挿話4.クイーン奥様劇場(番外)
我が輩は
……えっ? 何故、
そんにゃの知らにゃいです。トモエお婆ちゃんが、「猫の日記の書き出しは、こう始めるものだ」って教えてくれたんですから。
いまはお婆ちゃんの古いお友達のランさんのお家でお世話ににゃって、悠々自適の生活(だって、家事の大半はランさんがやってしまわれるんですもん!)を満喫している私ですが、この村に来るまでは、にゃかにゃか苦労したんですよ?
折角ですから、ちょっと昔の日記を読み返してみましょうか。
* * *
○月×日 快晴
今日はトモエお婆ちゃんの機嫌がとてもよかった。
お婆ちゃんは、この森にあるケトシーの集落で、長老と言うかまとめ役のようにゃことをしている。
そのせいか、いろいろ苦労が絶えにゃくて、いつも夜ににゃるころには疲れた顔をしているのに、今日はとてもニコニコしていた。
「どうしたの?」って聞いたら、ずっとずっと昔に知り合ったお友達の消息が、偶然わかったらしい。
○月○日 曇りのち雨
雨で巣穴から出るのが、ちょっと億劫。
仕方にゃいのでお婆ちゃんに昨日の"お友達"のはにゃしを聞かせてもらった。
若いころのお婆ちゃんは、ここよりずっとずっと西の方にある農場で“お手伝いケトシー”として出稼ぎしていたらしい。
そこで、そのお友達と知り合ったそうだけど……にゃんと、そのお友達と言うのが、あのメガヴェスパー(大鬼蜂)だったらしい。
にゃんでも“女王種”とか言うメガヴェスパーのエリートで、とっても頭がよくて、人間やケトシーの言葉がわかったんだとか。
正直、嘘臭いとも思ったけど、お婆ちゃんは絶対嘘はつかにゃい猫にゃので、信用しよう。
○月△日 晴れ
今日のボアズ狩りは、とっても上手くいった。
私がにゃげた小爆裂弾がボアズに命中したおかげで、ボアズはこんがり丸焼きに。
集落のみんにゃで宴会をして食べた。とてもおいしかった。
夜ににゃって、お婆ちゃんの話の続きを聞かせてもらう。
お婆ちゃんのお友達は、お婆ちゃんの勤めていた農場が潰れたときに別れたらしい。
かにゃらずまた会おうと約束はしたものの、それから20年近く経った今でも、結局会えてにゃいんだって。
で、そのお友達の現状が偶然わかったのは、にゃんと最近人間ににゃったからだとか。
人間の若者に恋した巨獣が、おんにゃの人に化けて会いに行くと言う御伽話は、私も聞いたことがあるけど(他にゃらぬトモエ婆ちゃんが小さい頃の私にしてくれたのだ)、蜂が人に?
でも、御伽話みたいに、その元メガヴェスパーのおんにゃの人は人間の男性と結婚したらしい。
まだまだおとにゃとは言えにゃい私だけど、結婚って言葉にはちょっと憧れるかも。
…
……
………
…………
△月□日 雷雨
随分寒くにゃって来た。
トモエお婆ちゃんはこのところ寝たきりににゃっている。
どうやら風邪をこじらせたらしい。
もう
でも、全大陸立猫親善協会から地図を取り寄せて、にゃにやら計画しているみたい。
…
……
…………
△月×日 曇り
トモエお婆ちゃんが……死んだ。
とっても賢くて優しくて、すごく頼りににゃる猫だった。
孫のにゃかで一番年下の私もずっと可愛がってもらっていたので、とても悲しい。
お婆ちゃんは、にゃくなる直前、私を枕元に読んで、ひとつの包みを手渡した。
「これはにゃに?」と聞くと、「大切にゃお友達への贈り物だ」と言っていた。
「すまにゃいけど、お前にお使いを頼んでよいかえ、静?」
もちろん、私はふたつ返事で引き受けた。
これは……大好きだったお婆ちゃんの遺言。
にゃんとしてでもかにゃえてあげたい!
