6 家路
ブロンズカラーのロマンスカーは、すっかり夜になった本厚木駅に滑り込んだ。
途中、みんなは撮った写真を見せ合い、検討しながらの道中だった。
そして、列車を降り、皆で回送になって本厚木駅の小田原側の引上げ線に引き上げるロマンスカーを見送ったあと、コンコースに降りて、いったん改札を出る。
美里たちはプイッとしながらも、「またどうせ、そのうちどこかで会うわね」と言い残して、本厚木の街に消えていった。
そして、海老名高校鉄研の皆は、本厚木のトランプカードを受け取り、パスで入場して海老名に戻る。
「終わっちゃうね」
ふっと、そんなことを御波が言った。
「ほんと、思いの外面白かった」
「やっぱり、仲間がいるって楽しいのですわね」
折り返しに乗った列車は相模川橋梁を通過する。その大きなトラスが車窓をコマ切れにカットして流れていく。
「すきな鉄道だからこそ、そこに厳しい自制心がいるとのツバメ君の信念、なるほどであるな。これもまた良い考察、研究になったといえよう」
「旅の仲間とは、こういうものなのですわね」
詩音は感じ入っている。
「一人で列車に乗っている時とは、全然違っていて、とても良い、素敵な思い出になりましたわ」
「うむ、そのための鉄研であるからのう」
総裁は微笑んだ。
「そして、旅は終わるが、ここから、わが鉄道研究公団の本当の戦いの始まるのだ。
夏の鉄道模型レイアウトコンベンションへ向けて、レイアウト、すなわち鉄道模型ジオラマを作らねばならない。
鉄道模型コンベンションとは、まさに全国の高校鉄道研究部の甲子園たるべきイベントなのである!」
「私もそれを楽しみにしていましたわ」
詩音が言うと、ツバメも、御波も頷いた。
「私たちのほんとうの力の見せ所になるわ」
「でも」
みな、一緒の思いだったようだ。
「仲間が一緒だから、参加できるのね」
総裁は、かばんからそのコンベンションのエントリー通知を取り出して、微笑んだ。
「そうなのだ。コンベンションには一人ではエントリーできぬ。かといって大勢いてもまとまらなければ人数がいてもなし得ない。まさにわが鉄研の実力、真価が試される大一番となるぞよ!」
「がんばりましょう!」
「ええ!」
「一緒に!」
声が揃う中、列車は夕闇の海老名についた。
旅の終わりは、次の冒険の始まり。
しかし、その戦い、冒険がどんなものか、彼女たちははまだ、何もわかっていなかったのかもしれない。
<次回予告>
「ええーっ、まさかここからシリアス展開に!?」
「うむ、そんなのは作者が疲れて弱気になってそうしようとしても、ワタクシ総裁が許さないのであるな。まさに『鉄研制裁』なのだ」
「とはいえ、お約束展開の乱発とも行かないですわねえ」
「でもおバカな展開するのやだー」
「華子がそれを言うのはどうかと思うけど、ボクにもいいところやらせてよ」
「でも、どうなるの? ただの青春群像ものになるとか? ヒドイっ!」
「そこは作者の体力・気力次第であるのだな。そこはこれをお読みの方、言葉だけでもいいから、深く応援求むなのだ」
「私たちの夏のコンベンション、どうなっちゃうの? 不安だなあ!」
「次回、『第6話・鉄道模型レイアウトできるかな』だって?……うわー、嫌な予感しかしない!」
つづくっ!
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