6.時と場所を選んでほしい
あれはいつの頃だったろうか。
と,飲み屋のカウンターで馬刺しを肴に地酒を飲んでいると,U-Maは突如と話し始めた。いつもと違うのは,ニヤニヤとしたり顔の表情だったことだろうか。
とある女性(仮にIとしよう)ととあるラブホテルでセックスをシていた時のことだ。
相手であるIはセックスが苦手そうだった。
というより,あまり好きではないと言っていた。
それなら何故セックス行為に至っているのかは甚だ疑問ではあるが,それは置いとおくとして(笑)。
Iは変なトコロでコンプレックスを持っていた。
将来的には子供を産んで平和な家庭生活を送りたいとしっかりとした(?)人生設計を持っているにも関わらず,男性そのものには興味がないらしい。
かといって,シングルマザー志望ではなく,ちゃんと結婚して平和な家庭(以下略)。
それなら何故自分とセックス行為に(以下略)。
容姿は悪くない,性格も悪くない,ただコミュニケーションにやや難あり…。
まあ,普通の,一般的な女性だと思うのだが,興味がそっち方面にないというのは,ある意味致命的であるとも言えるかもしれない。
それはさて置き…。
彼女曰く,最終的にはセックスの時は男性にイッてもらわないとダメらしいので,とりあえずすることはしないと…ということで早めに出して終わらせようかと思い,頑張って動いてみた。
正常位なので目の前にはIの顔があり,何やら苦しそうな顔をしている。
ここまで来て途中で止めるのもアリかとも思ったが,相手に対して失礼にもなるだろう。
とはいえ,ムリヤリは好きではないし,顔も見てられないしと,動きながら考えていた。
あ,これはこれで失礼か(笑)
ふと目を瞑り,少しして目を開けるとIの顔が明らかに変わっていた。
別人と言ってもいいが,何と表現するのが良いのか,イメージ的にはホラー映画に出てくるような死体の顔。
目はかっと開かれていて,瞳孔も開いている。
顔色はドス黒く,口は開いた状態で涎を垂らしている。
これで血も赤黒くこびりついていれば完璧な死体の顔と言えるくらいだった。
さすがに突然のことに驚いてしまい,一瞬別の意味で声を上げそうになったが,かろうじて耐えた。
かといって,失礼とは思ったが,ナゾの女性の死に顔を見ながらセックスをする趣味はないので再び目を瞑り,動きを速めて何とか出すモノは出せた。
やれやれとイッた感じで目を開けると,Iの顔は元に戻っていた。
その後,一緒にシャワーを浴び,服を着て出ることにした。
何とはなしにIが部屋のドアの鍵を閉めているところを見ていると,閉めた後,出口とは逆の方向に向かおうとしていた。
俺が出口は逆だと伝えようとした時,突然耳元で女性の声できっぱりと
「お客様,出口はそちらではありません」
と言われた。
周りを見たが,いつもの如く人はいなかった。
とりあえず俺はわかってるよと思いながら,Iに声をかけてラブホテルを後にした。
おそらく,イタしている最中に出てきたナゾの人物ではあると思うが,結局何をしたかったのか,まったく理解できないでいる。
いつの間にかニヤニヤ顔が疲れた顔に変わっており,冗談半分で話し始めたものの当時を思い出して疲れたのではなかろうか。などと思ったが口にはこう出して言った。この馬刺し美味いから、もう一つ頼もうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます