4 部誌編集会議

「では今号の柱は」

「はいせんせー、すいません、その前に判型はどうしましょう?」

 ツバメがさっそく赤ペン片手に聞く。

「あら、今どき中とじ製本のA4コピー紙なんてダサいのはイヤよ」

 詩音がバッサリ否定する。

「そうね。電子書籍で行くのが正解ね」

 ツバメはすぐに提案する。

「ええっ、いきなり電子書籍!」

「今はそんな難しくないのよ。『BCCKS』というサービスがあるから、そこにアカウント作って、テキストデータで本文をつくり、いれこむ画像を画像データでアップロードすれば、タダで電子の本が作れるのよ」

「なるほど。今は銀河の果てに銀河鉄道すりーないん号で旅に行かなくてもよいのであるな」

「ずれてるずれてる」

「でもあのスリーナイン号の列車の編成はどうなっているのであろうかと常に疑問に思うておってな。食堂車と3等車があるのが分かるのだが、グリーン車を連結しておるらしいうえに、なんと図書館車や医務室付きのサービスカーが存在するように記憶しておるのだが。また臨時で装甲車を連結するのも覚えているのだが……むむむ、なぞである」

 その間にツバメと詩音はノートパソコンを取り出していた。

「そういうのはググればすぐに出てくるのよ」

「おお、なるほど、模型化している方がいらっしゃるのであるか! うむ、なるほどなのである。さすが世はインターネット時代であるわけだな。ネットの海は広大だわ、なのだな。グーグルセンセイはこのまま世界を支配するであろう」

「じゃあ、BCCKSにアカウント作りますねー。判型は10インチ版で」

「印税はどうします?」

「いいいい、印税いいい!?」

 みんなはびっくりする。

「今の流行はセルフパブリッシングですわ。ほぼ元手なしに印税が得られます。ちょっとお金出せば、AmazonやKoboでも販売できて、そこからも印税が集まります」

「なんと! 我が鉄研に早くも収益事業部門が出来上がるのであるか。よいよい。なんとも弥栄である!」

「そうですわ。今ようやく電子書籍のいろんな環境が整っているのに、いまさら中とじ製本とかオフセット印刷とかダサいのです。わたくし、そんなのこれまでさんざんやってまいりましたし」

 詩音の言葉に、え? すでに? さんざんやって? とみんなは顔を見合わせるが、詩音はかまわず微笑んでいる。

「……そこ、聞かなかったことに、したほうが、いいと思う」

「そうだよね」

「うむ、であれば斯様な豊富なアイディアを持つゆえ、編集長は詩音くんであるな」

「やりましょう。扉絵とアートワークはツバメちゃんで」

「あいあいさー!」

「で、記事ぎめ。まずは巻頭、総裁挨拶は総裁に」

「うむ、執筆がむばるのである」

「そして創刊号のメインはこの平成27年ダイヤ改正の考察。ダイヤならやっぱりここはカオルさんに」

「ええっ、いきなり?」

「いや?」

「いやじゃないけどさ。でもボクのダイヤ解説、ものすごく細かくなるよ」

「電子書籍はそういうボリュームあるのに強いから。おねがいね。で、華子ちゃんは……」

「あ、バカだから任せられないと思ってる!」

「いや、そういうわけでは全くないのですが」

「じゃあ、うちの『食堂サハシ』をはじめに鉄カフェ関連の食レポ!」

「ステキですわね。シリーズ化が楽しみだわ。で、最後に」

「……私?」

 ぼうっとしていた御波は驚いた。

「あなたは、あなたの好きなモノを書いて」

「ええっ、フリーハンド?」

 詩音は、微笑んで御波の肩に手をやった。

「あなたにはできる。私には、それが分かるから」

 御波は戸惑った。

「まあよいではないか。御波くんの文才を楽しみにしておくとするのだな。でも、それよりさきに」

 総裁は、部室のスイング窓を開けた。

 春の爽やかな風がふっと吹き込んでくる。

「すぐにわが鉄研初の小旅行、ゴールデンウィーク旅行なのだな!」



「ついに部員が6人揃った鉄道研究公団、そして迎える初めてのゴールデンウィーク。みずみずしい春の緑の中、女の子たちは初めての旅に出る! 次回! 「すきだからこそ」。さあ、次もサービスしちゃうわよ!」

「総裁、あの、なんですかこれ? わざわざiPhoneで曲まで流して」

「うむ、次回予告なのである」

「だから、いいかげん、もうエヴァネタから離れましょうよ……」

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