第5話(裏).奥様は女王蜂(ヴェスパーナ) その四

 とりあえず、我が君の妹御とあらば疎かにするわけにはいかぬので、客間ではなく居間の方に来ていただいた。


 「それで、どういうことか説明していただけますわね、お兄様」

 満面の笑顔──と言っても“緑火竜にくしょくりゅうの笑み”というヤツじゃな、アレは──を浮かべつつ、迫るヒルデガルド嬢の勢いに、タジタジと押される我が君。


 「いや、どうって言われても……聞いたとおり。こいつと半年ほど前に出会って、互いに好きになって、結婚した。成人した男女としては、ごく普通の流れだと思うが?」

 元メガヴェスパーであった女子おなごを嫁にするのは、普通かのぅ? まぁ、これ以上ややこしくなるのはわらわも御免蒙りたいので、口には出さぬが。


 「そんな! お兄様は、フィーン家の次男なのですよ? それが、己の一存で結婚相手を決めるなんて……」

 我が君が渋々語ったところによると、フィーン家は王都で1、2を争う……と言うほどではないが、貴族としてはおおよそ中堅どころの法衣貴族で伯爵の位を持つ家柄なのじゃとか。


 「生憎だが、そういうお貴族様的な慣習ってヤツが嫌いで、俺は家をおん出たんだ。そもそも、俺はいまほとんど勘当同然の身だろうが。自分の稼ぎで一人前に食っていってる限り、誰を嫁さんにもらおうと俺の勝手だ」

 「……わかりました。フィーン家の意向については保留します。ですが、結婚なさるならなさるで、せめてわたくしども家族には、ご一報くださってもよろしかったのではなくて?」

 ふむ。貴族云々を別にしても、身内としては当然の感情じゃな。

 もっとも、あの時は勢いと言うか、“できちゃった婚”ならぬ“やっちゃった婚”的流れで即日式を挙げたからのぅ……。


 「まぁ、こっちにも事情ってヤツがあったんだ。それに、事後報告だけど、兄貴のところには、手紙を出しておいたぜ?」

 あとから聞いた話では、我が君は、お父上とはケンカしてご実家を飛び出した関係上疎遠じゃが、お兄上とは比較的仲が良く、稀に文のやりとりなぞしておるらしい。


 「!? ケインお兄様、わたくしに内緒にしてらしたのね~~~!」

 上品な口調は崩していないものの、地の底から響くような恨みの念が声色に込められているヒルデガルド殿は、ちょっと恐い。


 しかし、これまで見た限りでは、ヒルデガルド殿は相当な“ぶらこん”であるようじゃしのぅ。大方、そのケイン殿も、彼女がこのような精神状態になることを見越して、知らせなかったのであろう。

 おかげで、我が君と妾の平和が今まで保たれていたわけじゃから、ケイン義兄上には足を向けて寝られぬな。


 ──などと、いささか現実逃避気味な思考をめぐらせておる妾に、ヒルデガルド殿はビシッと人差し指を突きつけた。

 「だいたい、こんな何処の馬の骨ともわからない女、お兄様にふさわしくあり……」

 「ヒルダ! それ以上の俺の妻への暴言は許さんぞ!!」

 ヒルデガルド嬢の誹謗を、我が君が強い口調で遮ってくださった。


 「我が君、構いませぬ。妹御のおっしゃるとおり、妾が高貴な生まれなどではないことは、ご存知のとおり、事実じゃ」

 ──馬の骨、ではなく羽虫の女王じゃがな。


 「なれど……のぅ、ヒルデガルド殿。それでも妾には、一点だけこの世界の誰にも負けぬ自信があることがある。それは夫婦めおととなる男女にとって、もっとも大切な事柄よ」

 「……大体予測はつきますけど、言ってごらんなさい」

 「妾は、我が背の君マクドゥガル殿を心の底より愛しておる。この気持ちだけは誰にも負けぬし、また何者にも譲れぬよ」

 ヒルデガルド殿の碧い瞳を見つめながらキッパリと断言する。

 少々、いや大いに恥ずかしく、また照れくさくもあったが、ここは女として、また妻として譲れぬ場面じゃからのぅ。


 * * * 

<ヒルデガルド視点>


 (何ですの、この女は?)

