第11話 新学年のスタート
昨日の入学式から一夜が明け、全校生徒が登校する新学年のスタートの日がやってきた。
この日もよく晴れて気分のよい朝である。歩く生徒たちの中には友達も話しているもの、歩きスマホをしているもの、イヤホンで音楽を聴くもの、あくびをしながら眠そうに歩くものと様々ではあるが、
そこには今日から始まる新学年への明るい雰囲気が漂っているように見える。
ただ一人を除けば。
「あの野郎・・・」
正門前で一人立ち止まる金髪の美男子に通る生徒たちは自然と視線を向けている。
そんな注目の的の彼は、そんなことは一切気にせず、ただ一人の親友の所業にピクピクと肩を震わせていた。
「サボりやがったー!!!」
そう叫ぶ彼の右手には、親友からの
「ヤバい寝坊した。まぁ、休むわ。」
という、何とも言えない不真面目なメッセージが表示されていた。
その親友こと真田 進はその頃、
「やっちまったわ~。」
自室のベッドで一切嘘をつくことなく、残酷にも真実を告げ続ける時計を眺めていた。
「まぁ、今日は授業ないし、ホームルームだけだし、大丈夫だろう・・・。」
自分のやらかしたことが、そこまで大きなことではない。問題ないと自分に言い聞かせる。
そもそも進は確かに朝が苦手で、登校時間がギリギリなんてことも珍しくはないのだが、寝坊をすることはなかったのだ。
「あいつも寝坊してたりして・・・。」
あり得ないであろう、くだらない想像は消して、もう一眠り目を閉じるのであった。
自分と似た境遇の少女に気づくはずもなく。
「・・・やってしまった。」
新一年生の二日目。しかも新入生歓迎会があるこの日に寝坊した女の子が、自室のベッドで一切嘘をつくことなく、残酷にも真実を告げ続ける時計を眺めていた。
「えっ!?瑠奈ちゃんも!?」
「え!?進先輩も!?」
「「二人して寝坊って!?」」
亮介と春奈は親友たちの偶然か必然かの出来事に、ある一つの想像を膨らませるのであった。
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