## 番外編:黄昏の賢者に課せられた社会権行使責任

### 黄昏に辿り付けない賢者

目が覚めると

隣に名子はいなかった。


彼女と

過ごした

うさぎのキャラクターが

整然と並んだ

ホテルの部屋

でもない。


ここは実家の私の部屋だ。

今日はいつだ?


19年8月1日


名子と出会った日。


あの日、

何時からデニーズに行ったか。

今晩、行けば会えるだろうか?

まだ午前中だから、

ゆっくりと準備して出発すれば間に合う。


いや、違う。

彼女に会ったのは

19年7月31日の深夜だ。

日付が変わる頃に

話しかけられたのだ。


まだ、

間に合うだろうか?

間に合ってくれ。


hi-liteと現金だけを

かばんの中に確認をして

自転車に乗り

赤信号に気が付かず

クラクションを鳴らされて

南方に向かう。

夏のデイタイム、

運命のファミリーレストランに

いつも通りに

喫煙お一人様で

入店した。


彼女が

座っていた

窓際の席。


彼女がいない

その席に座る。

とりあえず、

ドリンクバーを注文し、

顔を互いに覚えている

ベテラン風の女性店員に

彼女について

尋ねてみる。


少なくとも

早朝には

この席に女性客は

いなかった。


更なる

確認を懇願した。

泣いていた

かもしれない。

いや、号泣していた。


黄昏の気持ちから

抜け出すために

ローズヒップティーを

飲んで

回答を待つことにした。

汗が引いた後は

上着がないと

どこでも寒い。


凍えながら

震えていた私に

彼女は

怪訝な顔をして

注文に応じた答えを

運んできた。


「昨日は

 夕刻から日付が変わるまで

 貴方がいたと

 従業員は皆言っていますけども、

 からかっている訳でもないようですし、

 何か勘違いしているのではないでしょうか?」

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