004:獰猛な独身女は害悪蜥蜴。
「キィキィ」
んー。
「キシシ」
うわー、最悪。
『キィ』と『キシ』しか言えないわ私ー。
これじゃ居酒屋でビールおかわりしたとき、なんて言えばいいんだっての。
…………。
はい。
くだらんこと考えるの終わり。
はぁー最高ー。
マイスイートルーム幸せすぎる。
このボロアパートの一室にここまでの幸せと安堵を感じる日がこようとは。
世の中何が起こるかわからんな。
えーっと、とりあえずあの後どうなったか話そうか。
ドラゴンなフミカちゃんとのヤバすぎる死闘を終えて、私はせっせっと死体になったフミカちゃんを運んだの。
重すぎワロタ。
いや重いよフミカちゃん。
つい本人に言っちゃいそうなくらい重かった。
でも頑張った。
今の私には貴重な食料だし。
私の部屋があるの2階なんだけど、屋上から普通にうちのベランダに侵入できんのよ。
ボロアパートすぎて。
新宿でも指折りのボロアパートだからね、うちのアパート。
……誰がお前の部屋なんかに侵入するか、とか言ったやつは殺す。
それでさ、敵がいないか注意しながらフミカちゃんを運んで、うちの部屋のベランダにフミカちゃんを落として、私もぴょんっと。
そしてようやく帰宅ですよ。
戸締りをキッチリして、やっと安心。
はぁー疲れた。
ちょっと外を見るつもりが本当に大変だった。
東京が凄い高い壁に囲まれているわ、人間を見かけるとなぜか私は噛み付いちゃうわ、スパイダーなマサオ君とドラゴンなフミカちゃんには襲われるわ……。
私の人生急変しすぎ、マジふざけんな。
まあ、それはもういいや。
だいぶ諦めついてるし。
そんなことネチネチ考えてたらすぐ殺されそうだしねー。
生存競争苛烈すぎて、今の東京。
フミカちゃんの死体は頑張って冷蔵庫に入れた。
なんか電気生きてて良かったー。
……いやなんで電気生きてんのかさっぱりだけど。
深く考えないでおこう。
あ、でもテレビとかはつかなかったよ。
この身体だとリモコンのボタン押すのも一苦労だよ……小さいってすごく不便。
あー、テーブルって冷たくて気持ちいいわー。
私は今、小さな蜥蜴になったことをいいことにテーブルのうえでゴロゴロしてる。
だってすごく幸せなんだもんこれ。
よーし、リラックスしながらいろいろ考えないとなー。
まずは自分についてから。
++++++++++
名前:ユウナ
種族:ロワーリトルバジラリザード
LV:5【進化可能】
属性:悪
カルマ:-117
ランク:E
【スキル】
〈毒牙Lv.4〉〈毒爪Lv.2〉〈毒耐性Lv.4〉〈孤独耐性Lv.3〉〈脱兎Lv.2〉〈恐怖耐性Lv.3〉〈気絶耐性Lv.3〉〈打撃耐性Lv.2〉
【称号】
『孤独』『獰猛』『人類の敵』『最初の蜘蛛殺し』『竜喰い』『悪辣』『悪食』『残虐』『最初の竜殺し』『大物喰らい』『大胆不敵』『ドラゴンライダー』
++++++++++
やっぱり出たー。
うん、いろいろ増えてるー。
妙なアナウンス結構聴こえてたしね。
というか……『属性:悪』って何。
それと称号が心外すぎる。
心外すぎるんですけど。
いや、それ以外にも気になることが多すぎる。
進化可能……なんか怖いから一旦無視。
カルマ……とりあえずこれから考えようかな。
なんだよカルマって。
どういう意味?
もっと勉強しとけばよかった。
───そんなとき、また情報が唐突に脳内に提示された。
『カルマ:業の深さ。進化先、獲得できるスキルに影響を与える』
……ほんと、便利な世界。
でも、業の深さとか言われても分からないよ。
それとさ、ねぇ、気になるんだけど。
カルマがマイナスの数字ってことはさ、絶対あなた悪いことしてますよーってことだよね。
いや、は?
私なんかした?
生きるために命懸けで足掻いてただけなんですが?
ふざけんなまじで。
しかもなんかいろいろ影響するみたいだし。
進化先?
獲得できるスキル?
もう考えるの疲れた。
次見てみよっと。
『ランク:魔物の脅威度』
うん、これはなんとなく分かってた。
ってか、意識するだけでなんでも分かっちゃうんだなー。
すごーい。
これってスキルとかも分かるのか?
『毒牙:牙による攻撃に毒属性を付与。スキルレベルに応じて牙の強度、付与する毒の毒性が変化』
へ、へぇー。
本当に見れたよ。
なんなんだこれ。
誰かが見せてくれてるんか?
……いや、考えないでおこう。
ま、これで新しいスキルを獲得しても困らないね。
だってどういうスキルかは、こうやって調べればいいわけだし。
うむうむ。
よし。
次は称号を見てみよう。
スキルは名前から想像できるもんばっかだし。
『称号:特定の条件を満たすことで獲得できる証。称号の中にはステータスや進化先に影響を与えるものや、閲覧することでスキルを獲得できるものも存在する』
いや、称号って結構重要じゃん。
見てみることでスキルを獲得できますよーっていうのもあるっぽいし。
なんでそんなメンドイ仕様にしたんかね?