 こんな僻地に住み、めったに王都へは戻って来られないお兄様のことが心配で、訪ねて来てみたのですけど、2回ともお兄様は留守にされていましたわ。


 1回目は留守番役らしい立猫族ケトシーが応対してくれました。

 ハントマン稼業についている者は、大抵ケトシーや狗頭族コボルなどを料理番や小間使いとして雇っているそうですので、それは別に問題ありません。


 ところが、2回目に訪ねた時に出て来たのは、東方風の衣服(キモノとハカマと言うのでしたかしら?)をキッチリと着こなした、背の高い若い女性でした。


 年齢はおおよそ24、5歳といったところでしょうか?

 染めているのでしょうか、蜂蜜のような金色と鴉の羽根を思わせる漆黒がストライプになっている不思議な色合いの髪が特徴的です。

 顔つきは、少しキツそうな印象を受けますが間違いなく美人の範疇に入るでしょう。


 そしてプロポーションは……反則ですわね。こんなに胸が大きいのに、ウエストがこれほど細いなんて。

 わたくしなんて、様々な豊胸術・美容法を試し、はては胸が大きくなるからと始めた弓の稽古まで頑張ったあげく、ようやく人並み(よりちょっとちいさめ)くらいになれたと言うのに。いったい何を食べたら、あんな巨乳になるのでしょう?

 手足のバランスや姿勢もいいし、ただ普通に立っているだけで絵になる美女と言うのが実在するとは思いませんでしたわ。


 しかし、そんな女性がどうしてお兄様の家から出て来るのでしょうか?

 家政婦? いえ、すでにケトシーは雇われているようですし……。

 ハッ! ま、まさか、愛人!? お兄様をその美貌と胸で骨抜きにして、いいようにお金をむしりとっているのでは?

 お兄様は昔から異性に純情で初心な方でしたから、見るからに“年上の悪女”ちっくなこの女にいいように弄ばれ、貢がされているのですわね。

 嗚呼、お可哀想なお兄様……。

 いいでしょう、このわたくしが、乳デカ泥棒ネコの化けの皮を剥がして見せますわ!


 ──と、勢い込んでみたものの。

 「…あ~ら、本当に粗茶ですのね」

 この女が出したお茶にまずケチをつけてやろうとしたのですけど、こんな田舎では滅多に手に入らないはずの緑茶を出されたことに意表をつかれて、一瞬間が開いてしまいましたわ。


 いいえ、おべっかを使って普段飲まないような高級品を出してもムダです。この"緑茶"と言うのは、入れ方、とくに温度加減が難しいのですから。

 大方熱湯で入れたせいで、苦くて飲めたものじゃ……あら、美味しい。

 これよりいい茶葉を使ったお茶は飲んだことはありますけど、それでもこれほど旨味を引き出していたかどうか……。


 「……フン! まぁまぁの味ですわね」

 お家のことをワザと貶してみたのですけれど──本当は、スッキリとした清涼感に溢れる、いかにもお兄様好みの内装でした──サラリとかわされます。

 その直後、お兄様が戻られたのですけど……わたくしは、あまりの爆弾発言に、気が遠くなりかけました。

 「あ~、その何だ。ランは、俺のよめさん」

 “ヨメサン”って? えーと、もしかして、お嫁さん? ブライド? ワイフ? 妻?

 ……ってことは、お兄様、結婚なされたってこと!?


 「ど、どういうことよ~~~~~~~~!!!!!!」


 その女性──ランさんの薦めもあって、わたくしはおふたりの新居の、居間らしき場所に通していただきました。ここも東方風の作りになっていることから考えると、ランさんは東方の出身なのかしら?


