第9話 1年間の恋心
俺は今日テーマパークに来ている
周りを見渡せばパリピな方々や家族で楽しいひと時を過ごしている方々友達同士で来ていたりと辺り一面人だらけである
普段ならこんな人の多い所に好んで来ないが
今回ばかりは仕方がない
「まさか帰りのお土産の荷物持ちだったなんてな」
ため息をつく僕にしてやったりと明るい笑顔を向けてくる
「別に間違っちゃいないでしょ」
「まあ、確かにな」
以前勝負で負け荷物持ちの仕事を休日する羽目になって、ショッピングの荷物持ちを想像していたが実際はテーマパーク帰りの荷物持ちだったのである
「テーマパークのお土産ってネットで買えないし、私もグッズ欲しいグッツが有るから結構量な量になっちゃって」
「そりゃ確かに荷物持ちが欲しくなるな、疲れてるのにたくさん荷物持ちたくないし」
「でしょでしょ!その為に結構頑張ったんだから!」
「そのくらいだったら普通にさっそって
くれればよかったのに?」
「え、えっと…」
彼女は顔を少し顔を背けて
「そっちの方がテストやる気が出るでしょ」
らしくもなく小さな声で呟く
「そうゆう事ね」
何かモチベーションとなるものが欲しかったのだろう
「じゃあ今度からみんなも入れてやろうよ」
「…そうだね」
「ん?そんなんじゃもう面白く無いか?」
何処か帰ってきた声は暗い気がする
「いや、いいと思う!やろうやろう!」
「じゃあ、今度のテストは俺もがんばるぞ」
元気いっぱい手を突き上げる
「そう言っていっつも平均点以下の子は?」
「僕です」
「はぁ、仕方ないから今度勉強みてあげる その代わりに今日なんか奢ってね」
「現金だなぁ」
「現役女子高生に勉強見てもらえるんだから安いもんだと思いなさいって!」
悪戯っぽく笑いながら手を後ろに組む
「そう聞くとかなりお得な感じがする!」
「その言い方なんか危ない気がする!」
周りの空気に同調し、楽しそうでいいムードの後ろに、この場に似合わず怪しげなしげな3人の影が動く
「ねぇ、やっぱり尾行なんてやめようよ!」
「何を言っている!こんな面白い事やめられる訳ないだろ!」
「綾香さん、自分に正直になりなさい」
「水沢先輩もこんな事辞めましょうって
先輩は?」
「あいつなら、自分に正直になりすぎて
ナンパに行ってしまったわ」
「もうやだこの部活」
心とは真逆のこの晴々とした天気も
今日だけはなんだか憎らしく感じる
「しかし今日の青木は気合入ってるな」
「確かにそうだね」
女の子の目線から見るから尚更だろうか
流行りの服装から小道具、爪やメイクに至るまで考えられているのが分かる
「しっかしあんなに気合入れてるのに
何も言わないなんて男子ってどうしてあんなにも鈍感なのかしら」
「いやいや先輩、奴が少し鈍感すぎるのもあると思いますよ?」
「それもそうね」
やれやれと言って感じで分かりやすい
ため息を出す
「えっと、何となく思ってたんですけど
鈴あいつの事好きだったりします?」
「その通りだ、何があったかは知らないが
ある時期から急に分かりやすくなった」
「へぇ〜」
「やっぱ、あなたもあいつの事好き?」
「変なこと聞かないでください!そんな訳
ないじゃないですか!」
「そんなこと言いながら顔が赤くなるのなかなかにポイント高いな」
「だからそんなのじゃないっての!」
「そこから男口調だと!?属性入れすぎじゃないか!?」
2人を見るのに真剣だった顔は凄い勢いでこちらに向けられる
「まあ、部室で臭い青春ドラマしないでくれるのを私は祈るわ」
「しないですから!」
「やばい、もうあいつらあんなところまで
行っている急ぐぞ」
「綾香さんも早く追いかけましょ?」
「絶対にそんなことはしませんからね!」
そんな声は聞き届けられることはなく
雑音にかき消されてしまった
「少し疲れてきたなぁ」
「私も久しぶりだからってはしゃぎ過ぎた」
来てから数時間これまで乗ったアトラクションはどれも絶叫系ばっかりだった
「ここでなら、ゆっくりできそうだな」
二人でテーマパークの飲食店へと入る
メニューを広げるとそこには様々なものが並んでいる、そしてお値段もテーマパークプレイスのものばかりだ
「えっと、これ頼んでみない?」
そこにはよく、テレビなどで見る大きい
コップにストローが2本刺さっているリア充御用達のアイテムがあったレア度SSRは下らないだろう
「ほら、カップルで頼むと半額だしさ!」
このような場所でお金は使いたくないが
流石に恥ずかしい
「や、ほら条件としてツーショットの写真必要だし俺なんかと嫌だろ」
少し間が開く
人生で一度もモテてたことのない、自分は
あまり女の子に好かれるような人間ではない
「そんなことないよ」
こっちにゆっくり歩いて隣に来ると
肩に手を乗せ、吐息が聞こえるくらいまで顔が近づいてくる
「はい笑って!3 2 1 !」
とっさに前を向くとスマートフォンが向けられているので、反射的に笑顔になる
引きつった笑顔じゃなく、嬉しいことを言われた故の温かい笑みである
「はい!これで完了!」
撮り終えると自分の席へと戻っていく
動揺しすぎて去って行く彼女の顔は見えなかった
「さっさと注文決めちゃって、またアトラクション乗りましょ!」
「え、あ、そうだなって、もういいよ!」
さっきまでのことなんてなかったかのように、時間はすすむ
「いやさ、いろんな意味で絶叫系でしょ」
「でも体に負担はこないし大丈夫でしょ」
「でも心にダメージくるでしょ」
「男の子だから大丈夫でしょ」
「その考え方はおかしいでしょ」
「でしょの下は終わりにして何、怖いの?」
ここはホラー系のアトラクションので
本当に乗りたくない
「そうだよ、苦手なんだよこうゆうの」
昔からあまり急に来る感じのは得意ではないのだ、男らしく女の子がキャア!とか言いながら俺を掴むイベントはない
「なら家庭教師の給料はこのアトラクションに乗るってことで」
「そう言われたら乗るしかないか」
「よ、男前!」
青木のテストの頑張りを考えるとこれくらいは付き合わないと割に合わない気がするし
「怖くなったら俺を頼れ!」
「ははは、頼りにしてるよ!」
「もうやだ、怖い」
「早い!入口の男らしさは何処行ったのよ」
「後ろの客に渡してきた」
「それは律儀だね」
軽口を言うことで紛らわそうとする
設定は廃校の校舎を乗り物を使って探検しようとか言うもので、俺たちはその最初のツアーらしい
何か事件があったらしいが、偉そうな人が金になりそうだからとゴリ押しのど定番である
設定こそありきたりだが、実際に乗ってみるとクオリティがかなり高くてもう怖い
バン!
勢い良く教室の都が開かれる
「キャア!」 「ヒィ!」
思わず体が跳ね上がる
しょっぱなこれとは体が持ちそうにない
「ごめん青木、袖少しだけ掴んでいい?」
我ながら情けないが、マジで怖いのだ
少し驚いたようだが、呆れて少し笑った
「そこまでだったら手を握ってあげても
いいよ」
「ありがとう」
安心したい、一心でその時は目をつぶって片手を合わせた
彼女の手はあったかかった
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