第13話 お迎え

新学年のスタートからしっかりと寝坊した進は、両親には

「頭痛い」

と休むことを伝え仕事に行く両親を見送り、テレビを見ながらソファーで寝ていた。


今日も生徒会は新入生歓迎会などで出番があるのだが、そこは亮介の好物のデ◯ーズのデビルズブラウニーサンデーを奢ることで許してもらおう。


昨日は、いや今日、瑠奈のせいで3時くらいまで電話で話ながら軽く勉強してたせいでボーッとしてしまっている。


それにビデオ通話でいろいろ勉強教えたしな。


相当やる気があるらしく、最後は本当に限界そうで無理矢理寝かしたが、それまではかなり集中して勉強していた。


(あいつも寝坊してたりして)


いや、彼女の母親の方は厳しい人だから寝坊なんてさせないと思うけど。


ピーンポーン


唐突に家のチャイムがなる。


(宅配便か)


父がよく使うア◯ゾンの荷物だと思い、玄関にある棚の引き出しから印鑑を取り出して一応扉の覗き穴から覗くと、そこには意外な人物が立っていた。


「何やってるんだよ後輩?」

「なんでパジャマなのセンパイ?」


扉を開けると、そこには真新しい光岬高校の制服姿を着た瑠奈が立っていた。



────────────────────



「なるほど、春奈ちゃんがねぇ。」

突然の来客をリビングに通し、オレンジジュースを出してあげたところで、

「はい。寝坊したので春奈に先に行ってってラインしたら、センパイの家に行ってって言われて。」


つまり、寝坊の連絡を進は亮介に、瑠奈は春奈にしたところで、亮介と春奈が仕組んだのだろう。


「でも、お前が寝坊なんて、おばさんはどうしたんだよ?」


瑠奈の家はお父さんはいろいろと融通も利くし優しくて部活にも協力的だったが、お母さんはメチャクチャ厳しい人で、部活で帰宅が遅くなるのもダメで、マネージャーになるために俺が毎日送るって直談判したくらいの人だった。


「あぁ、なんかセンパイの名前を出すと

【あら、進くんなら心配無用ね】という感じで許してくれるんですよ。」


とても不思議そうに話す瑠奈だが、うん、これは俺と瑠奈の関係を勘違いされている気もするな。


亮介に鈍感!鈍感!と言われる俺でも何となくそんな感じがする。


「朝確かに起こされたんですけど、眠かったので、センパイが迎えに来てくれるから安心して仕事に行け。って言ったらニコニコして仕事いきましたよ。」


「そ、そうか。じゃあ着替えてくるから待ってて。」

「はーい」



────────────────────



「センパイ今日サボるつもりだったんですか?」

着替え終わって家を出たときには、もうお昼頃であった。

「まぁな。今日は休んでも成績に影響ないから。」


「センパイ、いつの間に不真面目キャラになったんですか?」

ジトーとジト目で見てくる。


「不真面目と言うよりも、最低限の労力で結果を得たいだけだ。」

これは進の主義である。成績優秀は優秀でも勉強は好きじゃないから、できるだけやりたくない。

学校は面白くないから、できるだけ行きたくない。


それでも主席は譲りたくない。

負けるのは嫌いだから。


そうして進は優秀な生徒でありながら、教師たちも素直には誉められないような生徒として、ヤンキーよりも厄介な存在として認識されていた。


「じゃあセンパイが真面目キャラに戻るように、これからは私が毎日迎えに行きます!」

「現在進行形で俺と寝坊して遅刻したやつは誰だっけ?」


「・・・今日は例外です。」

頬を膨らませる瑠奈を可愛いと思ってしまったが絶対に死んでも言わない。


こんな昼間に学生服の男女が歩いていると、まぁ近所のおばさまたちの目線を強く感じる。


(噂になりそうだなぁ。)


そう感じながらも、とりあえずお弁当食べよう、と意見が一致して近所の公園に立ち寄るのだった。

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