 お兄様の口から、おおよその事情は語っていただきましたし、おふたりが本当に愛しあい、信頼しあっている様子は、おぼろげながらに感じ取れます。これが、夫婦特有の阿吽の呼吸、ツーと言えばカーの仲と言うものなのでしょう。

 でも……だからと言っていきなりお兄様に“奥さん”が出来ていることに、納得なんてできません!


 「だいたい、こんな何処の馬の骨ともわからない女、お兄様にふさわしくあり……」

 こんな女、認めない、認められない、認めたくない──そんな感情に支配されたわたくしは、思わずそんなはしたない言葉を漏らしてしまいました。


 「ヒルダ! それ以上の俺の妻への暴言は許さんぞ!!」

 ! お兄様、本気で怒っている。

 あんなに恐い目をされたお兄様は、実家を飛び出される前夜、お父様とケンカしたあと自室に帰られるのを偶然目撃したときくらいしか知りません。

 ましてや、その“目”がわたくしに向けられるなんて……。


 「我が君、構いませぬ。妹御のおっしゃるとおり、妾が高貴な生まれなどではないことは、ご存知のとおり、事実じゃ」

 ……え?

 どうして? どうして貴女がそんなことを言うの?

 わたくしは、貴女を侮辱したのよ?

 まがりなりにも兄嫁/義姉である女性を、“馬の骨”と罵ったのよ?

 いくら貴族だからって、いえ、貴族だからこそ、わたくしは常に節度ある礼儀正しい言動をとらねばならないのに……。


 「なれど……のぅ、ヒルデガルド殿。それでも妾は、一点だけこの世界の誰にも負けぬ自信があることがある。それは夫婦となる男女にとって、もっとも大切な事柄よ」


 ! 

 そうか。

 貴女には"切り札"があるのね。

 わたくしの言葉なんか、柳に風と受け流し、胸を晴れるだけの……。


 「……大体予測はつきますけれど、言ってごらんなさい」

 それを持っているだけで、女の子(20歳を過ぎても女の子かどうかはおくとして)が、究極無敵になれる魔法の言葉。

 恋する乙女の聖剣エクスカリバーにして不破之盾イージス


 「妾は、我が背の君を心の底より愛しておる。この気持ちだけは誰にも負けぬし、また何者にも譲れぬよ」

 彼女は、私から目を逸らさずに、恥ずかしげもなく、堂々とお兄様への愛を宣言する。

 その瞬間、わたくしにはわかった。わかってしまった。

 (ああ、この女は……いえ、この女性こそが、お兄様の妻にはふさわしい)

 でも……兄への愛情をダシにされたのでは、妹としても引けませんことよ?


 * * * 


 「そこまでおっしゃるなら、勝負です!」

 再び妾に、ビシッと人差し指をつきつけるヒルデガルド殿。

 ……どうでもよいが、貴族のご令嬢が人を指差すのは、あまり礼儀に叶った行為だとは思えぬが。


 「こ、これは、様式美と言うものです。あ、貴女に勝負を申し込みますわ」

 真っ赤になりながら、ヒルデガルド嬢は言葉をつなぐ。


 「まずは料理! お兄様の妻を自称するなら、せめて3つ星シェフクラスの料理は作っていただかないと……」

 いや、自称と言うか、ちゃんとこの村で公式に認められた夫婦なんじゃが……まぁ、よいわ。ちょうど昼飯時でもあることじゃしのぅ。


 妾は、保管庫の中を確認して、今日の昼餉に何を作るか思案する。

 肉類はプリンスボアフィレがあるか……。魚介類は白姫エビとストライクフグ……フグは今晩鍋にでもするかの。ゴールデンチーズとナッツチーズ、ウェスタンパセリとオニオンハーブ。金華米があるが、これも夕餉向きじゃな。

