エピローグ
ある時期からU-Maと連絡が一切取れなくなった。
ついこの間,彼と会い,また会おうと約束をして別れたハズだったのだが…。
現に連絡手段である携帯電話,SMS,SNSのすべてにおいて反応がなかった。
そして時を経ずして電話番号が変わり,アカウントも削除されていたのだった。
突然どうしたのだろうと考えてみたが,理由がわかるはずもなかった。
実際のところ,付き合い始めてから二年ほど経ったが今でも得体の知れない男ではあった。
彼が言っていたことが本当だったのか,作り話だったのか,今となっては確かめる術もない。
それにそこまで仲が良かったのかというとあまり自信はなかった。
私としては,話を聞いてみて興味のおける内容であったし,あり得そうな内容であることも事実だった。
恐らくだが,突然の出来事に私は一人混乱をしていたのだと思う。
ふと仲良くさせてもらった先輩の突然の死と同じではないかと考えてしまったのである。
若い頃,仕事でお世話になった先輩には何度となく飲みに連れて行ってもらい,人生や仕事の厳しさなど沢山のことを教えてもらった。
いつしかお互いが忙しくなり,年に一度会うか,会わないかの状態となっても先輩は私に声をかけてくれた。
飲みに行けるほどではなくなっていたが,会って話ができるだけでも私にはありがたかった。
一年ぶりに会って「また飲みに行きましょう」と約束をして別れてから二週間後に突然先輩の訃報を聞くことになった。
死因は脳幹出血によるものだったらしく,倒れてその当日に亡くなったとのことだった。
話を聞かされた時,その時ほど人の命の儚さを呪わずにはいられなった。
なぜ先輩ではなく私ではなかったのかと…。
もしU-Maも先輩と同じような状況になっていたとしたら,やはり同じように考えていただろうと思う。
ただ,ふとここで冷静な私が私にささやきかけてきた。
アカウントの削除や電話がん号の変更は意図的にやらないとこんな短期間ではムリなのではないか?
確かにその通りだと,U-Maならあり得る話だと私は笑ってしまった。
理由はわからないが,何らかの理由で離れる必要ができてしまったのかもしれない。
それにまたひょっこりと戻ってくるかもしれない。
U-Maにはそういった素養が見え隠れしていたような気がするし…。
と,楽観的に考え直した。
- 生きていれさえすれば,いつかまた会えるかもしれない。-
それからしばらくしてからU-Maがこの地を離れ,行方知れずになったと友人からの噂が流れてきた。
そして誰も連絡がつけられなくなったらしい。
U-Maのことだから,新しい地でまた私のような相手を見つけて同じように話をしているのだろう。
何となくそう思っただけだったが,それでも何だか愉快な気分になった。
この先もしU-Maと再会ができなかったとしても,聞いた話は記録として残しているし,聞かせてもらったことは事実なのだから,今から気に病む必要もないと私の中では完結していたのだった。
そう…彼ことU-Maは私の中ではすでに過去の人であり,もし会うことができればラッキーくらいにまでなっていたのだった。
まるでセーブファイルやバックアップを取ってあるから大丈夫的な発想に,私は何となく満足していたのだろう。
その後,二年の月日が流れた。
ネットニュースでは奇妙な死体が発見されたと掲載されていた。
胴体から首と四肢が皮一枚で繋がっているだけの状態で,血液が一切残っていない奇妙な死体だったと…。
そのニュースを見た知人から,その死体はU-Maに似ていると聞いたのだが,すぐに忘れてしまったのだった。
了
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