### すれ違う二人

現実にある

暗い井戸を

照らす人間に

私はなりたい。

それだけが

彼女にできる

弔いではなかろうか。


生き直す決意をして

ゆっくりと蓋を閉めた。

振り返り、

先輩に今の気持ちを伝えよう。

彼女なら

必ずや手伝ってくれるだろう。


蓋から手を離す。

暗闇から

搾り出されたような台詞が

茜空の気分を

急停止させた。


「この辺りで

 煙草が吸える喫茶店を

 教えてくれないか。

 お代は払うから案内して。

 必要なんだ。」


先輩に見たことのない

泣き出しそうな苦悶の表情で

私の決意は

宙に浮くこととなった。

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