3 再び部室
「ところで」
カオルが聞いた。
「この鉄研って、何をする部活なんですか? 鉄道を研究、って? 具体的によくわかんない」
「うむ」
総裁はパーティション、に見えた大盤解説図を裏返す。すると裏がホワイトボードになっている。
そこに、総裁がサラサラとペンで書く。
「『わからん、いや、ダメかもしれん』?」
「なんですかそれ!」
「オタクの英才教育じゃないんですから! ほんと、このままだとさらにいろんな人を怒らせますよ! 『宇宙戦艦ヤマト』のセリフを教える庵野監督と安野モヨコ夫婦じゃないんですから!」
相変わらず御波の解説もムダに細かい。
「『じゃなくて?』」
総裁はなおも書く。
「『年間活動計画』? おおー、なんかすごくまじめ!」
「まず旅行である。ゴールデンウイークには顧問の先生に引率されて近場を取材旅行、そして夏は高校生鉄道模型レイアウトコンベンション出展、夏の合宿、秋は秋旅行、冬は冬合宿、そして春休みに合宿」
「ひいい、旅行だらけじゃないですか!」
「そんなに遊び狂って軍資金足りるかなあ」
「だいたいそんなの不まじめですよ!」
「これが不まじめであろうか! 否! 世に鉄研の活動といえば! 旅行と写真と模型が基本なのである!」
「なにギレンになってるんですか!」
「たてよ部員!」
「……わけわからん」
「といいつつ、ぢつわガンダムは良くわからんのである」
「だったらなんでネタにするんですか」
「うむ、ガンダムネタはもはや一般ネタなので、いささか人口に膾炙しておりネタとしていまさら使うのは不安に思うていたのであるが。
あ、それから部誌は随時発行であるので、ツバメ君と詩音くんを編集委員として任命するので、両名十分頑張ってくれたまい」
「ええっ、だって2人は相互確証破壊ナントカって」
「うふふふふふ」
ツバメと詩音が目を合わせて、また顔は全然笑っていないのに笑っている。
「あああ、また凄惨な未来しか目に浮かばない……」
「それに6人もいると喋ってんの誰が誰だかわかんないですー」
「読者の皆さん、すっかり混乱してますよ」
カオルが呆れる。
「あっ、ホントだ!」
「もー。メタネタ禁止ー! ヒドイッ」
部室内はすっかり賑やかである。
「では、ゴールデンウィーク旅行の企画の前に部誌編集会議開催なのである」
「早っ!」
「速戦即決もわが鉄研の伝統なのであるな」
「それも早っ! 出来上がって1ヶ月なのにもう伝統なんて」
「うむ。歩めばそれが道に、日々は過ごせばそれが伝統になるのだな」
「総裁ナニ言ってるんですか……」
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