 うむ、折角昨日焼いたベーグルもあることじゃし、昼はベーグルサンドでも作るかのぅ。


 ベーグルを保管庫から出し、軽くミード酒を霧吹きしたのち天日の当たる場所に置く。これで、焼きたて同様……とは言わぬが、相応にふっくらするはずじゃ。

 プリンスボアフィレはウェスタンパセリのみじん切りと一緒にクレイジーソルトを振ってソテーし、白姫エビは薄く切って衣をつけ、フリッター状にカラリと揚げる。

 それぞれを半分に切ったベーグルに載せ、いっしょに清水にさらしたオニオンハーブのミジン切りも載せる。ポークの方にはナッツチーズ、エビのほうにはゴールデンチーズを粉末状にして振りかけ、もう半分のベーグルで挟めば完成じゃ。

 箸休め(いや、ベーグルは手掴みで食べるものじゃが)には、紅マンゴーの甘漬けを添えておくかの。飲み物は桃林檎イズンの絞りたてジュースでよかろう。


 「お、ウチでサンドイッチってのは珍しいな、ラン」

 確かに、昼は軽く済ませるときでも、おにぎりなどの米飯が多いですからの。我が君がパン食の方がお好きなら、献立を考えまするが……。


 「あ~、大丈夫。ランは何作っても美味いからな。別に今のままでいいさ」

 お誉め頂くのは光栄ですが、我が君、妹御がニラんでおられますぞえ。


 「ふ、ふん! こんなベーグルサンド如きが、到底わたくしの口に合うとは……」

 などと言いつつも、やはり食べ盛り育ち盛りのお年頃故か、ヒルデガルド殿の視線はベーグルを盛った皿に固定されておるのがわかる。


 「我が君のお口に合えばよろしいのですが。よければヒルデガルド殿も、食べてみてたもれ」

 内心クスリと笑いながらも、そんな気配は見せぬよう、努めて自然に昼餉を勧める。


 「そこまで勧められて口をつけないのも、礼儀に反しますわね。それでは……」「いただきまーーーす」「あぁっ、お兄様、それわたくしが目をつけていた……」


 「ホホホ……、たーんとあります故、ケンカなさりますな」

 いつもの我が君と差し向かいでの食事も楽しいが、こういう風に何人かで食卓を囲むのも、悪くないものじゃのぅ。


 幸いお二方ともお口に合ったと見えて、小半刻後、大皿に山盛り作ってあった2種類のベーグルサンドは、余すところなく空になっておった。


 「ごちそうさん。ぃやぁ、たまにはサンドイッチも悪くないな」

 「確かに、素材の味を活かしつつ、独自の工夫と気配りが感じられましたわね」

 「ご満足いただけたようで幸いじゃ。食後のお茶はいかがかえ? 昼のメニューに合わせて、ジャム入りの紅茶をいれてみたのじゃが」

 「いただきますわ」

 「ああ、俺にもくれ、ラン」


 ほんのりと甘いジャムのフレーバーが混じったお茶の香りが居間に広がり、まったりとした空気が流れる。


 「(ハッ! 何やってますの、わたくしは!! でも、美味しかったのは事実ですし……)

