと強い奴。
しかもゴツい。
でもイケる。
今、コイツらは完全に死体に気を取られてて私に気づいてない。
チャンスは活かさないとだわ。
決断してからは早い。
私はまた飛び出し、目の前の2匹へと迫る。
そして───抉る。
まずは普通の方。
「キャウンッ!!」
ピクピクと痙攣しながら倒れる。
もう1匹のゴツい方が何事かと振り返る。
だがもう遅いっての。
私はすぐさま向きを変え───静止した。
いや、静止せざるを得なかった。
だって───突然ゴツいコボルトが頭から消えていったんだから。
いや、違う。
これは私がよく知ってるやつ───〈保護色〉だ。
あぁ、コボルトは“ソイツ”に丸呑みにされたのか。
なんで気づかなかった。
こんなヤバい奴が近くに居たってのに。
私が固まっていると、“ソイツ”は私にギョロりと目を向け、〈保護色〉を解除した。
露になったその姿は───全長10メートルを越えるだろう巨大な黒い蛇だった。
ゾワりと嫌なものが背中に走る。
うわぁ、死んだかも。
『ザルヴァ・アングイス Lv.9』
『状態:åŒn€ HP:Œnã % å MP:åã å°xl』
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