第4話 私の考えとバンドの新メンバー

 田口先生の顔を立てて、ギターの子とはテスト明けに話すことになった。石川さんの話によると、私も知っている人らしいけど。今までにないやる気にみなぎって、テストの感触もなかなかいい。おおざっぱなイメージだけど、3人いればバンドができるんじゃないかな。キーボード、ドラムにギター……。ほんとはベースも欲しい。でも今のメンバーでギターが誰だかも分からないのに、無意味に勧誘はできない。

 ベースは考え直そう。現状のメンバーを大事にしよう。ベースがないバンドもある。キーボードで音を整えてみるのもいいかもしれない。私の実力でどれほどできるか、不明だけど。ギター、キーボード、ドラム。そんなバンドが私たちのバンド! 

 バンドができる。青春ができる。ひと昔前のドラマみたいなことを、私は考えていた。バンド自体はあまり考えてなくて、高校生らしく楽しみたい、弾けたいと思っている。もちろん、CDショップで聞いたガールズバンドを忘れているわけではない。バンドで天下をとれたら、それはきっと楽しいだろう。

 そんなことを考えていたら、勉強がはかどらなかった。

 ポスターを貼って1週間。今日はギターの子と会う日。石川さんと似た雰囲気だと、私はやっていけるのだろうか。石川さんも、話してみると柔らかくて悪い人ではないけど。いや、停学常習者は悪い人なのかな。でも地味な私とも不通に接してくれるところはある。

 もっといいと思ってたテスト結果は、普通だった。平均よりいいけど、正直もっといいかと思ってた。でもこれでバンドができる!

「山本、放課後な」

 悪カッコいい姿の石川さん。テストはどうだったのだろう。そういえば補習メンバーに彼女の名前を見た覚えはない。実は頭がいいのだろうか。あまりイメージに合わないけど。

「こいつだよ。俺の幼馴染。しょっちゅうギター弾いてるんだ」

「山本さん、三月です。よろしく」

 おもわず口がふさがらなかった。ガールズバンドを目指しているというのは言い忘れていたけど、レモン・スカッシュを目指しているのは共通事項だったはず、なのにギターは学級委員の三月くん。制服はもちろんズボンの、男子高校生。まさか男の子を連れてくるとは思わなかった。そもそも三月くんと石川さんに交流があるのを、先生たちは知っているのだろうか。

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