第12話 新学年のスタート ~寝坊編~

話は昨日の夜、ファミレスでの勉強会兼後輩たちを歓迎する会あたりまでさかのぼる。


「センパイこのあと家来ませんかぁ~?」

ファミレスからの帰り道、春奈の家が瑠奈の家と方向が違うので、それぞれが、それぞれを送る形で別れていた。


家の位置的には、進と春奈は歩いても5分かからない近さで、瑠奈の家は春奈の家から大体15分くらい、亮介の家だけは誰とも近くない、どの家からも10~15分くらいの距離なのでが、まぁ効率なんて関係なくペアは決まっているわけで、進だけはイマイチ春奈と亮介の配慮に気づいていないが・・・。


遠回りにはなるが、中学時代も何回も送っていたので慣れっこではある。


春奈と亮介の方は、本当に家に帰るのだろうか?

という疑問すら持てるのだが、まぁ変な想像はしないでおこう。


「センパ~イ?」

夜中のそれも10時を過ぎている住宅街となれば、かなり暗く人通りも少ない道は、絶叫系もお化け屋敷系もへっちゃらな進であっても少し怖くなる。


「お前、なんか酔っぱらいみたいだな。」

瑠奈は俺の服の袖を掴みながら一歩後ろを歩いている。


「酔っ払ってるわけないじゃないですか!お酒なんて飲んだことないんですから!」

「わかったわかった。」

袖をつかむ力を入れられて後ろに引かれる。


「ていうかさ、こんな時間に家に行くわけないだろ。」


当然だろう。もう深夜と言っていい時間である。こんな時間に恋人でもない男と一緒というのもどうかと進は思う。


「むぅ~。じゃあ帰ったら電話します。」

「寝ろよ」

「今日は夜更かしします」

「明日寝坊するぞ?」

「センパイじゃないんだから寝坊なんてしませんよ~。」


そう言う瑠奈の笑顔はこの暗闇でもハッキリとわかった。


「じゃあ電話するなら11時すぎくらいな」

ダメと言っても聞かないだろうからと、瑠奈の家の前でそう伝える。


「了解です!」

そう言って敬礼をする瑠奈を見て安心してしまうのは、きっと懐かしいからなのだろう。


「じゃあまた後で」

「はい!送ってくれてありがとうございます!」



その後、電話で何だかんだで話が弾み、二人が盛大に夜更かししてしまったのは、最早言うまでもない。

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