第3話 2月12日

付き合ってから4日が経った。

僕の中の醜い「愛」は膨らむ一方であり、それと同時に僕の心には「嫉妬」が生まれた。

嫉妬というものはこうも僕の心を壊していくなんて、僕はまだ知らなかった。

知らないで済まされるならまだいい。

僕はこの頃のことを思い出したくない。


あれから変わらず僕と君は共に登下校をした。変わらず僕は車道側を歩く。

危ない車は今日もいない。

君は今日も向日葵のようなハツラツとした笑顔を浮かべる。

昨日と違うこと、それはポケットに入れたカイロだ。

帰り道また君にあの冷たい手になって欲しくなくて、出発間際にポケットに突っ込んできたのだ。

帰り道が少し楽しみだった。

いつも通りの平和な登校を終え、学校に着く。君はまたクラスの女子の方へ行ってしまった。

そこまでは良かった。女子といるのを見た所までは。

君はクラスの女子に声をかけたあと、隣のクラスの男子から声をかけられていた。

内容は分からない。僕の方までは聞こえなかった。そして君は向日葵のような笑顔をそいつに向けた。

血の気が引くのが自分でもわかった。

その笑顔は僕のものだと思っていたのに、君は違う男に向けてしまった。

息がヒューと音を鳴らし始めた時、後ろからクラスの男子に声をかけられ、どうにか気分を紛らわすことが出来た。

何を話したのかは全く覚えていない。


教室に着いた。

君は既に着席していて周りの友達と談笑している。

そこに男がいないことに安堵した。

生まれて初めての感情だった。

これを世間では「嫉妬」というのだろうか。

怒りのような、殺意のようなものが込み上げ、あんなにも気分悪いものなのか。

朝の光景を思い出しそうになったので大きく首を横に振った。ひとつ深呼吸をする。

おちつけ。

自分に言い聞かせる。

内容までは聞こえなかったのだ。きっと、誰かからの伝言や、事務的な話だったのだ。君はただ、その行動に対して「ありがとう」と伝え、その付属品として笑顔を向けた。そこに僕に向けるような好意などない。


僕はまだ、君の中の1番だ。


もう一度君の方を見る。しかし僕がみていたのは君ではない。君に近づいたクラスの男子だった。

また何かを話している。

また

君は向日葵を向けた。

僕だけの、君の向日葵を。


僕の中で何かが弾けた。

勢いよく立ち上がったのだろうか。

ポケットに入れてあるカイロが床に落ちた音だけが頭に響いていた。

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