第9話

この祖母について、私の小学校の時の担任の教師や、一部の他の教師達が母に忠告をした事が何度がある。母が後から私に話し、言う事を聞いておけば良かったとしんみりと話したことが幾度かあった。         「お母様に子供を任せないほうが良いですよ。おばあちゃんでは無理ですよ。年寄りに子供の面倒なんて見られませんよ。他の子なら当たり前に知っているだとかやっている事を知らない事がよくあるから、他の子達に凄く驚かれたりからかわれたりしていますから可哀想ですよ。普通の、もっと若い母親に育てられていれば当たり前な事を分からないからです。でも他の子達はまだ子供だから、自分達とは違う家庭環境だからと言うのが、まだ理解ができませんからね。だから絶対に無理ですよ。年寄一人だけじゃあ無理ですよ。」                 「年寄りじゃあ無理ですよ。任せられませんよ。ちゃんとした躾なんてできないし、お子さんが可哀想ですよ。」          中にはもっとハッキリと露骨に言った人もいたそうだ。               「貴方は今すぐに、あのおばあさんとあの子を放さなければいけません。あの様な方にあの子の面倒を見させては駄目です。あの方はあの子の為にはなりません、物凄く悪影響です。貴方は御自分であの子の面倒を見なければいけません。そうしないとあの子は駄目になります。あの方と同じになります。必ずなります。そして貴方は必ず後悔します。たげどその時にはもうどうしょうもなくなります。どんなに後悔しても、もうどうにもなりません。どなたか良い方はいらっしゃらないのですか?そしてその方と一緒になられて、アメリカヘ連れて行って、貴方がお家であの子の面倒を見て、自分の好きな様に育てて下さい。貴方が面倒を見るのが一番良いんですよ。」                  母はそこまで言うそのシスター(カトリック系の学校に当時通っていた)からそんな事を色々と言われて、腹が立ち、切り返したそうだ。                  「何故そんな事を言うのですか?!母が一体何をしたと言うのですか?」       「貴方のお母様は最低な方です。教育も躾も何もされていません。甘やかされて大きくなった、何もまともな躾や教育をされてないで育った人間です。そんな方が、子供に教育も躾もできません。貴方は御自分の母親だからそんな事を言われたら凄く怒るのは分かります。当然です。でも、これは事実です。だからそんな事を認めたくないのは無理ありません。でもそれをハッキリと認められて、御自分の大切な子供をあんな方に任せてはいけません。」                「いい加減にして下さい!私は母を信用しているし、だからあの子を任せているんです。貴方にそんな事をいちいち言われる必要はありませんから。」            「あの子の事をもっと考えてあげたらどうですか?あれじゃあ可哀想ですよ。あれでは丸で年寄りの生活ですよ。おそらく家に帰っても放ぽっとかれてるんでしょう。ろくにかまわず、だから一人で家の中で遊んでいるか、外で、近所で遊んでいるんでしょう。貴方のお母様はあの子を可愛いだなんて思っていません。只の生きた玩具位にしか思っていません。見ていればそんなのは分かります。ですから一寸でも自分に取って気に食わないだとか嫌な事をすればとことん叱りまくり、どんな酷い事でも平気でして、言う事を効かせようとします。自分には、只の人形と同じですから。貴方はもっとしっかりして、目を覚まさなければいけません!!」       「さっきから聞いていれば、人の親を何だと思ってるんですか?私は自分の子供の事は自分の好きにします。貴方の指図は受けません!」                 「あの子がどんな風になっても良いのですか?あの子の将来は考えないのですか?あの子は将来社会に出て、色々な事をこれから経験するのですよ?!なのにあれではそんな事は無理です。本当ならこれから幾らでも楽しい事や良い事も沢山ある筈なのに。」   「あの子は私の子供なんですよ。」    「そうですか…。分かりました。では貴方も、お母様と同じだったのですね…。とても残念です。ではどうか、今話した事をお母様には言わないで下さい。もし言えば、あの子がどんなにか叱られて虐められますから。自分のせいでそんな事を言われたと言われて、うんと責められますから。そして、まだ小さなあの子には、自分を守る事はできません。貴方はお仕事で一日中いらっしゃらないのですから、守ってあげる事ができませんから。ですから、どうかお願いします。お母様には黙っていて下さい。」           大体がこんな会話だったそうだ。     だが母は家へ戻ると全てを話して、そのシスターへの不満を祖母へぶちまけたそうだ。 そして祖母はそれを聞くと怒りまくった!そしてやはり私に当たった。        「あんた、何かシスターに言ったの?!ねー、あんたが何か言わなければそんな事言わないんだよ!!」            私は何も言ってないと何度も驚いて言った。母も、私から何かを聞いた訳ではなく、よく学校へ朝付いて来て、この日本人のシスター達に新聞紙にくるんだお菓子を無理矢理に渡したりだとか、放課後にたまに迎えに来て、校庭で私を叱りまくりながら連れて帰るのを見ていたりしたのが理由らしいと言った。 そして祖母にはもう学校に余り自由に出入りして、特にそうして何かを渡したりするのを止める様に強く頼んだ。     

祖母は仕方なく、新聞紙に包んだ食べ物を持って行き、渡すのは止めた。学校へ頻繁に来るのも数が減ったが、相変わらず無理矢理に遠足には付いてきていた。        此処は小さなインターナショナルスクールである私立校だったから、低学年の場合は何人かの母親が担任教師であるシスターと共にバスに乗り、子供達の面倒を見たりしていた。家にいてもつまらない祖母はこの遠足に毎回必ず付いて来ていた。          このシスター達は、多分この行為と、その遠足での祖母を観察して、祖母の異常さに更に気付いたのだろう。           結局この行為は、6年生の時にやっと終わった。本当は又いつもの様に付いてこ来る気でいたのだが、担任のシスターに物凄くきつく注意をされたからだ。          私がクラスの他の子達に馬鹿にされているし、皆もそんな他人の年寄りが付いて来るのを嫌がるから、と。           何故なら、流石に4年生位からは他の母親も段々と付いて来る事をしなくなり、何名かいたそうした親達も数が減ったのだ。    5年生の時には祖母だけだったと思うが、私は最初からそんな事をされるのは凄く嫌だったから!!               それで担任は、策を思い付いたのだ。もし又やったら、私も遠足へ連れて行かないと。自分だけでなく、私もだと。        流石にそれは可哀想だと母が強く祖母に頼み、やっと渋々承諾したのだ。      そして私は、やっと祖母無しの遠足を初めて楽しむ事ができ、クラスの皆もやっとうるさい、迷惑な疫病神がいない遠足を味わえたのだ。 

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