第20話
「何の事か分かりませんが、娘はうちの犬を虐めてなんかいませんよ。大体殆どいつも母の部屋にいて、余り触らせないんですからね。」 「違いますよ!今の犬じゃないです!」 「え〜っ?」 「前の犬です。ほら、前にいたでしょう?もっと前に。」 母が木下を見た。木下が得意そうに続けた。「昔いたでしょう、違う犬が?」 「何の事をおっしゃってるんですか。」 「だから、前にいた白い犬の事ですよー。もっと大きな。」 母が木下の顔を凝視した。 「ほら、その白い犬の事ですよ。あなたの子供が目を見えなくした。」 母が驚いた。 「何を言ってるんですか?!」 「しらばっくれないでくださいよ。ちゃんとに、おばあちゃんから聞いてるんですから。お茶をかけたんでしょう、犬に?」 「一寸いい加減にして下さい!!」 「何を嘘ついてるんだよ〜!!こっちはちゃんとに聞いてるんだからぁ?!」 「お母さん、あんた、何を話してんのよ?!」 「ほらね、そうなんでしょう?!」 母が木下をしっかりと見ながら言った。 「あれは、事故ですよ。わざとじゃないです。」 「何をかばってるんですか?熱いお茶を目にかけたクセに!!」 「そんな事してませんよ。それに、熱いお茶なんかじゃないですから。」 「じゃあ、何で目が見えなくなるんだよ?!おかしいでしょ。」 「そんな事を何故貴方にいちいち話さなきゃならないんですか。」 「何がそんな事だよ!!」 「貴方に話さないといけないんですか?貴方になんの関係があるんですか?」 「関係あるんだよ!おばあちゃんから色々と聞いてるんだから。」 「だから貴方に関係があるんですか?違うでしょう?何にも関係なんかないでしょう?身内でもなんでもないんですから。」 「じゃあ何でそんな事になったんです?!言えないでしょ?言いたくないんでしょう?」「あれは、娘がまだ小学生のニ、三年生位の時に、食事中にかかったんです。だけど、熱くなんかないですよ。ぬるいお茶です。娘は小さな時は熱い物なんて飲めませんでしたから。猫舌でしたから。」 「でも目が見えなくなったんでしょう?」「もう年でしたから。かなり年がいっていて、片方の目はもうもっと前から真っ白くなっていて見えませんでした。母が甘い物ばかり与えていて、幾ら注意しても好きだからって言って、砂糖菓子を与え続けていたから。白内障になったんです。それで、お茶がかかった時にも、最初は何ともなかったんで、分からなかったんですよ。」 「分からない〜?」 「三日位して、様子が変だから、職場のアメリカ人の獣医に頼んで、来て、診てもらったんです。」 そうだ…、あの頃は母はまだ近くの軍の中に働きに行っていた。まだ横須賀に転勤に、配属になっていなかった。 そして、四十代位のドクター オブライエンが来て診てくれた。目をジーッと診て、最初は分からなかったみたいだった。だが、しばらくしてやっと分かったみたいだった。 その時、この犬は12歳だった。私は確か8歳だった。(そして、彼女は13歳の時に死んだ。私の母親代わりの様な犬だった。) ドクターが言った。衝撃を受けて、元々弱まっていた目が、それに耐えられずに失明したと。そして、今でなくても後しばらくしたら、どっちにしても見えなくなっただろうと。年なのと、その砂糖菓子を年中食べていたから,白内障はその見える方の目にも進行していたからと。 そして言った。小さな子供と犬を一日中一緒に置いておくのは駄目だと。もしベッタリと置いておく場合は、必ず大人が見張っていないと駄目だと。 何故そんな事になったのか、次回、もう少し詳しく話すそう…。
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