第26話
クマちゃんは目が見えなくなってからは、もう家の中を徘徊せず、テレビの廻りだけを歩くだけだった。私は心が傷んだし、最初の頃は祖母は年中嫌味を言った。 「本当は見えたんだよ。あんたがあんな事さえしなけりゃ。可愛そうにね〜、クマちゃん。」 ドクターが帰った後、私は母と祖母に聞かれて、本当の事を話した。そして謝った。 祖母は発狂した。 「あんた、なんて事やったの〜?!?!」 物凄く大声を出して。とても恐かった。母もとても複雑な顔をしていた。 「あんた、どうしてなの?!あんた、そんな事をする子じゃなかったじゃないの!!」 祖母が叫んだ。 「あんなに仲良かったんじゃないの?あんなにいつも小さな時は一緒にいたんじゃないの?!」 「お母さん!この子も悪いと思ってるんだから…。」 「だからって、もうクマちゃんの目は元に戻らないんだよ!!見えないんだよ!!ねー、あんた、分かってるの?!」 最後の方は私に言った。 「だけどママ、前にちゃんとに注意したじゃないの?もうクマちゃんを虐めないって。叩かないって。」 母が言った。 「なのに何でそんな事をしたの?」 私はしつこく二人に詰問された。 最初は黙っていた。言えばまずいと思った。だが二人はとてもしつこかった。 「ママにはどうしても信じられないんだよ。あんたがそんな事をしたのが。」 「イライラしたから。…そんなに熱くなかったから。」 「何でイライラしたの?イライラしたって、あんたがそんな事をする子じゃないもの。お茶なんかかける子じゃないもの。」 「そうだよ、何でなの?あんた、最近やたらクマちゃんを虐めてたよね。叩いたりして!前は絶対にそんな事しなかったのに!」 私は全てを話した。 家で小型犬を飼っている子達が楽しそうに犬との過ごし方を話した事で、自分も欲しいとエミに話した。そうしたら、虐めていればストレスで死ぬと。死んだら又、違う犬を飼うから、今流行で、皆がよく飼っている小型犬が飼えると。だから、最初は聞かなかったが、気は進まなかったが、たまに叩く様になったと。でもやはり可愛そうだから止めたけど、やはり小型犬が欲しい。そして叩いていた事から、もう自分ちの犬も、クマちゃんも触れなくなった。だけどいつもジーッと自分を見つめている。前にはそんなのは当たり前だし、何とも思わなかったが、そんなに見られているとイライラして腹が経った。だから、熱くないお茶だったから、かけた。そしてそれが目に入っても、言えば物凄く怒られるから、恐くて言えなかったと。 「当たり前じゃないの、怒るの?!」 祖母が叫んだ。 「いい、あんた?クマちゃんは口がきけないんだよ?!何にも言えないんだよ!!熱くても、痛くても、そんな事言って助けてもらえないんだよ?!あんた、それ分かってんの〜?!」 「だけどいつもそんな熱いお茶なんか飲んでないじゃないの。」 母が言った。(この時は母は、私を打たなかった。) 「だからって、そんな事をして良い訳ないじゃないの?!」 それから口惜しそうに言った。 「だけど、あのエミちゃんって本当に嫌な子だね〜!!」 「本当に凄い子だよ。嫌な子だよ。」 母も同意した。 「本当に物凄く、悪い、嫌な子だよ!!」 「お母さん、私、あの子の親に言ってやるよ!あの子がそんな事を色々とそそのかすから、そんな事をしたんだもの。」 「おかしいと思ったんだよ。今迄そんな叩いたりなんて一度もした事が無くて、仲が良かったのに。凄く上手くいっていたのにさ。それを急に虐めて、そんな事をやり始めたんだから。」 「今、あの子の家に電話するよ。」 「止めな。」 「エッ?何で?!」 「そんな事を言ったって、あのお母さんなら何とも思わないよ。逆に言われるだけだよ、人のうちの子供のせいにするなと。それで必ず言うよ。自分の子供はそんな事を言わないって。虐めたら早く死ぬから、犬を苛めろだなんて言わないって。」 「でも悔しいじゃないの?!」 「あんたが逆に、物凄く文句を言われるよ。変な言い掛かりを付けるなって言って、大騒ぎするよ。」 「…そうだね、あの人ならそうだね。」 それで結局母も祖母もエミの母親には言わなかった。 そして、周りに同じ学校へ通う子がいなかった私は、今迄通り、エミと通った。祖母は嫌がったが、結局そのままだった。 只、エミには注意をする様にと母には言われた。だから私も一応は気を付けていた。
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