第23話 試験勉強ってどうやるの?

新入生試験。これは生徒会役員選抜においても重要な観点となっている。この試験での点数によって誰が選ばれるのか決まるのだ。


そして生徒会役員を狙っている春奈と瑠奈にとって、一番の正念場を入学早々に迎えることになっていた。


進と亮介がそれぞれに勉強を教えてくれているお陰でかなり実力アップしているし、進たちからすれば十分本番の試験で高得点を取れるレベルにあると思う。


彼女たちには伝えていないが、新入生試験で8割以上の点数を取れないと役員にはなれないのだが、これならまず安心できるレベルにいる。


それでも彼女たちは大学入試直前の受験生か?と言うくらいに勉強していた。


「──よし。そろそろ10時だから帰るか。」

「もうそんな時間?」

「あぁ、もうそんなになってたか。」

「つかれたぁ~」

「よりかかんな!」


最近はいつもの場所になりつつある家の近くのデニャーズ。進と亮介は生徒会がない日には一緒に来て、生徒会がある日でも仕事が終わったら来るようになっていた。


二人とも集中しているせいで、時間の経過が早く感じるらしい。



────────────────────



「センパイ。」

「なんだ?どこがわかんない?」


今日も四人で学校帰りにデニャーズに来ていた。試験まではあと3日である。


「いえ、わからない問題はないんですけど、本番の試験ってどんな問題が出るのかなぁって。」

「あ、私もそれ気になる。」


あぁ、確かに気になるところだろう。進と亮介は顔を見合わせる。正直、試験の内容はよく知っているのだが、彼女たちだけに教えすぎるのはフェアじゃない。


「試験の内容は詳しくは教えられないな。」


アイコンタクトのあと亮介が話す。


「やっぱりですか。」

「うーん、亮くんダメ?」


食い下がるように春奈が亮介にもたれかかり上目遣いで迫る。


「ぐっ。可愛いけれどダメ!」

「ケチ。」


亮介から離れてそっぽを向いてしまう。


「まぁ試験の細かい内容は俺たちも知らないんだよ。だから教えようにも教えられないって言うかさ。」

「フーンソウナンダ~。」

「おい、なぜそこまで疑う?」


本当は生徒会役員は新入生試験の内容を知ることができるし、進も亮介もどの範囲の、どの程度レベルの問題が何問出題されるのかは知っている。


内容としては、英語、数学、国語の三科目が、中学基礎レベル20点、

中学発展レベル40点、

高校一年生の一学期基礎レベル30点、

高校一年生の一学期発展レベル10点、と多少のズレはあるが、どの科目もこの程度の割合で出題されることになっている。


今の瑠奈なら85点以上は狙えそうだし、春奈に関しては満点を狙ってもいけそうなレベルだから、大丈夫だと思うんだけれど。


「試験の内容がわからなかったら対策のしようがないじゃないですか~。」


確かにそこは瑠奈の言う通りなのかもしれない。だから毎年平均点が50を下回るのかもしれない。


「・・・なら特別に1つだけ先輩としてアドバイスしてやる。」

「「えっ!」」


進の一言にそっぽを向いていた春奈も反応する。


「お前らの入試の問題用紙と、多分持っているであろう過去問、これをやっておけ。そうすればかなりの対策になる。」


実際にこれは進と亮介が今の会長から教えてもらったことだ。そして本番の試験ではこれらの問題からかなりの点数出題されていた。


「なるほど!私、今日帰ってからやる!」

「あっ!私も私も!」

(これくらいならセーフ?)

(会長が教えてくれたことだしセーフでいいんじゃない?)


「あっ!?私、過去問持ってないかも!」


そこでなにかに気づいた瑠奈が頭を抱える。


「えっ!うーん、明日なら私が持っているやつ印刷していこうか?」

「──うん、お願いしようかなぁ。」

「俺が持ってるからやるよ。今日帰りに取りに来い。」

「えっ?」


そう、なぜか進は自分の入試問題と過去問を捨てずに持っているのだ。亮介だけが暖かい目をしている。


「やったー!センパイ大好き!」

「抱きつくな!」

「えへへ。」


抱きついてきた瑠奈が離れない、そしてそうこうしているうちに、いつの間にかお会計は済んでいたのである。

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