17.動画の趣味が・・・

JR線U駅近くにある串揚げJにやってきた。

ここでは串揚げがメインだが、痺辛系の豚バラ肉がメニューにあって、丁度よい辛さで酎ハイによく合うのだ。

U-Maとカウンターに並んで私が最近観たホラー映画の話をしていた。

しばらくは相槌を打って聞いてくれていたのだが、流れ的によく見る映画の話となった。


よく見る映画のジャンルか…。

そうだな、専ら観るのはホラー系、アニメーション系、アクション系かな。

基本的にはボーっと見るか、ドキドキ、ワクワクしながら見るって感じか。

中でもホラー系なら洋画、邦画問わずレンタルで借りて観ている。

ただ、ホラー系でも昔はスプラッター系が好きでよく見ていたのだが、最近は映画じゃなくホラーといっても心霊動画を見ることが多くなったと思う。


まあ、若気の至りじゃないけど、昔…、そうだなあ、二十代前半から中盤にかけては今考えても異常だったと思うよ。

特に俺自身荒み切っていて、所謂殺人物、人が殺される、人が食われる、人が狂うなんて映画を好んで観ていた。

代表的なのは洋画だと

「食人族」

「ジャンク」

「13日の金曜日」

「デモンズ」

「アクエリアス」

「死霊のはらわた」


邦画なら

「ギニー・ピッグ」

「八つ墓村」(松竹映画版)

「オールナイトロング1」

「オールナイトロング2」

「オールナイトロング3」


アニメーションなら

「うろつき童子」

「妖魔」

「戦えイクサー1」


などなど…。

うん、何度も観たし、当時は自分が安らぐ間隔すらあったと思う。

…やっぱりおかしいだろう?


そのうち、インターネットが世界で普及し始めて、俺にとっては衝撃的な発見をしてしまったんだ。

真贋は別として「殺人ビデオ」や「死体」「事故」で検索をすると、かなりの数の動画や画像がヒットしたんだ。

令和の今の世と違って、平成の初期はまだ規制も緩かったからある意味閲覧し放題だったと思う。

いくつか印象に残ったものを挙げると

「踏切で貨物列車にひかれる女性」

「耳から拳銃で撃たれる死刑囚」

「指と爪の間に針を刺す拷問」

「電気椅子で処刑される死刑囚」

「飛び降り自殺者が地面に落ちる瞬間」


かな。

音声のあるもの、ないものとあったが、当時の俺としてはまるで宝物でも見つけたかのように興奮した記憶がある。


 今考えてみると恐いもの、怖いものを映像で見たことで、背徳の気分や鳥肌が立つほどの戦慄を覚えたんじゃなかったろうか。

実は見てはいけないものを見て何か勘違いをしたのかもしれないと思う。

まあ現実の話、この歳となった今ではスプラッター系やグロテスク系を見ても面白いと思えなくなっている。

俺のことだから、単に飽きただけかもしれないし、趣味の嗜好が変わっただけなのかもしれないし、俺自身が鈍感になっただけなのかもしれない。

まあ、あまり食事の時に話す内容じゃないが、飲みの席ならギリギリセーフだろ?


私は聞き終えて、U-Maの存在や話の内容の方が一種のホラーではないかと思ったが、口に出してはこういった。

「ホント、ギリギリな範囲だな」

と、苦笑いを浮かべつつ痺れのきいた豚バラ肉を頬張り、酎ハイをあおった。

するとU-Maは片目をつぶりながら、いつも感謝していると柄にもないことを言いながら酎ハイを空けた。

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