第16話 くだらない思い出 Ⅱ

あの事件のあと顧問は当然懲戒免職となり、さらにお縄となった。


進の行いについては、特にお咎めはなかった。しかし、その事件が公になったあと、しばらくは進と瑠奈の周りはマスコミだけでなく、保護者たちや、警察の聞き込み、高校からの推薦の話など、騒がしくなった。


もともと高校をスポーツ推薦で選ぶ気のなかった進からしたら、推薦がどうなろうと関係なかったが、一番鬱陶しかったのは、マスコミの張り込みだろう。


そのせいでしばらくは学校まで進も瑠奈も車で送迎してもらう羽目になった。


一躍ヒーロー扱いされるようになった進と、ヒロイン扱いされるようになった瑠奈は学校で大人気のカップルとなった。


カップルではないのに、いつも間にかそんな扱いになっていたのだ。

それに満更でもない瑠奈を見ていると、事件のダメージが少しは和らいでいそうで安心するのだが、

進はどうしても素直に喜べなかった。


“俺の近くにいると瑠奈は傷つく“


本人に言ったら、それこそ怒られるだろうが、そう思わずにはいられなかった。


ちょうど卒業して、学校で会わなくなるのだから、これを期に自然に距離をおけばいい。


そう思えば思うほど、なぜか胸が締め付けられて痛い。


でも、きっとそれが最善なのだろう。


中学三年生の進はそう決意して卒業した。



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あの事件のあと、センパイの顔が晴れていないのには気付いていた。

でも、カップル扱いされて浮かれていた私には、センパイが何を考えていたのか、何をしようとしたのか、考えもしなかった。


センパイが卒業したあとも、今まで通りとはいかなくても、会えると思っていたし、センパイがスマホを持てば、毎日だって声を聞ける!


そう思っていた。



「センパイ!?センパイっ!?」

それは卒業式が終わったあと。卒業していく先輩たちと、在校生が最後の挨拶をする場。周りでは、部活の先輩や生徒会など、様々な繋がりがある人たちが挨拶したり、プレゼントを渡したり、連絡先の交換をしたりしていた。


「どこにいっちゃったの?」


瑠奈はそんな人が雑居するなかを、一人のセンパイを探して走り回っていた。


「瑠奈っ!」

「瑠奈ちゃん!」

「春奈、亮介先輩」


親友の春奈と、その彼氏の亮介も、進を探してくれていたが見つけられていない。


「センパイ・・・」

「瑠奈・・・」

「・・・」


春奈は瑠奈の背中をなでる。小さく小さく見える背中を。


(あのバカ。わかっていないのはお前だ)



────────────────────



「はぁ!?なんで!?」

それは卒業式が始まる少し前。階段下で亮介と進は話していた。


「わかるだろ?俺たちはもう離れた方がいい。」

呼び出された亮介は信じられない言葉を聞かされた。


「瑠奈ちゃんに会わないって・・・」

「それが正しいんだよ。これ以上、瑠奈を俺に縛り付けるのは良くない。」


進の言葉とは思えなかった。でも、進の言葉だと、進の考えたことだとわかってしまう。


「・・・それで、いいのか?」

「あぁ。だから、瑠奈が俺を探しても、何も言わないでくれ。俺は卒業式が終わったら残らずに帰るから。」


「わかった。」


連絡先を教えない

さようならも言わない

本当の気持ちも伝えない


それが瑠奈ちゃんのためなのかよ。

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