第21話 アメリカ第5空軍基地

【4月8日沖縄時間12時22分】

 沖縄は、この日気持ち良い小春日和だった。

アメリカとの時差は丁度半日ほどなので、沖縄はアメリカからすると翌日のお昼である。

島の中部に位置する嘉手納基地の滑走路に、フライトレーンに沿ってユナイテッドステイトの国旗を記したB747―200が舞い降りた。

ソフィア達は、遂に導きし使者がいると思われる沖縄に着いた。

一行がタラップを降りると、嘉手納基地アメリカ第5空軍を指揮するルーカス=アイゼンハワー司令官が出迎えてくれた。

事の重大さ、そしてホワイトハウスからの要望でわざわざ基地のトップが出てきたのだ。

しかし、実の所アイゼンハワー当人はかなりのミーハーであり、この窮地を救うかも知れない若者達に興味があり自ら出迎えたのであった。

アイゼンハワーは、准将という地位であるがまだ40代前半と若かった。

戦闘機のパイロットとして戦地で名を馳せ、又、作戦に対するマネジメントの高さが評価されたため、その若さで司令官として配属されている。

そして、何より体格はごつく大男であったが、愛嬌があり人なつこい性格のため部下からも人気があった。

一行は、用意されたジープで基地のメインタワーへと通された。

「ようこそ、常夏の島、沖縄へ! 話は、大統領首席補佐官から大方聞いている。実はこの沖縄も、かなり沿岸部に被害が出ている。この状況を回避できるのだったら、何でも言う事聞くぜ。月は、天空にあって鑑賞するものだ。友達にもなりたくないので、とっととお国に戻るよう働きかけてくれよ。みんな、頼んだぜ!」

そう言い、アイゼンハワーは握手でなくいきなり皆にハグして回った。

なんて陽気な軍人なのだろう、皆面倒くさそうにそう思った。

「司令官、お気を使ってもらってありがとう。早速ですが、ヘリの要請について準備していただけたでしょうか?」

ソフィアは、フライト中基地に依頼していたヘリで島中を飛んでもらうオーダーをアイゼンハワーに確認した。

「お嬢さん、いつでも飛ばせるよ。今から行くかい?」

4人とも、フライト中十分すぎるぐらい体力は充電できたので、早速事を起こしたかった。

「司令官、お願いします。少しでも早く、『物語』を進めなくてはならないのです。この地球のために!」

サンドラやダスティンが、懇願した。

「了解した! 第18航空団から1個小隊25名と普天間基地よりオスプレイを用意してある。それと、日本政府から現地の行政との橋渡しにとNSC(日本型NSA)から職員が派遣されている。紹介するよ、長澤捜査官だ」

アイゼンハワーは、少し後ろにいてスーツ姿でしゃきっと決まった、いかにもお役所から来ましたという風な20代後半くらいの若者を紹介した。

すると、彼は前に出て挨拶した。

「長澤です。よろしくお願いします。NSCより、皆さん方を全面的にバックアップするよう指示されています。ここでの行政的な手続きはすべて私に一任されていますので、何なりと指示してください」

長澤は、流ちょうな英語で話した。

「今から先、超法規的な事態をお願いしなければならないかもしれません。よろしくお願いします」

ソフィアは、早口で長澤に言った。

「了解しました。状況が状況なだけに手段は選びません、任せて下さい」

そう、長澤が言うとみんな彼に対する堅いイメージがなにやら払拭され、頼りがいを感じた。

日本人のお役所って、たいがい融通が利かないと思っていたからだ。

「さあ、それじゃ始めようぜ!」

挨拶が終わるとテーブルにお茶が用意されたが、アイゼンハワーはお構いなしに出立のかけ声を発した。

みんなやれやれと思ったが、アイゼンハワーは自分も捜索の旅に行く気満々だった。その後、用意されたジープでオスプレイMV22へと乗り込んだ。

飛び立つ前ソフィアは、アイゼンハワーとパイロットにこれからの飛行行程について説明した。

「今から、飛んでもらう場所について説明します。これを見てください」

ソフィアは、そう言って段ボール箱の中の光っている例の瓦を見せた。

相変わらず青白い炎のような光りを放っている。

「こりゃ、なんだい? 気味が悪いな」

アイゼンハワーは、身を引きながら呟いた。

それを横目にソフィアは言った。

「この瓦が、『物語』の発祥であり、これから地球に起こると思われる最悪の状況を回避する鍵となります。そして、この島にいると思われる物語のキーマンとおぼしき『導きし使者』を発見するのに役立つはずです」

気味悪そうに瓦を眺めながら、アイゼンハワーは言った。

「こいつがどうやって見つけてくれるの? そのなんたら使者というやつを」

「それが、全くわかりません」

ジョセフは、お手上げ状態という風で手を広げながら言った。

「まあ、よかろう。とにかく、飛び立ってこの島をぐるぐる回っていりゃ、いつかこいつが何か反応するのだろうよ。中尉、行ってくれ」

アイゼンハワーは、ちょっとあきれ顔でパイロットに飛行指示を出し、オスプレイは飛び立った。

「まず、人口の多い南部から回ります」

そうパイロットが言ったあと、オスプレイは垂直離陸後、水平飛行へと移った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る