ERAZER ──薄氷の花傘──〈前編〉
姫乃 只紫
第一章 氷柱少女
01『この夜を終わらせない』
いつも通り日を跨いだ頃に家を出た。
あっちの夜は月が
見えるのは絵具を何重にも厚塗りして作ったような、ひどく現実味のない空だけ。
こっちのほうが、動き回るには都合がいい。
深夜、街灯すらない田舎道で月明かりだけっていうのは危なっかしい。
まだ──家に閉じ込められているのだろう。
あの頃と変わらない。にぎやかなあの足音が何よりの証拠。
何度も部屋の前を行ったり来たり、階段を上がり降りしたりする、あの足音。
聞いているだけで、ただただ切なくて、苦しくて、やりきれなくなる。
あれは、きっと私にしか聞こえていない。
それは──。
信頼されているから?
責められているから?
わからない。
でも、あの
そして、その望みを叶える方法も。
だから、一刻も早く見つけなくちゃいけない。
あの娘のために。
あの娘を自由にするために。
「あいつだけは、生かしておかない」
たとえ刺し違えたとしても──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます