### 狂人ではない男のモノローグ

彼女の目を見ると

なぜかへたり込んでしまった。

毅然と

ホテルの従業員を呼ぶべきだった。

全くやましいことはない。


しかし、

彼女は

おそらく人間ではないのだ。

私の幾多の

珍妙な人生経験から推察して、

3秒で解かった。


紅茶を飲みながら、

彼女の情報を探る。

名刺を渡さずに見せ、

彼女が

中学卒業の頃から書いている

日記を預かる。


質問をしながら

日記を読み進めていく。


いつの間にか

彼女は

どこにあったか

分からない

クロワッサンを頬張っていた。

この部屋にない筈の

食器を使って

この部屋にない筈の

サラダとスクランブルエッグを食べていた。


彼女をうまく使えば、

大金が手に入るだろう。

だが、

あり得ないことは

あり得ない。

知識と経験からの普遍的な答えだ。


早く縁を切らねば

厄介なのでなかろうか。

私の

仕事や生活どころか

セカイそのものが

破綻する可能性すらあるのでないか?


「あんたを助けてやる。

 泥舟に乗ったつもりで

 安心していろ。」


とっておきのジョークには

眉間に皺を

寄せた上での

微笑みで承認が頂けた。

しかし、

冗談は避けた方が良さそうだ。


5.3秒間考えて

大学時代の先輩に

頼ることにした。

私だけでは

手に負えない。

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