第27話

母と木下の会話に戻ろう。母が事故だと言うと、木下がすかさず言った。       「でもかけたんでしょう?!本当に事故だったんですかぁ?!」           「もういい加減にして下さい!貴方にそうやって責められる必要はありません。」   「だけどお茶をかけたんでしょう?ちゃんとに叱ったんですか、そんな事をして?」  「勿論注意しました。」         「注意?!なぜしっかり叱らなかったんですか?」                 「本人も凄く反省していましたから。」  「何が反省だ!そんなもん、嘘でしょ?!そんな事やっといて、反省なんかしないでしょ。何でしっかり叱らなかったんですか?!俺なら、張り倒してやってるから!」   「だから貴方に関係ないでしょう?お母さんも、何でそんな事をいちいち話すのよ?!」                母が祖母を見たが、祖母は知らんぷりして横を向いている。             「だから、そんな甘やかしてるから駄目なんですよ!」         

「木下さん、貴方に何も関係ないでしょう?もう済んだ事たし、それはもう何年も前の事なんですよ。あの子はまだもっと小さかったし、その犬ももう死んでいて、いないんですよ。」                 「じゃあ小さかったら許すんですか?!犬が死んだら、もうそれで良いんですか?!」 木下は真っ赤なトマト顔で興奮していた。「だって、まだ子供だったんですよ。その犬も、もう生きてないんですよ。」     「だったらそれはもう良いのかよ〜?!」  大声で叫んだ。             「そうです。今更何をどうにもできませんから。もう過去の事ですから。」      「そんなのおかしいじゃないですか〜!!」「じゃあどうするんですか?ああやって、その事で、娘を殴るんですか?!何もしていない他人の子供を、そうやって頭を殴るんですか?自分に何にもしていない女の子を?!」木下が母を凝視している。そして、何かワナワナと震えている様に見えた。      「貴方、もう帰って下さい!そしてもう二度とうちへ来ないで下さい。うちの子に近付かないで下さい。」             木下が直ぐに立ち上がらないと、又大きな声で言った。               「早く出てって下さい。」         木下はやっと、悔しそうな顔をしながら立つと玄関へ行き、靴を履いた。そしてそのまま無言で出て行った。           顔は、物凄く真っ赤だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る