まあいいや。
いっちょ全部見たりますか。
『孤独:孤独を常とする者の証』
《称号『孤独』の詳細を確認したことにより、スキル〈孤独耐性〉のレベルが上がりました》
くたばれ。
『獰猛:獰猛な者の証』
《称号『獰猛』の詳細を確認したことにより、スキル〈獰猛化〉を獲得しました》
ふぁっく。
『人類の敵:人類と敵対する者の証。人類種に与えるダメージ上昇【微小】』
噛み付いて本当にごめんね。
名前も知らない人。
『最初の蜘蛛殺し:この世界で最初に蜘蛛を殺した者の証。蜘蛛種に与えるダメージ上昇【小】蜘蛛種から受けるダメージ減少【小】成長補正【小】』
マサオ君、君のことは忘れない。
『竜喰い:竜を喰らいし者の証。竜種に与えるダメージ上昇【微小】』
《称号『竜喰い』の詳細を確認したことにより、スキル〈強刃牙〉を獲得しました》
《称号『竜喰い』の詳細を確認したことにより、スキル〈強刃爪〉を獲得しました》
《〈強刃牙〉と〈毒牙〉が統合され、新たにスキル〈強刃毒牙〉を獲得しました》
《〈強刃爪〉と〈毒爪〉が統合され、新たにスキル〈強刃毒爪〉を獲得しました。》
マサオ君の方が美味しかった。
強刃牙に強刃爪、なんか統合されちゃったけど。
これならフミカちゃんも食べられそう。
『悪辣:悪辣非道な者の証。カルマ値下降補正【小】属性が〈善〉の者へ与えるダメージ上昇【微小】属性が〈善〉の者から受けるダメージ上昇【微小】』
《称号『悪辣』の詳細を確認したことにより、スキル〈腐敗攻撃〉を獲得しました》
《スキル〈腐敗攻撃〉が〈強刃腐敗牙〉と〈強刃腐敗爪〉に変化しました》
やかましいわ。
腐敗攻撃、なんか変化しちゃったけど。
確かに悪辣そうだな。
『悪食:あらゆる毒を喰らいし者の証』
《称号『悪食』の詳細を確認したことにより、スキル〈腐敗耐性〉を獲得しました》
《称号『悪食』の詳細を確認したことにより、スキル〈毒耐性〉のレベルが上がりました》
《称号『悪食』の詳細を確認したことにより、スキル〈麻痺耐性〉を獲得しました》
《称号『悪食』の詳細を確認したことにより、スキル〈酸耐性〉を獲得しました》
思いのほか『悪食』が優秀。
いや、マサオ君は辛くて美味しかったよ。
……いろんな毒持ってたのかな。
死ななくて良かった。
『残虐:残虐な者の証。カルマ値下降補正【小】』
私は残虐ではありません。
『最初の竜殺し:この世界で最初に竜を殺した者の証。竜種に与えるダメージ上昇【小】竜種から受けるダメージ減少【小】成長補正【小】』
うん、フミカちゃんは強敵だった。
これは本当になんとなくなんだけど、友達になれるタイプではなかったと思う。
『大物喰らい:レベル差が5以上の格上、もしくは種族的格上を倒した者の証。レベル差が5以上の格上、もしくは種族的格上に与えるダメージ上昇【大】』
まじでギリギリだった。
フミカちゃんトラウマ。
『大胆不敵:大胆な行動を実行した者の証』
《称号『大胆不敵』の詳細を獲得したことにより、スキル〈混乱耐性〉を獲得しました》
我ながら私頑張ったなーほんとに。
『ドラゴンライダー:竜を乗りこなした者の証』
《称号『ドラゴンライダー』の詳細を獲得したことにより、スキル〈竜操術〉を獲得しました》
いや、あの、乗りこなしてないです。
必死にしがみついてただけです。
───はぁ。
なんとなく、この意味不明な世界に順応しつつある自分が嫌だわー。
疲れた。
えーっと、あらためてステータス見てみよかな。
スキル増えたっぽいし。
++++++++++
名前:ユウナ
種族:ロワーリトルバジラリザード
LV:5【進化可能】
属性:悪
カルマ:-117
ランク:E
【スキル】
〈強刃毒牙Lv.1〉〈強刃毒爪Lv.1〉〈毒耐性Lv.5〉〈孤独耐性Lv.4〉〈脱兎Lv.2〉〈恐怖耐性Lv.3〉〈気絶耐性Lv.3〉〈打撃耐性Lv.2〉〈獰猛化Lv.1〉〈強刃腐敗牙Lv.1〉〈強刃腐敗爪Lv.1〉〈腐敗耐性Lv.1〉〈麻痺耐性Lv.1〉〈酸耐性Lv.1〉〈混乱耐性Lv.1〉〈竜操術Lv.1〉
【称号】
『孤独』『獰猛』『人類の敵』『最初の蜘蛛殺し』『竜喰い』『悪辣』『悪食』『残虐』『最初の竜殺し』『大物喰らい』『大胆不敵』『ドラゴンライダー』
++++++++++
うむうむ。
確認もあらかた終わっちゃった……。
じゃ、じゃあ、ちょっと怖いんですけど……『進化』、いってみよーかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます