第16話

私が日本の、普通の公立の中学校の一年生の夏だ。祖母が、私に家庭教師を付けたらどうだと母に言った。            フランスパン屋の従業員食堂で土日だけ食事の支度をしているから、何人ものスタッフが食事を取りに来る。そして自分と口を効いたりする。                大学生も割といる。そしてその中には良い大学に行っていて、中には家庭教師のアルバイトも掛け持ちでしている子達もいたそうだ。                  それで、中学に上がった私に数学を教えてくれる男子大学生がいる、と一人の女の子が祖母に言ったそうだ。彼女も大学生だったらしい。                  そしてその大学生は数学が得意で、他にも数学を教えているだとか、いたとかの話だった。                  だからその女の子は、祖母に中学生の孫がいると聞いて、そんな話をしたらしい。   祖母は喜んだ。彼女は、私がもう小さな頃と違い、スーパー等ヘの買い物に、余り一緒に行かなくなった事を快く思っていなかった。友達の家に行くのも、祭日だと、「つまらないから家にいてよ、行かないでよ。」と強く止めたりして、私は行くのを止めた事もある。(日本の祭日は、米軍基地内に働く母には無関係だから母は仕事でいない。だから私が出掛けたら、自分一人になるからだ。) だから家庭教師が来れば、その時間帯に私は拘束される。又、成績が上がれば母は喜ぶし、私の為にもなる。恐らくはそんな事だったのではないだろうか?           結局母は二つ返事で賛成した。こうした事に 私の意見は一切反映されない。      何故なら、もっと小さな時にもいきなりピアノを習わせると言い、母はいきなりピアノを買った。                当時60万円もした、グランドピアノの次に大きな、スタンダードなピアノでローズウッドでできた茶色いヤマハのピアノだ。(貯金から、何とか買ったのだろうが。)     普通は音大に通う生徒が使う様な物だと、調律師がたまに家に来た時にはよく言っていたが、そんな良い物を、初めてピアノを習う小学校低学年の子供に買い与えた人だ。つまり凄く見栄っ張りなのだ。         だから、仕事帰りに買いに行き、色々と話していて売りつけられたのだろう。上手い事を言われて。               私はピアノなんて大嫌いでも、数年間習わされていたし、発表会にも数回出た。だが今、何も弾けない!!            だが当時は年中嫌嫌練習をさせられていた。母は上手く引けないと物凄く怒り、何度でもしつこく弾かせる。           そして弾いていて間違えたりすると、いつも私の横に椅子を置き、そこに腰掛けていたが、片手に持った布団叩きで私の背中をバンバンとその度に打った。         これを完全に上手くその曲が弾けるまで続ける。時にはかなり強く打つ。私は泣きながら必死に頑張って弾く、何とか覚える。   こうした練習中には時間帯に寄っておやつを用意して、ケーキ等を横に置く。自分は立ち、椅子の上の盆の中にケーキとジュースが置いてあり、上手く弾けたら食べらせるのだ。駄目だと絶対に食べさせず、やっと完璧に間違えずに弾けると、そのケーキを褒美に食べさせる。              だから家庭教師の事も、母は私に付けるのを喜んだ。だがこの事で母も多少そうだが、私はとんでもない経験をする。       それは、かなり長くなってしまうかもなので、次回に記したい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る