第15話
そう、あの忌まわしい出来事だ。 だがその前に、一寸説明しておこう。実は私は、小学校を二つ出ている。 私は最初、カトリック系のインターナショナルスクールに通っていた。そこは幼稚園から高校まであったから、私はそこの幼稚園へも通っていた。 この学校は九月に始まる。四月ではない。そして私は八月生まれだから、早生まれという事になる。 私はこの学校に、中学一年生の、十一月まで通っていた。つまり、十二歳になってまだ数ヶ月までいた。 そして、突如辞めさせられて日本の学校、(私達はこのインターナショナルスクールではそう呼んでいた)、日本の普通の学校へ転校させられたのだ。 私は、公立の小学校へ入れられた。 この時私は、漢字が殆ど読み書きできなかった。小学校2年生程度の漢字がやっとかろうじて読めた。
ああした学校へ通うと、多少差があっても大概そうなるみたいだ。だから要は、文盲みたいなものだった。 だから、私は本来なら小学校の六年生に入る筈だし、校長もそうしようとした。だが母のたっての希望で、無理矢理に一歳下の学年の、五年生に入れられたのだ。 つまり中学一年生が、五年生にさせられたのだ!!まだ本来の年である、六年生のクラスに入るのなら諦めも着いたし、まだ平気だっただろう。 だから、この事は私にはトラウマになっている。特に理由も無く、校長や教頭も同い年のクラスに入れても大丈夫だろうと言ったのだか、母が頑なに反対して拒んだからだ。 母は漢字ができない私が、ついていけないと思った様だが、そればかりでは無かった。 何故なら何度も、何年生でも良いから入れてくれと頼んだからだ。一年生でも二年生でも良いから、と何度も繰り返した。幾ら何でも信じられなかった!! 本当にそうなったらどうしようかと思ったが、最後には校長が、私に直に聞こうと言った。何年生に入りたいかと、本人の口から言わせようと。 私は喜んだ!!急いで、”六年生”と言おうとした。 その時母が物凄く焦った形相になり、大声で叫んで、私の返事するのを邪魔して遮った。「いいえ、五年生でお願いします!!!!」私達三人は驚いて母を見た。 丸で般若の顔の様に引きつった女がそこにはいた。 「校長先生、五年生に入れて下さい!!絶対にそうして下さい?!どうぞお願いします!!!!」 そして私をきつく睨み付けた。 私は丸で蛇に睨まれたカエルだ。恐くてもう口がきけない。 何故なら、私が六歳位から、母は怒ると私を徹底的に打った。それは、永遠に続いた。 勿論永遠では無いが、三十分から一時間は毎回続いた。男で女を殴るのを、DVと言うが、それときっと同じだろう。 だから私はもう恐くて口がきけなくなり、黙っていた。そして聞いたのに返事をしない、反論しない私を、校長は情けなさそうな、馬鹿にした様な顔で見た。 そしてザマァ見ろ、お前が何も言わないから仕方ないんだそ!、的な態度で私をこれみよがしに一瞥しながら、言った。 「そうですか。ではそうしましょう!五年に入れましょう。」 何かとても嬉しそうだった。嫌な事でも反論しない子供なら、そんな事はされて然るべきだ、みたいな感じだった。 後に私の担任になった男の教師がクラスで言った。嬉しそうに、得意になって。 自分は直ぐに見抜いた、と。なのに校長先生も教頭先生も、二人も専門家がいて、長い事教師をしていながら、虐待されている子供や、虐待している親を見ても丸で分からなかったと。 そして自分は言ったそうだ。私達が帰った後に。自分は、呼ばれて校長室に入ってから直ぐに分かったと。 「あれは、虐待されていますね。」 二人は目を丸くして驚いたらしい。 「エッ?嘘だろう?!」 校長が言ったそうだ。教頭も驚いて自分を黙って見つめていたと。 「いえ、そうですよ。物凄くオドオドしていたじゃないですか。」 「唯緊張してただけだろう?」 「いえ、違いますよ。母親を凄く恐がっていましたよ。」 「そうかぁ?だって、あんなに愛想が良い、感じ良い母親じゃないか?!」 「いえ、だからですよ。」 「何だよ、だからって。教頭、分かるか?」「いいえ。」 「そうか…。じゃ、○○君、何でなんだ。」「子供に虐待をしている親はみんな、あんな感じなんですよ。物凄く感じが良い。ニコニコしていて愛想が凄く良いんです。」 「エ〜ッ?!どうしてだ?」 「それは、虐待をしているのが分からない様にです。バレたらマズいからです。又、ああして普段他人にはニコニコしてて感じが良い。あんな事をいつもしていたら疲れるんです。他人にいつも気を使っているんですからね。だからそのストレスもあるから、それも理由です。それを子供にぶつけるんですよ。」 二人はあんぐりと口を開けて自分を見つめていた、とこの教師は皆の前でペラペラと話した。 「オイ、○○君。勝手な事を言うなよ?!凄く良い母親だったと思うぞ。教頭はどう思った?」 「僕も校長先生と同じです。そう思いました。」 「ほらな、○○君。君の勘違いじゃないのか?」 「いいえ。絶対にそうです。断言しますよ。」 すると二人は困った顔をしたそうだ。そして校長が言ったと。 「ふ~ん、そんなものかねぇ?全然分からなかったがなぁ。だとしたら、やっぱり六年生に入れてやれば良かったなぁ。黙っているから、情けないと思って、じゃあ親がそこまで言うんならと、一個下の学年にしてしまったんだけどなぁ。凄く悪い事をしたなぁ!」 大体、こんな会話だったそうだが、確かに校長が見抜いていてくれたら!!又は教頭でも良い。気付いて校長に耳打ちするだとかしてくれたら、私は本来自分が入るべき学年に入れていたのだが。 母は大した事であってもなくても、怒ると、私が小さい時から凄く打った。そして年が大きくなると、打たない代わりに私の持ち物を壊したり捨てたり、親戚の子供に黙って上げたりをした。又は約束を破り、連れて行くと言った遊園地だとかへ連れて行かなかったり、買うと約束した本だとか何かを買わなかったりした。又はデザートで私の分の果物やアイスクリーム等を食べらせなかったり、自分が食べたりした。これみよがしに嬉しそうにやった!! だが、優しい時もあり、自転車を会社の帰りに頼んでおいたのを買って、途中まで向かえに来させたりもした。歩いていると、前から淡いグリーンの自転車が走って来る。 やはり十二歳頃だ。驚いて見ると、チリンチリンと嬉しそうにこちらを見ながらベルを鳴らす。 「アッ!!ママ?!」 驚いて歓声をあげる。危ないから絶対に買わせない、と祖母が猛反対していたのを、他人のを貸してもらって交代で何人かの子と乗っているのを近所で偶然見たからと、買ってくれたのだ。 要は、やはりさっきも言ったが、DV男と同じだったのだろう? とにかく、だから私は二度目の六年生の時には十三歳だった。そして公立の中学一年生の時は十四歳だ。 そしてこの中一の夏に、あの忌まわしい気狂い的な出来事がしばらく続いた。私の祖母が発端でだ。 長くなるので、次回に続く…。
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