第16話 新人勇者たち
少将との約束の30分前。
コーヒーに似た飲み物をちびちびやりながら時間を潰していると、入口に女性が二人やってきた。
一瞬だけ視線を送ると、丁度両方と目があった。会釈をしておくと、向こうはキョトンとした表情をした後、顔を見合わせていた。
「あ!ミノリさん、ツバサさん、お疲れ様です!」
ずっと隣に居座っていたミキヤが、声をかけて出迎えに走っていく。
どうやら、彼女たちがミキヤの言っていた、残りの勇者なのだろう。
「こんばんは、ミキヤ君。そっちの人はもしかして?」
「ええ、四人目の勇者、ツボミさんです」
どうやら、自己紹介をする流れにされたらしい。
「勇者やらせてもらってます、ツボミです。戦力としてはあまり当てにしないでください」
変に期待されるのも嫌なので、先制して断りを入れておく。
女性二人は、面食らった表情を一瞬見せた後、自己紹介を返してきた。
「ツバサです。救世主になってこいと言われて、ここに来ました」
ポニーテールの女性が、きびきびとした動きで一礼する。
つい釣られて会釈を返してしまうくらい、緊張感を放っている。
「ミノリです。同じような感じで、ここに来ました。正直、今も実感わかないですけど」
ツーテールの女性が、敬礼の真似事をしながらそう言った。
さて、二人の自己紹介を聞いていて、気になった点はないだろうか?
俺にはあったので、訊ねてみることにした。
「もしかしなくても、二人ともここが勇者としての初舞台?」
答えは分かっていたものの、返事を聞いて頭を抱えたくなった。
「私は、こ、この世界が初めての転移先です!」
「あ、うちもおんなじでーす」
ですよねー。
「オレも、はじめてっす」
お前には訊いていないし、なんならもう知ってる。
「ツボミさんは、どのくらいなんですか?」
ああ、うん、この後の展開が予測できる。でも、隠しても仕方ない。
「一応、この世界でちょうど十かな」
三人ともが目を丸くし、続いて救世主発見とばかりに瞳を輝かせてきた。おいおい・・・。
「じゃあじゃあ、うちらに勇者としてのコツとか教えてくださいよ!」
「よろしければ、戦い方なんかをご教授頂けると」
「オレも、魔術ってやつ教えてほしいです!」
両手を額に当てて、ただ嘆く。よりによって面倒なシチュエーションの世界に呼ばれちまったなあと。
ていうか、勇者についての教習なんてしてもらえるんなら、俺はあんなに苦労してなかったというに。
これがジュデンだったら、うまくあしらうなりできるんだろうが・・・。
当の女性二人は、俺が魔術を使えると知ると、さらにテンションを上げていた。
ワーキャーと騒いでいる三人を止めるのは、俺の手には余る。
とりあえず、逃げ道を探してみる。
「魔術については、一朝一夕で身につくもんじゃないんだ」
ちなみに、俺は初級魔術を安定させるのまでにかかったのは五日ほど。一朝一夕ではないから、嘘は言っていない。それでも、彼女たちは引かなかった。
「それでも・・・知識だけでも教えて頂ければ」
「そうそう!ついでにコツとか感覚とかあったら聞いてみたいな」
「オレは、威力の高め方とか聞きたいっす」
どうにか三人を押さえようと四苦八苦していたところで、ようやく少将が到着したのだった。
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