第5話 お久しぶりですⅢ

「なんか」

「すごい」

「「芸能人みたい!」」


一年生の教室が並ぶ廊下で、後輩たちの注目を浴び、ちょっとした芸能人気分に浸っている男子生徒が二人。


「あれが生徒会の人たちだよね。」

「金髪の人超イケメン!」

「いやいや黒髪の方もキレイだし、ちょっとSっ気がありそう!」


ただ、話しかけてくる生徒はいないので、少し寂しいと思う進と亮介。


早くも辺りでは金髪か黒髪かで派閥が割れた始めている。


ちなみに、この二人は同学年の女子にはここまでのウケはない。

それは、告白されては振ってきたと言うこともあるだろうし、二人がそれぞれ近づきにくいと言うのもあるだろう。


三年の先輩たちは、近づきにくいと言った変な気を使わないから、それなりにウケるのだが、三年生の方では副会長もいるし、どちらかというと進の方が人気があって、そこまでの大きな存在感はない。


それに比べ、まだ入学後間もない一年生にとって、面倒見がよく、顔も良く、雰囲気も柔らかな二人がウケるのは当然かもしれない。


「悪い気はしないよな。」

「いやぁ、最高。」


この調子に乗っている二人はムカつくが・・・。


────────────────────


「「ムーーーーーー。」」


一年一組の教室から、可愛らしい顔を膨らませて、ヤキモチをやく女子生徒が二人いた。


「なによ、いい気になっちゃって。」

「亮くんのバカ。」


二人の目線の先には、女子生徒たちに囲まれて呑気な顔をしている先輩二人の姿が、


「「フンっ!」」


実に可愛らしい仕草なのだが、本人たちはちゃんと怒っている。


「ヤバい、可愛いすぎだろ」

「あれはヤバい」


実際、クラスの男子の目は完全に奪われていた。


そんなことにも気付かず呑気な先輩たちに呆れた二人は我慢ならず、


「亮介先輩!」

「進先輩!」


それぞれが、それぞれの先輩の名を呼ぶのだった。


────────────────────


「進先輩!」


名前を呼ばれた。周りは騒がしいし、声も、どれが誰だかわからなかったのに、その声だけは、どこから、誰が呼んでいるのか、すぐにわかった。


「瑠奈・・・。」


俺を呼んだ女の子を俺はよく知っている。けれど、どうしてここに?


その疑問は一瞬で解答が得られた。

光岬高等学校の制服を着ている、緑色のリボンをつけて、


「遅いです!センパイ!」


そう言って頬を膨らませる彼女は、服こそ変わっても、中身は何も変わっちゃいなかった。


「───お前がまた後輩か。」


俺はどんな表情なのだろうか。嬉しさ、愛おしさ、呆れ、驚き、どれも合って、どれも違う気がする。


「はい!よろしくですセンパイ!」


でも、そんな俺を見て彼女は最高の笑顔で答えた。


「面倒な高校生活になりそうだ。」


そう呟く俺を、楽しそうな顔で眺める亮介と、亮介に体を預けながら瑠奈とドッキリ成功と喜ぶ春奈、

そして、仕掛人の瑠奈。

忙しい高校生活が始まろうとしていた。

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