エピローグ[異説].もう一つの私

 今日はU-MaとJR線K駅近くにある魚介系の店に入っていた。

やはり肴が魚だと日本酒も美味くなるなと話しているところだった。


 ただ,U-Maの様子がいつもと違うように感じた。

彼がとても酷く弱っているように見えたからだった。


「どうかしたのかい?

 元気がないように見えるけど大丈夫かい?」


と私が話かけると彼はややうつむき加減で返してきた。


「いや,疲れただけだ。」


ふと何に疲れたのか気にはなったが,とても気軽に聞ける雰囲気ではなかった。


「そうか,それならあまり無理をするなよ。」

「ありがとう。

 そうだな,そうさせて貰おうかな。」


珍しく会話らしい会話をしていることに私はやや違和感を感じた。

それにU-Maらしくない態度や元気のなさに今日は早めに解散をした方がいいような気がした。


「お前さんも調子が悪そうだし,今日はこのまま解散にしよう。

 また元気になったら話を聞かせてもらうさ。」


しかし,この申し出はU-Maに丁重に断られた。

U-Maは弱々しくも自分の思いを話し始めたのだった。


「俺とお前さんが初めて会ってからどれくらい経ったんだろうな。

 今考えれば変ではあったが,それなりに楽しく過ごせたと思うよ。

 何と言ってもお前さんは俺の話を疑いもせずに聞いてくれたんだからな。

 まあ,普通に考えれば当然の話でもあるがな。」


U-Maはここまで一気に話すと辛そうだが,気持ちを落ち着けようとしているようだった。


「そうだが。

 初めて会ってから二年くらいの付き合いになると思うが…。」


私はU-Maに今までのことを思い出しながら答えた。

U-Maはやや驚きの表情を見せたが,それもすぐに消えた。


「そうか,お前さんはそういう認識なんだな。

 確かにこうやって話をするようになってからは二年くらいになるよな。」


私に話しかけているでもなく,何となく独り言のようにも聞こえた。

U-Maが続けた。


「俺はお前さんとこうやって話すことに疲れたんだよ。

 それにもう嫌気もさしたから,もう終わりにしたいんだ。」


突然の話の内容に私はすぐについて行かれなかった。


「いや,今日のお前さんの言っていることは一段と突拍子もないな。

 何を言っているのか,よく解らないよ。」


すぐにU-Maが噛みついてきた。


「まあ,解らないなら解らないで俺はそれでも構わないが,とにかく俺はもう消える。

 一応言っておくが,今まで俺の話を聞いてくれて有難う,それじゃ達者でな。」


そう言うが早いか,U-Maはいなくなった。

というより,私の中から文字通り消えてしまった。

念のために呼んでみたが,やはり返事はなかった。

彼は消えてしまったのだ,この私の中から…。


 そう,U-Maが私に話をしてくれていた内容はすべて私が経験したものだった。

私が昔,重度の精神的な病にかかり,精神病院の中で過ごしている中で私の中に生まれた別人格の一つだったのだ。


消えてしまったものは仕方がない。


と独り言ちる。


また作ればいいか。


と考えている私は自分自身狂っているとしか思えなかった。

まるで失敗作は削除してメイキングを繰り返す悪魔召喚士ゲーマーの如く,私の口の端は吊り上がっていた。


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U-Maの小部屋 あすら @Tenma-Asura

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