008:人間観察は嫌いじゃない。


 名前:ユウナ

 種族:リトルバジラリザード

 LV:1

 HP:37/37

 MP:53/53

 攻撃力:21

 魔法力:32

 防御力:24

 対魔力:21

 素早さ:186

 状態:正常

 属性:邪悪

 カルマ:-203

 ランク:D-

 【スキル】

〈強刃毒牙Lv.1〉〈強刃毒爪Lv.1〉〈孤独耐性Lv.4〉〈脱兎Lv.2〉〈恐怖耐性Lv.7〉〈気絶耐性Lv.3〉〈打撃耐性Lv.2〉〈獰猛化Lv.1〉〈強刃腐敗牙Lv.1〉〈強刃腐敗爪Lv.1〉〈混乱耐性Lv.1〉〈竜操術Lv.1〉〈保護色Lv.ー〉〈毒吸収Lv.1〉〈毒調合Lv.1〉〈解毒牙Lv.ー〉〈毒のブレスLv.1〉〈腐敗のブレスLv.1〉〈毒無効Lv.ー〉〈麻痺無効Lv.ー〉〈腐敗無効Lv.ー〉〈酸無効Lv.ー〉

 【称号】

『孤独』『獰猛』『人類の敵』『最初の蜘蛛殺し』『竜喰い』『悪辣』『悪食』『残虐』『最初の竜殺し』『大物喰らい』『大胆不敵』『ドラゴンライダー』『人殺し』『毒姫』『災禍』



 ++++++++++


 

 結局、あれからステータスはここまで項目が増えました。

 なんか私がHPとMPの存在を知った途端、ステータスにHPとMPが増えたのが気になってさー、あれ、もしかしてと思ったわけよ。

 

 『攻撃』とかあるかなー、と思ったらステータスに『攻撃力』って項目が追加された。

 『防御』とかもあるかなー、と思ったら『防御力』と『対魔力』が追加されるって感じで、最終的にこうなった。

 ほんと、この世界どういう仕組みなんだろね。

 親切なのか不親切なのかわからん。


『攻撃力:物理攻撃能力の平均値』


『魔法力:魔法攻撃能力の平均値』


『防御力:物理防御能力の平均値』


『対魔力:魔法防御能力の平均値』


『素早さ:瞬発移動速度の平均値』


 ……相変わらず説明がついているのはありがたいんだけどさ。

 私のステータス……低くね?

 いや、うん、わからないよ?

 比較できないからわからないけど……すごーく低い気がする。

 

 そして薄々そんな気はしてたけど、素早さ超特化な私というトカゲ……。

 これはあのオーガのような化け物から、逃げて逃げて生き延びろという啓示だな。

 それと地味に『魔法』があることに驚きつつ、私が『魔法』の方がほんの少しだけ得意ということにさらに驚いた。

 

 こんな蜥蜴に魔法なんて使えたのか……。

 魔法っぽいスキルがないのが残念でならない。


 さて、私が進化で寝ている間にどれだけ時間が経ったのかは知らんけど、コンビニに着くまで人にも魔物にも出会わなかった。

 みんな避難しちゃったんかなー。

 まあ、私としてはあのオーガみたいな化け物に襲われることなく安全に着けてよかったけど。

 それにしても、小さいって大変。

 ブレス系のスキルとかを試しながら進んでたってのもあるけど、コンビニまでめっちゃ時間かかったよ、はぁー。

 

 キョロキョロ、よし、誰もいないな。

 何となく天井からの方が見つからないような気がしたから、草むらから素早く移動し、壁に張り付きそのまま登って、天井からゆっくりと店内に入った。

 当然〈保護色〉も発動、もう私これなきゃ不安で生きていけない。

 

 遠目から分かってたけど、電気はついてる。

 本当に不思議、なんでついてんの?

 でも結構荒らされてる。

 床にはいろんな商品やガラスが散らばってるし、商品とかが並べてある棚が倒れてる。

 魔物、ってよりこれは人だろうなーと思う。


 意外と食べ物とか飲み物が残ってるなー。

 この感じだと、進化で何日も寝ていたわけではなさそうだ。

 よかった。


 ゴソゴソッ


 え?


 ゴソッ、ゴソゴソッ、ゴソッ

 

 な、ななな、なんか音がするぅぅううう。

 こわっ!

 なんかいるのか……。

 私は天井を、静かに進んでいく。


 《新たにスキル〈隠密〉を獲得しました》


 うるさい!


 ゴソゴソッ、ゴソッ、ゴソッ


 ……そして、私は見つけた。

 Tシャツに短パン、大きなリュックを背負い、深々とキャップを被った──商品を漁る緑色の醜悪な小人を。

 

 ぎゃぁぁあああ!!

 なんだあのキモすぎる生き物はぁぁああ!!


『シゲユキ ゴブリン Lv.2』

『状態:正常 HP:48/48 MP:0/0』


 シゲユキィィイイイ!!

 誰なんだ君は!!

 なんなのゴブリンって!!

 そんなの知らないんですけど私!!

 あれ? 若干ドラ〇エのコボルトに似てる気もするけど……あんなにキモくないわ!!

 

 ふぅ。

 一旦落ち着こう。

 とりあえず見える情報が増えて嬉しい。

 なんで増えたかは相変わらずわかんないけど。

 うん、まずはそのことに喜んで平静を取り戻せ私ー。

 スーハー、スーハー。

 よし、落ち着いた。


 ───あぁ、お腹空いた。


 ッ!? 違う!!

 違うから!!

 私あんなの食べたいって思ってないから!!


 これはなんなんだ本当に。

 呪いか?

 呪いなのか?

 人間を見ると無性に襲いたくなったり、魔物を見たら無性に食べたくなったり。

 

 もう意味がわからない。


 そんなことを考えていると、キキキィーッ、というスリップ音が聴こえてきた。

 なんだろと思って私は外を見に行く。


 すると、1台のボロボロの車がこのコンビニに向かって爆走しているのが見えた。

 な、なんだあれは。

 運転してるのは初めて車に出会った原始人なのだろうか。

 それくらい荒い運転なんだけど。


 シゲユキも何事かと外を見に来た。

 

 「ガ ヤバイ ヤバイ」


 ……喋った。

 シゲユキ喋れるのか、凄いな。

 なんか片言で喋りずらそうな声だけど。

 こっちに来る車を見つけて、オロオロとしだす緑色の小人。

 

 なんだろう、襲うか迷ってんのかな?


 って、そんな場合じゃない。

 私はどうしよ。


 …………。


 んー、〈保護色〉の性能を試すいい機会か。

 よし、決めた。

 ヤバくなったら速攻で屋根の上に逃げればいいし、ここは様子を見てみるか。

 

 私はコンビニの入口付近の天井にペタリと張り付き、バレるかどうかを試すことにした。

 この世界はスキルっていう意味不明なもんがあるし、もしかしたら“見つける”スキルがあるかもしれない。


 ちなみに、シゲユキは店員の休憩室とかがあるレジの奥へと駆けて行った。

 どうやらそこでやり過ごすことにしたらしい。


 しばらくして、そのボロボロの車はコンビニの前に停まった。

 よかった、ぶつからなくて。

 ガチャりとドアが開き、そこから4人の男が出てきた。

 全員16歳くらいのガキ。

 学生か?


「おい、急ごうぜ。ユリさんは待たせると怖いからな」


「あぁ、とりあえず最優先は水だ。ありったけ持っていこう。幸い、まだたっぷり残ってるみたいだ」


「……2人ともちょっと待ってください。僕の〈索敵〉に反応が1つあります」

 

「マジッ!? 魔物!? 俺無理、俺無理だから頼むよマジで!!」


 え、バレた!?

 上から4人を観察しながら、何やら勉強できそうなメガネ君の言葉に心臓がビクッとはねた。

 やっぱり人間もスキルが使えたということに、そしてやはり“見つける”スキルがあったことに驚いた。

 

「落ち着けタケル。……で? 強さはどんくらいだ? 場所は?」


「おそらく、強さは大したことないと思います。〈危機察知〉に反応がありませんから。場所は店の奥です。レジ裏のドアの向こうだと思います」


 ふぅー。

 よかったー。

 バレたのはシゲユキ君だった。

 〈保護色〉優秀。

 少なくとも動かなければ見つからないっぽい。

 私、結構近くに居るのに気づく気配すらないよ。

 怖いから試しに動いてみようなんて思わないけど。

 

 そして、やっぱり噛みつきたいって欲求を抑えるのが大変。

 4人は無理なので我慢我慢。


 バレないようなので、私は引き続き人間観察を続けてみることにした。

 人間観察は嫌いじゃない。

 なんだか面白いことが起きそう、ワクワク。

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