第7話 新入生試験はすぐそこだⅡ

ひとまず全員が注文したものを揃えて席についたところで、


「じゃあまぁ、改めて」


亮介が前置きと共に俺に目配せをする。

(わかってるよ。)


「「入学おめでとう!」」

カンパーイ!


と瑠奈が一番テンション高いのはいつものことなのだが、何だか俺も今日は高揚しているらしい。


「でもさ、進はマジで瑠奈ちゃんの進学先知らんかったん?」


「マジで知らなかった・・・。」


というか亮介よ、知っていたなら教えてくれよ・・・。

そんな俺の心境を簡単に汲み取った三人は、

「ニヤニヤ」

「ニヤニヤ」

「ニヤニヤ」

(うん。三人に我が校の誇るわさびおにぎりを進呈しよう。)

こいつらグルだ。


「はぁ。で、入学試験の点数どれくらいだったんだ?」


もう早く話題を変えたくて適当な質問を投げ掛ける。


「私は460点くらいでした。」

「おぉ、マジか流石だな!」


ちなみに入学試験は

英語、国語、数学、社会、理科の五科目で500点満点なので、春奈のこの成績は多分入学者の中でもトップ3くらいには入るだろう。


「──それで、瑠奈は?」

「───。」


中学時代は確か、成績は可もなく不可もなくって感じだったけど、学力試験は苦手だった記憶がある。


「可愛い後輩がセンパイのために頑張ったんですよ~。なんだよな?」

俺も春奈に負けじと真似てみる。


おい、なぜ隣の二人は笑っている?


「そっそれは~・・・。」

「センパイのために頑張ったんだから、もちろん春奈ちゃんくらいの点数なんだろうなぁ~。」

「うぅ、センパイいじめです。」


「進って、楽しくなるとドS発揮するよね~」

「進先輩っていじわるなとこも持ち味なんですけどねぇ~」


おい、なぜ隣の二人は温かい目をしている?


「300点」

「ん?」

「だーかーらー!300点です!300点!」

「お、おう。」


もはや涙目になりかけている瑠奈の勢いについ押されてしまった。


ちなみに、例年の入学者平均得点が340点前後である。


「低くね?」

「ギクッ」


いやいや、 今年だけ異常に試験が難しくて平均が250点くらいなのかもしれない。


「先輩は試験が難しかった、とお考えかもしれませんが、今年の平均点は337点です。」

俺の希望をあっさりと潰してきた春奈に、「余計なことをームー」

と目線で訴える瑠奈だけれど、春奈は一切気に止めていない様子。


「お前、よく受かったな。成績も特別高い訳じゃないだろうに。」

これは当然の感想だろう。平均よりも30点以上低く、成績も特別高くなかったら、正直この学校のレベルだと厳しいものがある。


「でも先輩、確かに筆記試験と成績はアレかもしれませんが、」

春奈が庇い立てるように話を続ける。

「瑠奈、面接試験はすごかったんですよ!」


瑠奈も小さくコクコクと頷いている。

すると、何を思い出したか亮介が

「あっ!もしかして、今年の面接試験で唯一満点を取ったのって!?」

「・・・はい、私です。」

小声で衝撃の事実を口にした。

「マジか?」

「マジです。」


この学校の面接試験は特に辛口採点で受験生には有名で、毎年95点くらいが最高で、満点なんてまずいないのだが、


「マジのマジ?」

「マジのマジです。」


「ちなみに私は86点でした~。」

さりげなく打ち明けた春奈。そう、そのくらいの点数で十分すぎるほど優秀なのだ。


「どうやったの?」

「・・・普通に笑顔で質問に答えてただけです。」

なるほど、きっと面接官はアイドルオタクの中年教師だったのだろう。だから可愛さで満点つけちゃった感じだろう。


だってそうとでも思わなきゃ!

「俺あんなに頑張ったのに77点とか泣けてクル~。」

「俺の心のなかを勝手に読むな!」

亮介はエスパーなのか!?そうなのか!?


「プッ、センパーイそうですか~77点ですか~。」

おっと、こいついきなり調子乗り始めたぞ。

「私の勝ちです!」

「いや俺、筆記試験420点だから総合で俺の勝ちな。」

間髪入れずに反論する。こいつをこれ以上調子乗らせると厄介だ。

バチバチッ


二人の間に火花が散るかのように見つめ合う瑠奈と進。


「「あらぁ~」」


もはや近所にいる、おばさまか?と言うような雰囲気すら漂わせる春奈と亮介。


だから言ったんだ。


面倒な高校生活になりそうだと。

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