コホン……ま、まぁ料理の腕前は合格と認めて差し上げてもよろしくてよ。

 でも、妻の勤めは料理だけではありませんわ。お掃除やお洗濯も……」


 ツツーーーーッと棚の上に指を滑らせるヒルデガルド殿。何やら、読み本などで出てくる鬼姑みたいじゃのぅ。

 もっとも、毎日キチンと掃除しておるうえ、忙しいときにはケトシーのシズカが補佐してくれているので、とくに埃など溜まっていようはずもないが。無論、洗濯物も同様よ。

 そうそう、シズカと言えば、彼女は妾たちの内輪の話と見て、別室(台所横にしつらえた彼女用の小部屋)に引っ込んでいてくれるようじゃな。


 「じゃ、じゃあお裁縫は……」

 無言で、妾たちが尻の下に強いている薄いクッション──ザブトンと、部屋の出入り口にかかったノレンを指差す。


 「ウソ……もしかして、これ、みんなランさんのお手製ですの? 刺繍も!?」

 「うむ。最近は狩猟士の仕事であまり暇がなく、なかなか作れないのが口惜しいが。最後に縫ったのは何でしたかのぅ」

 「アレだろ、ラン。こないだ作ってくれたユカタとか言う俺のバスローブじゃねぇか?」

 「おお、そうでありましたな。久方振りの和裁ゆえ、少々気合いが入ったものをと思ぅて、我が君用に腕を振るったのじゃった」

 うむ。白無地に藍色でトンボの模様を散らし、背中に大きく”狩猟魂”と言う縫い取りを入れた漢らしい代物じゃ。妾としても、なかなかの力作じゃと満足しておる。


 「──よ、よろしいでしょう。貴女が家事に秀でた方であることは、不本意ですが、認めますわ」


 (我が君、我が君、何故、ヒルデガルド殿は、あれほど口元をピクピクされておるのかの?)

 (ん? ああ、ヒルダのヤツは家事関連がどうにも苦手でな。努力家だから、「淑女のたしなみ」と称して一生懸命練習したんで、かろうじて人並みに近いレベルのことはできるんだが、"上手い"とはお世辞にも言えん)

 (……すると、少々嫌味な返答でしたかな。あいすみませぬ)

 (なぁに、ちょっとばかし思慮と我慢の足りないコイツには、いい薬だ)

 我が君、実の兄がそのようなヒドいことを……まぁ、否定もできませぬが。


 「今時の良き妻としては、子供の教育のためにも、教養が必要でしてよ」

 む、それは確かに一理あるかの。妾と我が君のあいだに、もし万が一子供が生まれたならば、その子は、強く優しく健やかに、そして賢く育てたいとは、妾も思う故。

 しかし、その分野は妾には少々分が悪いのぅ。何せ、ほんの半年ほど前までは、一介の羽虫でしかなかったわけじゃて。


 「そう、お兄様の妻を名乗られるなら、この本棚にある『学問ノ進歩』くらいは、読破していただかないと……」

 「あ、それは妾のじゃ」

 「へ!? これ、お兄様のものではなくて?」

 「おいおい、ヒルダ。俺の勉強嫌いは知ってるだろーが」

 「も、もしかして、この『我想我在』や『自然哲学ノ諸説定理』も?」

 「うむ。本屋と言うもののないこの村では、手に入れるのになかなか苦労したぞえ」


 養父の家にいたころ字を覚えて以来、読書は妾の密かな楽しみ、一種の趣味と言えるものじゃったからな。養父が晴耕雨読を旨とする、農夫にしては珍しい数寄者だったのを幸いに、その蔵書を何冊も読ませていただいたものよ。

 こうして人の身になって以来、我が君が妾がまだ参加できぬ上級向け依頼で家を空けられるときなどに暇をつぶすため、かつて愛読していたこれらの本を手に入れておいたのじゃ。


 「ちなみに、その下の段にある『ロジカル・ワード』とか『ウーマン・ユニバーシティ』も、ランのだからな」

 「うむ。本当は東方古語の原典が欲しかったのじゃが、なかなか高くてのぅ」

 古典だけあって、いまの時代には少々合わぬ部分も多いが、なかなか興味深かったぞえ。


 「! もしかして、貴女、東方古語の読み書きができますの?」

 「まぁ、ほんのたしなみ程度じゃが」 

 「…………」

 おや、ヒルデガルド殿、どうかなされたのかえ? フルフルと肩を震わせて……。


 「──納得できませんわーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 !! た、魂消た。いきなり至近距離で叫び出すのは止めてたもれ。 


 「美人で胸が大きくて、温厚で淑やかで礼儀正しくて、料理を始めとする家事一般が得意で、さらに教養あるバイリンガル!! どんだけ完璧超人ですの?」


──ガクガクガク!


 ひ、ヒルデガルド殿、胸ぐらをつかんで揺さぶるのは、堪忍してたも……。


 「で、おまけにお兄様のお仕事を自らサポートする狩人としても優秀!? テ●ドーソーシ? それともネプ●ューンマンですか、貴女は!」


 よ、よくわからぬが、おっしゃりたいことは……なんとなく伝わった、ので……放して…………ガクッ。

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