第18話 幼なじみ男女の音楽事情
朝がきたことは分かっても、起きられない。お母さんが部屋まできて起こしてくれるけど。
「優子!起きなさい。朝よ」
「む~」
なかなか自分一人では起きられない。昨日遅くまで映画を見ていたから。今までバンドの曲やクラシックは聴いていたけど、クラシックギターが出てくる映画には興味をひかれた。悟くんはエレキギターだけど、どうしてギターが好きなんだろう。前からやっていたって言っていたし。明日香さんと悟くんの関係は、ただの幼なじみなんだろうか。2人の音楽は、どうやってお互い知ったのだろう。幼なじみだと情報も行きやすいから、自然に分かったのかもしれないけど。
アラームを見返すと、30分うとうとしていた。寝坊だ。
髪をとかして着替え、ご飯をサクッと食べて電車に駆け込む。間に合った。
「間に合ったよ~」
「優子にしては珍しいね。HRギリギリなんて」
「ほら、寝癖ついてる」
HR後にクラスメイトからいじられて、悟くんたちと同じ中学の子もいることを思い出した。
「愛実ちゃん」
「なに?優子」
ランチ仲間の愛実ちゃんは、悟くんたちと同じ中学。目立つ2人だから、多分よく知ってると思う。私よりもずっと……。勝手に仲を勘ぐったなんてしれたら、明日香さんたち嫌がるかな。でも2人の歴史は長い。私も2人のことを知りたいから、過去を聞くのは大丈夫なはず。一緒に音楽をするなら、仲間のことを知らないと。
「ちょっとこっちきて」
クラスの端っこに呼び寄せて、こそこそ話。自分でもやましいことをしている気持ちがあるから。
「三月くんと石川さんって、中学生の時どんな関係だった?」
愛実ちゃんは、気まずい顔をした。なんでだろう。
「優子は今2人とバンド組んでいるんだよね」
続けて吐き出すように話した。
「あの2人、石川さんの妹さんとバンドやってたんだよ。中学の時。ライブハウスには行ってなかったけど、学園祭とかで盛り上がってた。でも妹さん死んじゃったから。」
「三月くんも、石川さんも、すごく妹さんをかわいがってた。だから、バンドを辞めた。石川さんは悪い人とつるむようになった。今になって2人がバンド始めた理由までは分からないけど」
内緒だよ、といって愛実ちゃんは席に戻った。
聞かなければよかった、と思った。
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