△月△日 晴れ
今日は私の旅立ちの日。
トモエお婆ちゃんの遺言は、再会を約して果たせにゃかったお友達に、形見の包丁と伝言を届けること。
そのお友達──ランさんは、大陸中央部にあるロロパエ村と言うところに住んでいるらしい。
にゃが旅ににゃるので両親は心配そうだけど、私だってそろそろ2歳半。
ケトシーはだいたい3歳で成猫するけど、私くらいの年代でひとり立ちして働き始める猫もいる。
大丈夫、にゃんとかにゃる!!
…
……
…………
□月○日 雪
旅に出て半月ちょっと。
ちょっと道に迷って、北のポロット村ってところまで来てしまった。
ほとんど年中雪に覆われているらしく、とても寒い。
道端で行き倒れている私を拾ってくれた、
おじさんの家でボアズ汁をごちそうににゃって、ようやく生き返った感じ。
走牛車の定期便が、王都との間に出ているらしいので、それに乗せてもらうことに。
運賃は、旅の間の雑用をすることで交渉成立。
□月△日 晴れのち曇り
最悪だ!
乗っていた定期便がメガラプタンに率いられたラプタンの群れに襲われた。
私は飛び降りて逃げたのでにゃんとか無事だったけど、にゃん人かケガした人もいるらしい。
いったん村に引き返すという走牛車と別れて、ひとりで王都に向かうことにする。
正直、冬場のこの土地を猫の身で旅するのはキツいが、私ひとりにゃら
……にゃいと思う。にゃいといいなぁ。
ちょっと心細くにゃってきた。
…
……
………
…………
□月?日
かゆ……うま……
…
……
………
…………
×月△日 快晴
1ヵ月近くの放浪の末、ようやく王都に辿り着いた。
ほんっとーーーーーーーに、にゃがかった。
正直、死ぬこともにゃん度か覚悟したくらいだ。
ロロパエ村は、ここから馬車で半日ほどの場所らしい。
いままでのことを思えば目と鼻の先だ。
×月□日 晴れ
幸い、今回はにゃに事もにゃく無事に着いた。
お婆ちゃんの旧友のランさんのお宅を捜すと、すぐに見つかった。
玄関で「御免くださーい!」と声をかけると、当のランさんが出て来た。
すごく綺麗にゃ人でびっくりした。
私がトモエお婆ちゃんの孫であることを告げると、驚いたみたいだけど、とてもうれしそうだった。
……だから、お婆ちゃんの死を告げるのは、すごく辛かった。
形見の包丁と手紙を渡す。ランさんは手紙を読みにゃがらにゃいていた。
今日はもう遅いので、ここに泊めてもらうことににゃった。
ランさんのだんにゃさんのマックさんは、ちょっとノリの軽いひょうきんにゃ人みたいだけど、ランさんの様子に、さすがにその明るさも影を潜めているみたいだ。
×月*日 晴れ
一晩経ったら、ようやくランさんも立ちにゃおったみたい。
「ありがとう、よくぞここまで来て下さった」と改めてお礼を言われた。
それからしばらくふたりで、トモエお婆ちゃんの話をした。
ランさんとマックさんは、しばらくこの家にいていいと言ってくれたので、お言葉に甘えることにする。
* * *
「おや、シズカ、何をしているのかえ?」
あ、奥さん。
「いえ、私がこの村に来た頃のことを思い出していました」
「おお、そうか。あれからもう1年近く経つのかのぅ……」
結局私は、この家のお留守番猫として雇われる形で居候させてもらっている。
ふつう、並人の村での雇われケトシーは、家の外に自分で寝床を作るか、あるいはせいぜい台所の片隅でザコ寝するくらいにゃのに、わざわざ台所の横に専用の個室まで作ってくれた。
食べる物も、ここのご夫妻とほとんど変わらにゃいものを頂いている。
それだけの好待遇に、正直私は十分なお返しを出来ているとは思えにゃいので、心苦しいときもある。
お料理もお掃除も、たまにお手伝いするくらいで、全然奥さんにはかにゃわない。
そちらも精進しようと思うが、私はいまこっそりご近所の奥様方に、あることをにゃらっている。
これは、この先、きっとご夫婦の間で必要ににゃるはずだから。
その時こそ、大いに役立って差し上げようと思う。
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